コモンサンゴ / Montipora

コモンサンゴグループはミドリイシと並ぶSPS(Small Polyp Stony)Coralの代表種です。
テーブル状に広がるものや枝状に育つ種類が知られ、その姿は造礁サンゴの代表といった存在感を放ちます。

コモンサンゴはミドリイシに比べて丈夫で飼いやすい性質のものが多く、SPS入門種としても適したサンゴです。カラーバリエーションも豊富なことからフラグサンゴでも1ジャンルを構築しているほどの人気種でもあります。

基本情報

代表種ウスコモンサンゴ


コモンサンゴの仲間は太平洋~インド洋の熱帯海域に生息しており、日本近海(黒潮海域)でも見られる造礁サンゴの1グループです。生息環境はミドリイシとほぼ同じ貧栄養のサンゴ礁でよく見られます。

流通名コモンサンゴ
学名Montipora sp. ※複数種類を含む
分布太平洋~インド洋の熱帯海域
グループハードコーラル(SPS)
飼育しやすさ★★★★☆
SPSの仲間としては容易
入手しやすさ★★★★☆
比較的よく見かける

自生地の環境 / Habitat Sea Area
給餌は少なめ
給餌が有効
硝酸塩の目安5~10ppm
リン酸塩の目安0.02ppm以下

硝酸塩とリン酸塩はなるべく低い数値が望ましいですが、0にならない管理が推奨です。
水質を保ちつつ、必要な栄養が不足しないような管理がポイントになります。
成長が早いため、KHとカルシウムの数値に注意。

光色のセッティング / Lighting Spectrum
水深10m未満
水深10-30m
水深30-50m
水深50-80m
PARの目安200~350

・非蛍光の色素タンパクを多く持つものはアンバー(オレンジ~黄色)を含む白色に近い光が推奨。
・蛍光色を強化するのであればグリーン~UVを含む「ワイドブルーバンド」の領域を強化する。
・色素が薄いものは強光障害を起こすことがあるので、水槽導入直後の強光は避けましょう。

適正水温 / Water Temperature
高めの水温
標準的な水温
低めの水温
深海性

基本は24℃前後で管理。成長を優先させるなら26℃を上限とし、28℃を超えないようにします。
・水温が28℃を超えると褐虫藻が抜ける白化が進行し始めます。
水温が28℃を超えるとビブリオ菌の活動が活発化するためRTNを発症しやすくなります。

水流 / Water Flow
サンゴが左右に揺れる水流
澱みのないランダム水流
太くて強い水流

コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
波のような大きなうねりができる強めの水流を作りましょう。
コモンサンゴの上にデトリタスが溜まらないような循環水流が重要です。

エサの種類とサイズ / Feeding Menu
液体
パウダーサイズ
顆粒サイズ
ペレットサイズ

・水槽導入直後のトリートメントにはビタミンやアミノ酸を含む栄養剤の使用が有効です。
・給餌には水を汚しにくい生きた植物プランクトンが推奨。

代表的な種類

コモンサンゴの仲間もさまざまな姿形のものがいます。
テーブル状に広がるウスコモンサンゴやウネコモンサンゴ、枝状に育つエダコモンサンゴやアミメコモンサンゴなど。他にもたくさんの種類が流通します。

ウスコモンサンゴ
M. minuta
ウネコモンサンゴ
M. undata
エダコモンサンゴ
M. digitata
アミメコモンサンゴ
M. confusa

カラーバリエーション

SPSの仲間でもコモンサンゴは特に色素タンパク質の変異が起きやすく、ミドリイシ以上に派手なフラグサンゴも数多く流通しています。

コモンサンゴは蛍光色が薄い地味な群体や蛍光グリーン一色のものであっても、安定した環境で長期飼育していると少しずつ蛍光レッドや蛍光イエローといった派手なカラーへと変わることがあります。

そういった変化を楽しむのもコモンサンゴ飼育の醍醐味といえます。

フルグリーン
ベースグリーン&レッドポリプ
フルイエロー
グリーン&レッド
ベースシアン&パープル
ベースシアン&レッドポリプ
ベースパープル&レッドポリプ
ベースグリーン&オレンジポリプ
ベースブルー&マルチカラーポリプ

