リーフタンクにおいて鑑賞性を妨げるコケは大敵です。
色鮮やかなサンゴの発色を台無しにしてしまうため、壁面やライブロックなどに生えるコケはできる限り0にしたいところです。
ここでは、リーフタンクでよく発生しがちなコケの種類と、それぞれの対策方法を紹介します。
目次
コケとは
そもそもリーフタンクの鑑賞性を妨げる「コケ」とは何者なのでしょうか。
「コケ」の通称が広く知られていますが、その正体は藻類の一種です。
海藻も藻類の一種ですが、アクアリウムにおいては特に「鑑賞性を妨げる、不本意に発生した藻類」を総称してコケといいます。
鑑賞性を重視するリーフタンクにおいて鑑賞性を妨げる存在となるコケは徹底的に対策すべき存在といえるでしょう。
コケの種類
リーフタンクに発生しうるコケは、一口にコケといっても何種類かいます。
主に「珪藻(通称:茶ゴケ)」、「緑藻(通称:緑ゴケ)」「シアノバクテリア(通称:赤ゴケ)」の3種類が発生頻度の高い、厄介なコケです。
他に「シオミドロ」もよく見かけます。
それぞれの対策方法を見ていきましょう。
珪藻(通称:茶ゴケ)
主に水槽の壁面に生える茶色のコケです。
栄養塩が過剰な環境で発生しやすく、立ち上げてすぐの水槽で特に生じやすいです。
生体の数や餌の頻度が多すぎる場合に発生しやすい傾向があります。
茶ゴケは平面に生えることが多く、擦れば簡単に除去できます。
メラミンスポンジやスクレーパーを使って除去しましょう。
茶ゴケを食べる生体としては、貝の仲間が有効です。
マガキガイやシッタカガイ(バテイラ)、コイソガイなどの貝類や、ヤエヤマギンポがコケ掃除要員としてよく知られています。
目に見える範囲を除去したら、珪藻類の発生を抑制する水質調整剤があります。
それらを添加して予防に努めると良いでしょう。
また、ケイ酸は主に水道水から供給されます。
生体の数や餌に問題がない場合、人工海水を溶かすのに使用する水道水の原水に含まれるケイ酸塩が多い地域の可能性もあります。
その場合は天然海水またはRO浄水器を利用することで、解決する場合があります。
緑藻(通称:緑ゴケ)
水槽の壁面やライブロックの表面に生えることが多い緑色のコケです。
拡大してよく見ると糸状、また房状の形状をしています。
除去にはカンギクガイやアワビのほか、各種ヤドカリ類、エメラルドグリーンクラブといった藻食性の強い甲殻類などが有効です。
ライブロックなどレイアウト素材の表面に生えたものは生体に食べさせることで駆除させ、平面に生えたものはメラミンスポンジやスクレーパーなどでそぎ落とすと良いでしょう。
緑藻はリン酸塩が過剰な環境で発生しやすい傾向があります。
リン酸塩が過剰な環境ではサンゴもうまく育たないことが多いので、コケ除去剤のほかリン酸吸着剤なども活用し、再発を防ぎましょう。
リン酸塩の増加は主に生体に与えている餌に由来します。
給餌量を見直すことで、解決する場合もあるでしょう。
シアノバクテリア(通称:赤ゴケ)
水槽の壁面やライブロックなどをべったりと覆う赤いコケです。
レッドスライムとも呼ばれます。
とにかく見た目が悪く、鑑賞性を妨げるので嫌われるコケです。
指でこするだけでも簡単に除去できますが、何度でもしつこく生えてくるのが厄介な種類です。
シアノバクテリアが発生する場合、ろ過バクテリアのバランスが崩れています。
このため環境を改善しないことには、駆除しても再発します。
シアノバクテリアの対策は、まず競合相手となる多様な微生物の定着を図りましょう。
それから、シアノバクテリア自体を食べたり、底床を攪拌する生体を追加すると良いです。
具体的な手順としては、まずは壁面や底床に生えるシアノバクテリアを可能な限り駆除しましょう。
破片は水換えを兼ね、ホースでできる限り吸いだします。
次にヨコエビやゾエアなどの微生物を導入します。
すでに魚が入っている場合は、これらの生物を定着させるため一旦取り出したほうが確実です。
またシアノバクテリアが発生するということは、水槽の容量に対し魚が多すぎる可能性もあります。
リーフタンクとして管理する場合、水槽をサイズアップするか、または魚の数を見直したほうが良いかもしれません。
微生物を導入して1~2週間ほど経過させ、定着を図ります。
なお導入してもすぐに効果が表れるわけではありません。
おそらく、シアノバクテリアは再発します。
このため再発したシアノバクテリアを再度、可能な限り駆除します。
シアノバクテリアを駆除したら、もともと入れていた魚を戻しましょう。
駆除後、ヤエヤマギンポやタツナミガイといった、シアノバクテリア自体を食べる生体を入れると効果的です。
特にタツナミガイは単体での処理能力が非常に高いです。
反面、コケがなくなると餓死してしまうことがあり、タツナミガイは死ぬと水質をひどく悪化させます。
コケがなくなったらリフジウムタンクで飼育するなど、導入する場合はコケがなくなった後の対処も考えておきましょう。
