ビピンネイトシープラムは、カリブ海を中心に分布する好日性ヤギの一種で、扇状に広がる美しい枝ぶりが魅力のサンゴです。そんな繊細な枝ぶりが魅力の本種は、好日性ヤギのなかでもトップクラスの人気を誇ります。
一見すると繊細で難しいイメージのある本種ですが、実際には丈夫で飼いやすいサンゴでもあります。
今回はビピンネイトシープラムについて解説していきます。
基本情報

流通名 | ビピンネイトシープラム |
学名 | Antillogorgia bipinnata |
分布 | カリブ海 |
グループ | ソフトコーラル(ヤギ類) |
飼育しやすさ | ★★★★☆ 比較的丈夫で初心者にも飼いやすい。 |
入手しやすさ | ★★★★☆ カリブ海産好日性ヤギではよく見かける |
カリブ海に生息する好日性ヤギの一種で、0~30mほどの比較的海流が穏やかな海域で見られるようです。日本で流通するカリブ海産好日性ヤギとしては最もよく見かける種類でもあり、繊細な枝ぶりが人気を集めています。
枝は細く柔軟性があり、他のヤギ類にはない柔らかな印象を持っているのが特徴のひとつです。
販売されているものは大きくても10数cmほどのものが多く見られますが、自然の海中ではかなり大きくなるようで、枝が20mを超えるほどの巨大な群体が確認されたこともあるようです。

流通名のビピンネイトシープラムという名前は、種小名のbipinnataからきています。
bipinnataという言葉はラテン語の「bi(2回)+pinnata(羽状)」が組み合わさった名前で、「枝が2回以上、羽状に分岐する」ことを意味しており、大きく育った姿はその名の通りの複雑な枝状の茂みを作ります。
販売名としては「ピ」ピンネイトシープラムとも呼ばれますが、これは誤読からきており、種小名のスペルからも「ビ」ピンネイトの読みが正しい読みとなります。
性質は他の好日性ヤギ同様、比較的丈夫で初心者でも飼いやすいサンゴといえます。
ある程度サンゴ飼育に慣れてきたビギナーで、立体的な枝ぶりを持つサンゴにチャレンジしたい方にもオススメな種類です。
特徴的な枝ぶりからサンゴレイアウトのワンポイントとしても配置するもよし、1本から大きく育て上げるもよしと、さまざまな楽しみ方ができるサンゴでもあります。
また、よく似た姿のサンゴでパープルシープラム(Muriceopsis flavida)という種類がいますが、ビピンネイトシープラムは粘液の分泌量が多く、触れたときにヌルヌルとした手触りがする点でも区別ができます。
飼育要件
自生地の環境 / Habitat Sea Area |


・カリブ海の貧栄養海域から中栄養海域まで幅広い海域に生息しています。
・光合成のみでも飼育は可能ですが、小まめな給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。
適正水温 / Water Temperature |




・一般的なサンゴが好む水温を維持します。
・水温は28℃は超えないように管理しましょう。
光色のセッティング / Lighting Spectrum |




PARの目安 | 100~200 |
・光量は中程度。カリブ海の明るい海中に生息するので、なるべく明るめが推奨です。
水流 / Water Flow |



・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・強すぎる水流は好みませんが、枝が大きく左右に揺れるような水流が適しています。
エサの種類とサイズ / Feeding Menu |




・光合成のみでも飼育は可能ですが、成長を促進させたいのであれば適度な給餌も有効です。
・ポリプは小さめなので、植物プランクトンもしくはパウダー~顆粒サイズのエサが適しています。
・色揚げにはアスタキサンチンなどのカロテノイドを多く含むフードが有効です。
バリエーション
ビピンネイトシープラムは派手なカラーこそありませんが、数種のバリエーションが知られています。よく見られるカラーは、共肉が薄紫や白、褐色や黄色っぽいものなども存在します。
特に紫色のタイプは高い人気を集めています。




リーフタンクにおける飼育のポイント
ビピンネイトシープラムは枝が柔らかめで、強すぎる水流はあまり好みません。
一方で水流が弱いと成長が鈍るため、全体の枝が左右に揺れる波のような水流が適しています。
コントローラー付きのサーキュレーターで、大きく左右に揺れるような水流に調整しましょう。

▶ON-OFFを繰り返す間欠運転で左右に揺れる波のような水流を作ります
光合成のみでの飼育も可能ではありますが、それはサンゴの状態によるところが大きいので注意が必要です。痩せて体力が落ちているものなどは、衰弱して共肉が壊死してしまうことがあります。
共肉が薄かったり、ポリプの出が悪いものなどは体力が落ちていますので、サンゴ用栄養剤で基礎体力を整えてあげましょう。
特にポリプが白いものは褐虫藻が少ないため、光合成だけでは栄養が不足しがちです。
ポリプの色も給餌や栄養剤に頼るかどうかの目安のひとつとなります。


また、好日性ヤギは褐虫藻の光合成による栄養獲得以外に、微細なプランクトンを好んで捕食もしますのでプランクトンフードの給餌も有効です。
ヤギの仲間は植物プランクトンが生産するアスタキサンチンなどのカロテノイド類を使って共肉の色素を作ることが知られています。紫タイプの色揚げには、カロテノイドを豊富に含む植物プランクトンフードがオススメです。

▶アスタキサンチン豊富なヘマトコッカスを含む

▶カロテノイド豊富なデュナリエラを含む
好日性ヤギの飼育に失敗する原因として、「褐虫藻が少なく痩せた状態のまま、栄養の獲得を光合成に依存しすぎる」パターンが多く見られます。
適切なトリートメントにより栄養状態が改善されれば、ビピンネイトシープラムをはじめとした好日性ヤギの飼育は難しいものではありません。
ビピンネイトシープラムの調子がいまいち上がらないという方は、ぜひサンゴ用栄養剤でのトリートメントと、プランクトンフードによる給餌を行ってみてください。
ビピンネイトシープラムまとめ

ビピンネイトシープラムはカリブ海原産の美しい好日性ヤギで、柔らかで繊細な枝ぶりが魅力です。
流通するヤギの仲間は比較的枝が太めな種類が多いことから、際立った個性が光るサンゴとも言えます。
実際に水槽内でも目立つワンポイントになってくれることが多く、個性的なレイアウトの一員として活躍してくれます。
飼育については、体力のある健康な群体であればそれほど難しくはありません。
ただし、状態を見分けず光合成のみの飼育を行おうとすると、栄養不足で死んでしまうことがあります。
とはいえ、好日性ヤギは基本的に丈夫なサンゴではあるので、栄養状態を良好に保てばビギナーでも安心して育てられるサンゴです。
レイアウトにちょっとした変化が欲しい方は、ぜひこの魅力的なヤギをサンゴ水槽の一員へ迎えてみてください。
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