色の変化はサンゴの素質によっても変わるため、どんな色になるかはそのときまでわかりません。
最初から派手なカラーが出たフラグを集めるのも楽しいですが、グリーン一色のものから色の変化を楽しむのもお勧めです。

リーフタンクにおける飼育のポイント

SPSが生息する海域のイメージ

SPSの仲間は貧栄養海域のサンゴ礁に生息するハードコーラルであることから、水質は硝酸塩とリン酸塩の数値が低い貧栄養環境を保つ必要があります。

リーフタンクにおける硝酸塩とリン酸塩の供給源は魚やサンゴへの給餌由来のものがほとんどを占めます。
そのため、SPSを状態良く飼育するためには水槽に入れる海水魚の種類や匹数をよく吟味する必要があります。

きれいなサンゴ水槽にはついつい海水魚も入れたくなってしまいますが、SPS中心のリーフタンクにおける失敗の多くは海水魚を入れすぎてしまっているパターンが多くを占めます。

海水魚を追加したくなる気持ちをグッと抑え、サンゴの飼育に臨みましょう。

水質は貧栄養気味に保つ

コモンサンゴはミドリイシに比べると多少の栄養塩には強い傾向がありますが、コモンサンゴもリン酸塩の数値が高いと骨格の形成を阻害されてしまうので注意しましょう。

硝酸塩の数値はある程度あっても問題ありません。
成長が早いことから、むしろ硝酸塩が0になってしまわないような管理が重要になります。

ミドリイシほどに気を使わなくても大丈夫ですが、派手な蛍光色を持つものなどはリン酸塩と硝酸塩の数値が高くなると色が悪くなってしまうことがあります。

成長だけでなく、美しい色を楽しみたいのであれば貧栄養で清浄な水質を維持するようにしましょう。

硝酸塩とリン酸塩の数値は常に把握するようにしましょう
硝酸塩の目安5~10ppm
リン酸塩の目安0.02ppm以下

KHとカルシウム濃度の低下に注意する

コモンサンゴについて押さえておきたいもうひとつのポイントは「成長が早い」ということ。
ハードコーラルであるため成長が早いということは、骨格を形成するための元素の消費も早いという点です。

主に把握しておきたいのは骨格を構成する主要元素である「KH(炭酸塩)」「カルシウム」「マグネシウム」。試薬で濃度を計る必要があるのはこの3種類です。

ハードコーラルが必要とする骨格成分用の試薬
KHの目安7~12dKH
カルシウムの目安400~500ppm
マグネシウムの目安1200~1400ppm

この3つの項目を定期的に計測して、目安の範囲から外れていないかを計測しましょう。
不足していれば添加剤などを用いて補充し、過剰にありすぎる場合は水換えをしてバランスを戻すようにします。

次いで消費される元素は「ストロンチウム」「ヨウ素」「鉄」「カリウム」の4種類です。
これらは試薬類が少なく計測は難しいですが、人工海水を使った1週間に1回の定期的な換水を行っていれば枯渇の心配はありません。換水の期間が1か月以上開いてしまうような飼育スタイルの場合は注意しましょう。

SPSを数多く収容した水槽では元素の消耗も激しくなることから添加剤やカルシウムリアクターといった機材が必要となることもあります。

しかし、小さなフラグSPS数本程度であれば添加剤を使わず換水のみで元素の補充はカバーできます。

重要なのは「サンゴが必要とする元素は、必要な分量があればいい」ということ。
欠乏してしまうのもよくありませんが、過剰にあり過ぎても害が発生します。

サンゴが必要とする元素は「安全な許容範囲内をキープする」ということが大切なのです。

飼育するサンゴのサイズや数、水槽の総水量などによってセッティングと運用も大きく変わるため、ひとくちにSPS水槽といっても飼育スタイルに応じた管理方法が求められることを覚えておきましょう。