加えて、ミズタマハゼやクロナマコといった底床を攪拌する生体を入れると、底床上のシアノバクテリア発生率を軽減できます。
ミズタマハゼは底床の攪拌には効果的ですが、低い位置にあるサンゴに砂を吐き掛けてしまうことがあります。
レイアウト上低い位置にサンゴを配置している場合は、クロナマコを採用すると良いでしょう。
シオミドロ
ライブロックの上にもじゃもじゃと生える茶色の藻類です。
糸状の藻類が複雑に絡まり、丸くなったような形状をしています。
形状はアオミドロに近いものの、コンブやホンダワラなどが含まれる褐藻類の一種です。
シオミドロの除去には上でも紹介したタツナミガイ、ヤドカリ、エメラルドグリーンクラブに加え、アシナガモエビが有効です。
コケ対策の共通事項
コケは全般的に栄養塩が過剰気味な状況で発生します。
コケが大量に発生する場合、サンゴにとっては良くない環境である可能性が高いです。
特にミドリイシなどの低栄養塩な海域に生息するハードコーラルを育成している場合、コケが発生しているということは育成にあたり適切でない環境の可能性も高いです。
したがって、生えてしまったコケは対策すると同時に以下の4点を見直すと良いでしょう。
- 生体の数
- 給餌頻度
- 照明の点灯時間
- 水流
- 水道水原水
生体の数
水容量に対し生体の数が多すぎると、残餌や老廃物などにより富栄養化しやすくなります。
個体数が多すぎる場合は、別の水槽に移すなどして水槽内の生体の数を減らしましょう。
給餌頻度
生体の数が適切であるにも関わらずコケが生える場合、給餌回数が多すぎる可能性があります。
魚への給餌は1日1回程度にまで減らしても良いでしょう。
照明の点灯時間
照明の点灯時間が長すぎてもコケが発生する原因となります。
目安として、リーフタンクでは1日当たり6~10時間点灯が望ましいです。
コケが生えてしまう場合は少し点灯時間を短くしてみましょう。
水流
水流が水槽の隅々までいきわたっておらず、淀んでいる箇所があるとシアノバクテリアが特に発生しやすくなります。
サーキュレーターの配置を確認し、淀みなく水流を作れているかどうか再点検してみましょう。
水道水原水
人工海水を使用している場合、お住まいの地域によって硬度が異なります。
海水水槽の維持に当たっては、硬度が高い地域のほうがpHの低下が起きにくくなり、メリットとなります。
一方で、リーフタンクの場合にはケイ酸塩とリン酸塩の含有量も重要です。
リン酸塩は主に海水魚など生体に与えている餌に由来しますが、ケイ酸塩は主に水道水原水に由来することが多いです。
水換えが裏目に出るケース
一般的に余剰なケイ酸塩やリン酸塩は水換えにより除去するというのがスタンダードです。
しかしながら、お住まいの地域によっては水道水原水のケイ酸塩およびリン酸塩含有量が高い地域もあります。
このような地域の場合、水換えをすればするほど逆に水槽内にケイ酸塩やリン酸塩を供給してしまう形となります。
生体の数や給餌頻度、照明の点灯時間や水流を確認していずれにも問題が見当たらなければ、目に見えないケイ酸塩やリン酸塩の供給がコケ発生の原因につながっている可能性を疑ってみてください。
リン酸塩・ケイ酸塩はともに専用の測定試薬が販売されています。
これで測定することにより、飼育水に含まれるリン酸塩・ケイ酸塩の状況は可視化できます。
人工海水はケイ酸塩やリン酸塩が含まれていない水で調製するのが望ましく、含有量が多い地域の場合はRO浄水器を利用すると好ましい結果が得られます。
吸着剤による除去
リン酸塩・ケイ酸塩ともにそれぞれ専用の吸着剤が存在します。
こちらを水槽内に投入するのも有効です。
RO浄水器本体の導入は水道水由来のケイ酸塩・リン酸塩の上昇をほぼ確実に断ち切れますが、その代わりかなり高コストになることが多いです。
吸着剤はそれよりも低コストで導入できるので、先に吸着剤を試してみるのも良いでしょう。
コケ対策の基本 まとめ
- コケはリーフタンクの鑑賞性を妨げるので、優先的に除去しましょう。
- 栄養塩が過剰な環境でコケは発生しやすくなります。
- 珪藻は立ち上げ初期に発生しやすいコケです。
ケイ酸塩が過剰な環境で発生しやすくなります。 - 緑藻は生体が過密気味な環境で発生しやすいコケです。
リン酸塩が過剰な環境で発生しやすくなります。 - シアノバクテリアは別名レッドスライムとも呼ばれる、赤く粘着質なコケです。
除去自体は容易なものの、除去してもすぐに再生するので長期戦になりやすく厄介です。 - シアノバクテリアは水槽内の微生物のバランスが崩れることにより発生しやすいです。
微生物の定着を促し、飼育環境を見直すことで対策を図りましょう。
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