オヤビッチャ　リーフタンクにおける飼い方の基本

オヤビッチャはリーフタンクとも相性の良い遊泳性のスズメダイの仲間です。
青灰色をベースとした全身に黒い帯が入り、頭部～背ビレの基部にかけては黄色く染まります。
日本近海にも広く分布しており、特に西日本の太平洋側では身近な漁港や磯などでもよく見られる魚種です。

スズメダイの仲間としては特徴的な名前ですが、「ビッチャ」とはある地域の方言で「子供」を指しています。
したがって、「親になっても子供のように小さいまま」の魚ということで、この名が付いたようです。

とはいえ、本種は最大で20cm程度にまで成長します。
食用魚としては確かに小型ですが、観賞用のスズメダイとしては大型の部類に入ります。

いかにも熱帯の海の魚といった見た目をしており、観賞魚としても人気の高い種ですが、スズメダイの仲間の例に漏れず水槽内での気性は荒めです。攻撃性が高く、同程度のサイズの他魚との混泳は不向きです。

その性質とサイズから、飼育感は淡水の中型シクリッドに近いと言えます。

魚に対しては攻撃的ですが、サンゴのポリプにいたずらすることはありません。
サンゴとの相性は良好です。

エサに関しても人工飼料に餌付きやすく、餌付けに苦労することはほとんどないでしょう。

基本情報

生物学的情報
名前	オヤビッチャ
別名	インドパシフィック・サージェント （※インド太平洋の軍曹、の意）
学名	Abudefduf vaigiensis
分布	日本近海、インド洋、太平洋
食性	雑食
グループ	スズメダイ

飼育要件
飼育しやすさ	★★★★★ とても容易
入手しやすさ	★★★☆☆ ふつう
餌付けしやすさ	★★★★★ とても容易
混泳適正	★☆☆☆☆ 混泳不可
最大体長	20cm程度
適正水温	24℃前後

リーフタンクにおける飼育のポイント

サンゴが健康的に育成できている環境であれば、本種は問題なく飼育できるでしょう。
相性の悪いサンゴも特にありません。

流通している海水魚の中では、最も飼育が容易な部類に入ります。
人工飼料にもすぐに餌付きやすく、飼育に関して苦労する要素はほとんどありません。

一点だけ注意点を挙げるのであれば、小型水槽での飼育は向いていないこと。
終生飼育を考えると最低でも６０×４５×４５cm水槽以上でのリーフタンク向きとなります。

他魚種との混泳について

スズメダイの仲間は一般に攻撃的です。
本種は基本的に混泳は不可と考えたほうが良いでしょう。
同程度のサイズの他魚に対しては、縄張りから排除しようと積極的に攻撃します。

水量に余裕のあるリーフタンクでは、複数匹入れると群れになって泳ぎます。
元来、オヤビッチャはサンゴ礁の隙間を群れで暮らす魚ですが、狭い水槽で少数を同居させてしまうと激しくケンカしてしまいます。

混泳させるには弱い個体が隠れられるシェルターと、ターゲットが１匹に集中しないように多数を混泳させることが必要です。また、成長すると体長20cm近くになることから複数飼育するなら120cm以上の大型水槽が推奨です。

リーフタンクで飼育すると本来の生態を再現できるため、より調子よく飼育できます。
大型水槽で魚はオヤビッチャのみを十数匹程度泳がせると、本種の魅力を最大限に引き出せるかと思います。

近所で見つけられるかも？

オヤビッチャは日本近海にも分布しており、特に千葉県以南の太平洋側の地域では珍しい魚ではありません。
特に黒潮の影響を受ける地域では多く見られる傾向があり、該当地域では少し海辺に出かけると見つけられるかもしれません。タイドプール（潮だまり）などで幼魚が泳ぐ姿もよく見られます。

日本海側にも分布しますが、太平洋側に比べると見られる個体数は少なくなるようです。
日本海側で見られる個体は、対馬海流に乗って流されてきた個体と考えられています。

地域によっては漁港など身近な場所からも釣れることもありますが、ほとんどの場合食用とはみなされていません。
ただ、鹿児島県の一部地域では本種を食用とする文化があるようです。

オヤビッチャ　まとめ

オヤビッチャはその美しい見た目と活発な性格から、多くのアクアリストに愛されています。
また特に西日本の太平洋側では身近な魚でもあり、シュノーケリングでも遭遇しやすく親しまれている魚です。

水槽内での存在感も抜群で、観賞魚として非常に人気があります。
また海水魚全体を見渡しても最も飼育が容易な部類に入ります。

スズメダイの仲間は一般的に攻撃的な性質を持ち、本種はその代表的な存在です。
基本的に協調性はなく、他魚との混泳は全く不向きです。

サンゴのポリプにいたずらすることはないので、リーフタンクとの相性は良い魚です。
元来サンゴ礁の隙間に群れで生息する魚なので、むしろリーフタンクで飼育したほうがより調子よく飼育できます。

流通する個体や、タイドプールなどで4cm前後の幼魚がよく見られますが、本種はスズメダイとしてはやや大型の部類に入ります。幼魚が売られていることが多いため小型魚感覚で飼えるイメージがありますが、本種を飼育するのであれば中型魚向けの設備を用意しましょう。

最大20cm程度まで成長するので、終生飼育を想定すると水槽サイズは最低でも60×45×45cm水槽を見込んでおきたいところです。

狭い水槽だとすぐにケンカしてしまうため単独飼育推奨ですが、群れを楽しみたいのであれば120cm以上の大型水槽で複数飼育するのが望ましいです。

オヤビッチャは身近な存在でありながら、しっかりと飼い込むことで魅力たっぷりな姿を見せてくれるでしょう。