強い水流が必要な理由

コモンサンゴは潮通しの良いサンゴ礁を主な生息地にしています。

サンゴ礁は水中でもうねるような波が常にありますが、コモンサンゴが多く生息する浅い海域では潮の満ち引きによる強い波が起こりやすく、常にその身を委ねています。

そしてサンゴが取り込む微量元素の量は、体表に接触する海水の流速に依存していることが知られています。水流が速いほどサンゴは多くの微量元素を摂りこむことができ、代謝が活発化するのです。

水流が強いと摂りこめる元素量も多い
水流が弱いと摂りこめる元素量が少ない

コモンサンゴもミドリイシと並んでハードコーラルの仲間でも成長が非常に早い部類に入ります。
そのため必要とする元素量も多く、成長速度に合わせた元素供給が求められます。

こういった理由から、水流を強めて代謝を活発化させる必要があるのです。

さらに水流が滞ってしまうとコモンサンゴの体表にデトリタスなどのゴミが蓄積しやすくなり、RTN(Rapid Tissue Necrosis=急速な体組織崩壊)やSTN(Slow Tissue Necrosis=遅緩な体組織崩壊)といった病気を誘発する原因にもなります。

コモンサンゴの「健全な骨格形成」と「代謝の促進」、そして「病気の予防」という面でも水流の強さは重要なのです。

被覆系のコモンサンゴは特にゴミが被さりやすいため注意が必要です

コモンサンゴへの栄養補給とトリートメント

コモンサンゴも貧栄養海域に適応したサンゴです。
しかし、水槽内で光合成のみに頼るとコモンサンゴの健康状態によっては栄養が不足する場合があります。

コモンサンゴは共肉が薄く、痩せて体力が落ちている状態を見極めるのが難しい面があることから、水槽導入直後のトリートメントが重要です。

購入時点でポリプを出しているのが確認できれば体力はある状態と判断できますが、それでも水槽導入直後に充分な栄養が摂れずに力尽きてしまうというパターンは多く見られます。

コモンサンゴを迎えて1~2週間ほどはサンゴ用栄養剤でトリートメントを行いましょう。
一度状態が上がってしまえば成長も早く、丈夫な一面を見せてくれるようになります。

サンゴ用栄養剤「リーフエナジー AB+」

栄養剤を使うときの注意点として、絶対に過剰量を添加してはいけません。
コモンサンゴが吸収できなかった分は水中のバクテリアが栄養源としますが、水槽内の細菌叢によってはビブリオ菌などRTNを引き起こすバクテリアを増殖させてしまうことにも繋がります。

体力が落ちたコモンサンゴへの栄養供給は「増え過ぎたバクテリアを除去できる処理能力の高いプロテインスキマー」が必須になります。必ず栄養剤の規定量を厳守するようにしましょう。

コモンサンゴへの給餌

コモンサンゴに与えるエサは生きた植物プランクトンを主体としたものが推奨です。
ミドリイシほどにポリプを伸ばさずサイズも小さいため、動物プランクトン主体のフードはあまり向いていません。与えるのであればサイズの小さい植物プランクトンが適しています。

植物プランクトン主体の「リーフチャージ」

「べっぴん珊瑚 リーフチャージ」はカルシウムと必須脂肪酸を豊富に含む円石藻の一種プレウロクリシスを主体としていることからSPSのエサとして非常に優れています。またカロテノイドが豊富なドナリエラも含まれているので色揚げや酸化ストレス防御を上げる効果も期待できます。

栄養剤でコモンサンゴの基礎体力を付けてから、成長の促進や色揚げの段階に入ったところで植物プランクトンフードを与えるという使い分けをしましょう。

コモンサンゴ まとめ

コモンサンゴはミドリイシと比べてやや地味なイメージがありますが、実はSPSの仲間ではとても飼いやすく色揚げも楽しめるサンゴです。育てているうちに色素が変異する可能性もあり、自分だけのフラグコモンサンゴを作れるポテンシャルも持っています。

水槽導入後のトリートメント時に気難しい一面を見せる種類もいますが、基本的にはポイントさえ押さえてしまえばコモンサンゴを楽しむためのハードルは高くありません。

小型のフラグサンゴ水槽でも充分に育成と色揚げが楽しめるのもうれしいところです。
リーフタンクを華やかに彩る一員として、この魅力的なコモンサンゴを迎えてみてはいかがでしょうか?

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