失敗しない人工海水の作り方

マリンアクアリウムを始めた方が、一番最初に向き合うのが「海水作り」。
それは、一見すると「塩を溶かすだけ」の実にシンプルな作業。

しかし、海の生き物たちが健やかに暮らすためには欠かせない、大切な「基礎基本」です。

今回は、初めての方でも迷わずに、確実に海水が作れる手順を丁寧に紹介します。

最低限、これだけ揃えよう

「色々な機材があって何を買えばいいか分からない」という方へ。
まずは以下のアイテムを揃えましょう。

  • 人工海水の素: 市販されている海水魚・サンゴ専用の「海の素」です。以下、「塩」と表現します。
  • 中和(カルキ抜き)した水: 水道水に中和剤を入れたものでOKです。
  • バケツ:20L前後のものが扱いやすいです。
  • 水中ポンプ: 入れるだけで、塩が均一に自動攪拌。
  • 水温計:サンゴ水槽なら、より正確なデジタル式が理想的。
  • 比重計(ハイドロメーター): 塩分の正確さを測る、いわば「海の物差し」です。
人工海水の素
バケツ 20Lぐらいが便利
カルキ抜き
水中ポンプ
攪拌に使用
水温計
サンゴ水槽にはデジタル式が◎
比重計
サンゴ水槽なら屈折式が◎

カルキ抜きには、「粘膜保護成分を含まない」ことを確認しましょう。
淡水・海水両用のカルキ抜き製品の一部には、魚の粘膜保護機能をうたう製品もあります。

カルキ抜きの注意点

粘膜保護成分の有無を確認

この成分は魚の状態を整えるには有効なのですが、プロテインスキマーを設置している水槽に入れてしまうと、プロテインスキマーがオーバースキムを起こし、一面泡だらけになってしまうリスクがあります。

プロテインスキマーを設置している水槽に使用するカルキ抜きは、必ず粘膜保護成分を含まないものを選んでください。

粘膜保護成分配合タイプは
スキマー設置水槽には不向き

カルキ抜き入りの人工海水もある

人工海水の製品によっては、最初からカルキ抜き成分が含まれたものも存在します。

カルキ抜き成分の含有の有無はパッケージに記載があります。購入時にどちらなのか確認しておきましょう。

カルキ抜き入りのタイプ
カルキ抜き無しのタイプ

「チオ硫酸ナトリウム」などの記載があれば、カルキ抜き入りです。
カルキ抜き成分含有タイプであれば、別途のカルキ抜きは不要です。

溶かし方の注意点

魚だけの水槽であれば、手で溶かしても水質にさほど影響はありません。
しかし、サンゴ水槽となると話は別。

手についているハンドクリーム、石鹸の残り、皮脂などが海水に混ざると、水質の変化に敏感なサンゴには悪影響を及ぼす場合があります。

サンゴ水槽では
手でかき混ぜない

水質の変化に特に敏感な種を飼育する場合には、バケツの中に小型の水中ポンプを投入。
これにより自動的に塩を攪拌させる手法が、ベテランサンゴ愛好家の間では採用されています。


人工海水の溶かし方

準備ができたら、いよいよ人工海水を作っていきます。
ここでは投入する順番と温度が成功の鍵を握ります。

  1. 「水が先、塩が後」が鉄則
    必ずバケツに水を溜めてから、塩を少しずつ入れましょう。
    先に塩をバケツに入れてから水を注ぐと、成分が一時的に濃くなりすぎてしまい、カルシウムなどが固まって溶けなくなってしまうことがあるからです。
  2. 水温は25℃前後が溶けやすい
    人工海水は、実際の水槽の温度に近い「25℃」で最も溶けやすく、成分が安定するように設計されています。
    冬場などはぬるま湯を使って、先に温度を調整しておきましょう。
  3. 水が「透明」になるまでしっかり混ぜる
    塩を投入したら、底に溜まらないよう丁寧にかき混ぜます。
    最初は白く濁りますが、しばらく混ぜるとスッと透明になります。

底に溶け残りがあると、後から比重が変わってしまったり、生体に直接触れて刺激になったりします。
バケツの底を覗き込んで、塩の粒が完全に消えたことを確認しましょう。

人工海水には海水の成分を再現するために、塩化ナトリウム以外にもさまざまな成分が配合されています。
そのため、すぐには溶けにくい成分(カルシウムなど)もあるため、時間をかけてしっかり溶かしきりましょう。

きちんと塩の粒が溶け切っていないと、パッケージ記載にある品質を十分に発揮できないことがあります。

※溶け切る時間の目安としては、海水魚向けの一般的な製品では30分~1時間ほど
サンゴ向けの微量元素強化配合型(ハイエンド製品)では2~3時間ほどです。
(外気温との差がある時期は、待ち時間に水温が変わらないようヒーターで加温するなど、水温調整もあわせて行ってください。)

なお、時間が長すぎると成分が沈殿してしまいます。
長くても4時間以内で十分ですので、それ以上かける必要はありません。


比重測定の重要性

海水が透明になったら、必ず比重計で塩分濃度をチェックします。
これは、魚やサンゴが体調を崩さないためには必須です。

あなたが何をメインに飼いたいかによって、理想的な比重の数値や、管理に求められる厳密さが少し異なります。

サンゴの場合

比重の目安:1.024 〜 1.026

サンゴは非常にデリケートです。
飼育水槽の比重に極力合わせましょう。

天然の海に近い「少し濃いめ」を好み、数値がわずかにズレるだけでもポリプを閉じてしまうことがあります。魚以上に精密な管理が求められます。

海水魚の場合

比重の目安:1.020 〜 1.023

魚は環境適応力が高いため、この範囲内であれば比較的安定して飼育できます。

トリートメントを目的とする場合は、少し薄めの方が、魚の体力消耗を抑えられるというメリットもあります。

もし数値が狙いの値からズレていたら、「濃ければ水を足し、薄ければ少しずつ塩を足す」ことで調整しましょう。
このひと手間が、生き物たちを健康に育てることにつながります。

比重計の詳しい種類と使い方は、以下の記事でも解説しています。


まとめ

人工海水を作る作業は、慣れてしまえばとても簡単です。
しかし、その過程が丁寧なのか、粗雑なのかといった差は、水槽という小さな世界で暮らす生き物たちにはダイレクトに伝わります。

「水温を合わせる」「水の後に塩を入れる」「透明になるまで混ぜる」「最後に比重を測る」
基本はこの4つだけ。

この4つを守るだけで、人工海水の品質を最大限に引き出せるはずです。
生き物たちがリラックスして泳ぐ姿を想像しながら、ぜひ楽しみながら取り組んでみてくださいね。

Dab.O.Haze

Dab.O.Haze(ダブ・オー・ヘイズ) 「霞のように謎に包まれた海の世界に、ちょっと触れてみよう」── 海水水槽の第一歩を丁寧にご案内。ハゼ系が得意。

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