基本情報

流通名 | コーキー・シーフィンガー |
学名 | Briareum asbestinum |
分布 | カリブ海 |
グループ | ソフトコーラル:ヤギ類 |
飼育しやすさ | ★★★★★ カリブ海産好日性ヤギとしては丈夫で飼いやすい |
入手しやすさ | ★★★☆☆ 他のカリブ海産好日性ヤギと比べるとやや少ない |
一般的なヤギの仲間は褐虫藻と共生しない陰日性が多く見られますが、カリブ海には褐虫藻と共生する好日性のヤギが多く見られます。コーキーシーフィンガーはそんな好日性ヤギの一種です。

コーキーシーフィンガーの見た目はスターポリプが枝状の骨軸を持ったような姿をしており、共肉とポリプをアップで見ると非常によく似ています。実はコーキーシーフィンガーはスターポリプと同じBriareum属のサンゴで、基本的な体の造りは共通しています。
スターポリプとの大きな違いは、ヤギの特徴でもある骨軸を作ることです。
コーキーシーフィンガーはスターポリプと同じアクアリウム向けのソフトコーラルという目線で見ると、枝状の骨軸を形成することから一般的なソフトコーラルという括りではちょっと変わりもののようにも思えます。
しかし分類学的には、コーキーシーフィンガーは好日性のヤギ目としては典型的な特徴を備えた種類であり、「正統派の好日性ヤギ」と言える存在なのです。

Briareum asbestinum
※下部に剥き出しになった骨軸が見えます
対照的に、人気が高くソフトコーラルの基本種ともされるスターポリプは、ヤギ目に属していながらも骨軸を持ちません。 マット状に広がる独特の形態を持つため、分類上は「ヤギらしくないヤギ」として例外的な存在です。

Briareum hamrumと思われるタイプ
このように、アクアリウムでの扱われ方と分類学的な位置づけには、興味深いギャップが存在することもあるのです。
そしてコーキーシーフィンガーはスターポリプと同属であることから、非常に丈夫で飼いやすいサンゴです。
リン酸塩による骨格形成阻害も受けにくいことから、サンゴ飼育ビギナーや海水魚が多めの水槽にも向いています。
初めての枝状サンゴ(※ソフトコーラル)としてもオススメです。
ちなみにCorky Sea Finger(コルクのようなヤギ)という英名は、骨軸の周りにスターポリプ状の共肉が巻いている様子をコルクの樹皮に見立てて呼んでいるようです。

「コーキー・シーフィンガー」と呼ばれるようになりました
飼育要件
自生地の環境 / Habitat Sea Area |


・カリブ海の貧栄養海域から中栄養海域まで幅広い海域に生息しています。
・光合成のみでも飼育は可能ですが、小まめな給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。
適正水温 / Water Temperature |




・一般的なサンゴが好む水温を維持します。
・成長を促進させるのであれば26℃前後まで上げるのも良いようです。※28℃は超えないようにすること
光色のセッティング / Lighting Spectrum |




PARの目安 | 100~250 |
・光量は中~強。カリブ海の明るい海中に生息するので、なるべく明るめが推奨です。
・海面直下にも生息するため、ミドリイシと同じ光環境でも問題ありません。
水流 / Water Flow |



・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・枝状の骨軸を発達させることから、水流はある程度複雑で強めのものが適しています。
・弱くても問題ありませんが、成長を促進させるならミドリイシと同程度の水流が望ましいようです。
エサの種類とサイズ / Feeding Menu |




・光合成のみでも飼育は可能ですが、成長を促進させたいのであれば適度な給餌も有効です。
・ポリプは小さめなので、植物プランクトンもしくはパウダー~顆粒サイズのエサが適しています。
・共肉を発達させるにはアミノ酸、DHAやEPAなどの不飽和脂肪酸、適度なリンを含むものが推奨です。
バリエーション
コーキーシーフィンガーは、浅場に生息するものと深場に生息するもので枝の展開の仕方が変わると言われています。
これが個体群による特徴なのか、生息環境により変化するのか、完全には解明されていませんが、傾向として水深5m以内の浅場では枝が太短くなるとされ、水深35mほどの深場では細長く成長する傾向があるとのことです。
ただ、フラグサイズではあまり大きな差は見られないようです。
光の条件などにより、育ち方がどう変わるか試してみるのもおもしろいかもしれません。
カラーバリエーションについてはあまり大きな差はありませんが、ポリプが白っぽいものや褐色がかったもの、薄く紫色が出るものなどがいるようです。日本ではほとんど入荷することがありませんが、海外ではごく稀にわずかな蛍光グリーンが乗るようなものも出回ることがあるようです。




リーフタンクにおける飼育のポイント
基本的にはスターポリプとほぼ同様の飼育環境でも問題ありません。
ただし、枝状の骨軸を発達させたいならミドリイシ水槽のような強めな乱流を当てるのが適しています。

また、ポリプをなかなか開かないときは水流の強弱だけでなく、体力が落ちていることもありますので、しばらくはサンゴ用栄養剤の投与などで基礎体力を養うことがオススメです。ある程度体力が戻れば、ポリプも開きやすくなる可能性が高まります。
共肉の健康状態の見分け方はスターポリプとほぼ同じです。
健康な共肉は厚みを感じられる肉厚さがあり、ポリプに近い色をしています。
一方で、共肉表面がザラザラしたようになり色が白っぽくなっているところは壊死が進行しています。
徐々に共肉が剥がれ、骨軸が剝き出しになってくるようになります。

右の白っぽくなっている部分は共肉が死にかけています
共肉が剥がれて骨軸が剥き出しになってしまった箇所は、美観の観点からでは切り落としてしまっても問題ありません。ですが、共肉が育てば露出した骨軸部分を再度覆うように育ちます。
ただし、現在進行形で壊死が進行している場合、増殖したビブリオ菌が体力の落ちた共肉に感染し、壊死が広がる場合があります。壊死の進行を予防する観点では、感染が見られない箇所も含めて切り落とすのが推奨です。

光については水面直下の浅瀬にも生息することからミドリイシが好むような強光でも問題ありません。
しかし、購入直後などで若干体力が落ちている状態では強光障害を起こす可能性もあるため、水槽導入直後は光が強すぎない場所で栄養剤を使ったトリートメントを行い、体力がついてきたら明るい場所に移すのがオススメです。

しかし、購入直後で体力が落ちているときは無理に強光を当てずに、体力回復に努めるのが安心です
コーキーシーフィンガーまとめ
コーキーシーフィンガーは、カリブ海やバハマなどの熱帯海域に広く分布する褐虫藻と共生しているヤギの仲間です。サンゴの種類としてはスターポリプに非常に近い仲間で、本場のアメリカでも丈夫で飼いやすいサンゴとされています。
ヤギの仲間も含め、枝状のサンゴは飼育が難しいイメージがありますが、本種はサンゴ飼育初心者の方でも充分に飼育できるサンゴです。
枝状のサンゴを水槽に入れたいけどSPSはまだちょっと腰が引けてしまうという方や、カリブ海産の好日性ヤギにチャレンジしてみたい方にとってコーキーシーフィンガーは入門種として最適な種類です。
是非、この魅力的なサンゴを楽しんでください。
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