ライブロックの対義語はデスロック?

マリンアクアリウムの世界では、ライブロックとデスロックという用語が頻繁に使われます。
これらは海水水槽の生態系を構築する上で重要な要素です。

本記事では、ライブロックとデスロックの違い、デスロックという名称が定着した理由の考察、英語圏での呼称、マルコロックとの比較について簡単に紹介します。

ライブロックとは?

ライブロックは、海水水槽で使用される、微生物や小さな海洋生物が付着した天然の岩石です。
これらの生物は、水質の安定化や水槽内の生態系の維持において重要な役割を果たします。

ライブロックを導入すると、以下のような利点があります。

  • 水質の安定化: 自然の海中に存在するさまざまな有用バクテリアを水槽内へ導入することができます。
  • 生態系の維持: ライブロックは、小さな海洋生物の住処となり、自然に近い生態系を維持します。
  • 美観の向上: ライブロックは、自然な見た目を持ち、水槽の美観を向上させます。

デスロックとは?

ライブロックの対義語として使われることがある「デスロック」。
デスロックは、形状こそライブロックと同じように見えますが、付着生物が死滅した状態の岩石を指します。

デスロックには、ライブロックと比較して以下のような特徴があります。

  • 生態系の喪失: デスロックは、内部の生物が死滅しているため、ライブロックのような生態系の維持機能を持っていません。
  • 再生の必要性: デスロックを再びライブロックとして使用するためには、時間をかけて再び生物を定着させる必要があります。
  • 見た目の変化: 形状はライブロックと似ていますが、石灰藻がほとんど付着していないため、通常は真っ白です。

デスロックは、そのままではただのサンゴ骨格由来の石灰岩の塊です。
しかし、適切な処置を施すことで再びライブロックとして使用できます。

ライブロックとして再利用するためには、以下の手順を踏むことが一般的です。

  1. 洗浄: デスロックを徹底的に洗浄し、残留物や汚れを取り除きます。
  2. バクテリアの定着: デスロックを水槽に入れ、バクテリアの定着を促進します。
  3. 時間経過: デスロックが再びライブロックとして機能するまでには時間がかかります。
    定期的に水質をチェックし、必要に応じて調整を行います。

このときライブロックやライブサンド、またはバクテリア剤を併用すると、ライブロックとしてより早く復活しやすくなります。

なお、石灰藻の定着具合とバクテリアの定着具合に直接的な関連性はありません。
見た目が白くとも、バクテリアが定着しはじめていれば、ライブロックとしての機能を取り戻しています。

デスロックのメリット

デスロックはライブロックの下位互換なのでしょうか?
いいえ、そんなことはありません。

デスロックにはデスロック特有のメリットもあるのです。
ライブロックにはなく、デスロックにはあるメリットについて以下に紹介します。

不要な生物の混入リスクが低い

デスロックは、ライブロックに比べて不要な生物が混入するリスクがありません。

ライブロックは、時として有害な生物(例:カニ、ウミケムシ、シャコなど)が混入しており、これらを意図せず水槽内に持ち込んでしまうことがありますが、デスロックであれば、これらのリスクは回避できます。

取り扱いが簡単

デスロックは乾燥しているため、水槽内で管理する必要がありません。
乾燥状態でのストックが可能です。

湿気や温度管理が不要で、長期間保存できます。

コスト削減

デスロックは、ライブロックに比べて安価なことが多いです。
特に大量に使用する場合ほど、コストを大幅に削減できます。

レイアウトの自由度が高い

デスロックは、リーフセメントなどの接着剤を使用してレイアウトを固定する際に非常に便利です。
ライブロックの場合、既に生物が付着済みであるため加工は困難ですが、デスロックならその心配がありません。

なぜ「デスロック」と呼ばれるのか?

ところで乾燥して表面の付着生物が死滅したライブロックは、古くから対義語のような扱いで「デスロック」という名称で呼ばれています。

しかし「death rock」を直訳すると「死の石」となり、ライブロックの「生きている石」とはニュアンスが変わってきてしまいます。そのままでは、少々オカルト的なニュアンスも感じますね。

「ライブロック(live rock)」の対義語としてより正確に訳すのであれば「デッドロック(dead rock)」(死んだ石)のほうが適切ですが、日本ではこの呼称はあまり一般的ではありません。
マリンアクアリウムにおいては、「デスロック」という名称のほうがずっと通りが良いです。

このように「デスロック」という名称が一般的に使われる明確な理由は不明ですが、その背景にはいくつかの要因が考えられます。

直感的な理解

「デスロック」という言葉は、ライブロックの生態系が死滅した状態を直感的に表現しています。

日本語では「デス」という言葉が「死」を意味する名詞として広く使われており、映画やゲームなどのポップカルチャーでも頻繁に使用されるため、親しみやすい表現となっています。

一方で「デッド」という表現は日本語ではなじみが薄いため、日本のマリンアクアリストにとっては「デス」という表現のほうが直感的に感じられたものかもしれません。

言葉の選択は文化や慣習に影響されることも多いです。
要するに、「デスロック」という表現はいわゆる和製英語の一つであるといえるでしょう。

専門用語の普及

アクアリウムの分野では、特定の用語を専門用語として使われることが多いです。
その過程で上述の「デスロック」という言葉が誕生し、長期間使われることで定着した可能性があります。

ちなみにデスロックという言葉自体は、90年代のマリンアクアリウム黎明期から存在しています。

英語圏での呼称

実は「デスロック」という表現は、英語圏のアクアリストは使いません。
では、付着生物が死滅したライブロックのことを、何と呼ぶのでしょうか。

英語圏では、付着生物が死滅したライブロックは一般的に「デッドロック(dead rock)」または「ドライロック(dry rock)」と呼ばれます。これらの用語は、岩がもはや生物を含んでいない状態を示しています。

  • デッドロック(dead rock): もともとはライブロックだったが、付着生物が死滅した状態の岩を指します。
  • ドライロック(dry rock): ライブロックを乾燥させたものだけではなく、陸地で採掘された石灰岩や、モルタルで作られた擬岩なども含まれます。

日本ではあまりなじみのない表現かもしれませんが、覚えておくとどこかで役に立つかもしれません。

マルコロックとデスロック(ドライロック)

ここで登場するのがマルコロック。
リーフタンクに最適な、フロリダ半島で採掘されたサンゴ骨格由来の石灰岩です。

▼マルコロックの基本についてはこちら

マルコロックは水槽内でライブロックとして利用された来歴がないため、厳密にはデスロック(デッドロック)ではありません。
定義としてはドライロックに含まれます。

しかし、素材としての特性や利用方法はデスロックと非常によく似ています。

使い方自体はデスロックとほとんど同等、と考えて差し支えありません。
以下はマルコロックとデスロックとの共通点です。

  • 不要な生物の混入リスクが低い
  • 乾燥状態で保管できる
  • 乾燥状態ではバクテリアの定着がないため、時間をかけて再生が必要
  • ライブロックに比べて安価

そのうえで、いくつかの相違点もあります。

マルコロックの特徴

  • ライブロックだった来歴がない。
  • フロリダ半島の地中から採掘されており、天然の海洋環境に負荷をかけていない。
  • 天然の石灰岩としては加工が比較的容易。

デスロックの特徴

  • かつてライブロックだった来歴がある。
  • 元々はライブロックだったため、天然の海洋環境に由来している。
  • ものによって密度が異なるため破砕・加工は困難。接着は可能。

デスロックと比較すると、マルコロックのほうが環境への負荷がなく、なおかつ加工にも優れています。
ライブロックとデスロックは互いに長所短所を持つ関係にあるといえますが、マルコロックとデスロックの比較では、機能面に関してはマルコロックがほぼ上位互換といえそうです。

まとめ

ライブロックとデスロックは、共にマリンアクアリウムにおいて重要な役割を果たす岩石です。
デスロックという名称は、元々ライブロックであったものが、乾燥により表面に定着した生物が死滅した状態を直感的に表現するために使われています。

しかし、「デスロック」という名称は英語圏のマリンアクアリストの間では使われていません。
相当する呼称として、「デッドロック」や「ドライロック」という用語が一般的に使用されています。

「デスロック」という名称は、いわゆる和製英語による日本特有のアクアリウム用語の一つと言えます。

名称の持つ意味合いとして、ライブロックに対しデスロックは付着生物の生死という観点では対義語と言えます。
しかしながら、アクアリウムにおける用途という観点では「海洋生物が付着していない乾燥した石灰岩」という扱いになることから「ドライロック」の範疇に含まれるものです。

自然の海中に生息しているバクテリアを含む生物を水槽内に導入したいのであればライブロックを。
ウミケムシやシャコ、カーリーといった余計な生物を水槽内へ持ち込みたくなければデスロックを含むドライロックを用いて水槽を立ち上げるとよいでしょう。

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