ニシキテッポウエビは、その美しい色彩とユニークな共生関係で知られる海産のエビです。
特に共生ハゼとの共生が見られることから、多くのアクアリストに愛されています。
性質上、本種単独で導入するケースは少なく、共生ハゼとセットでの導入が一般的です。
リーフタンクでも、レイアウトと組み合わせるサンゴの種類に気を付ければ導入は可能です。
ニシキテッポウエビは、白と赤の鮮やかな縞模様が特徴的で、足には黄色の斑点が見られます。
このエビは強力なハサミを持ち、そのハサミを使って音を出すことができます。
この音は、エビがハサミを素早く閉じることで発生し、外敵を威嚇するために使用されます。
本種の流通量は、テッポウエビの仲間の中では最も多く見かけます。
入手しやすいテッポウエビといえるでしょう。
目次
基本情報
生物学的情報 | |
---|---|
名前 | ニシキテッポウエビ |
別名 | タイガーピストルシュリンプ |
学名 | Alpheus bellulus |
分布 | 西部太平洋~インド洋 |
食性 | 人工飼料、底床やレイアウトロック表面の海藻や微小生物 |
グループ | テッポウエビ |
飼育要件 | |
---|---|
飼育しやすさ | ★★★★★ とても飼育しやすい |
入手しやすさ | ★★★★☆ まずまず見かける |
餌付けしやすさ | ★★★★★ とても餌付きやすい |
混泳適正 | ★★☆☆☆ 共生ハゼとの混泳が最適 同種や近縁種とは激しく争うので注意 |
最大体長 | 6cm程度 |
推奨水槽サイズ | 30キューブ~60cm水槽 |
適正水温 | 24℃前後 |
リーフタンクにおける飼育のポイント
サンゴが健康的に育成できている環境であれば、水質に関しては本種は問題なく飼育できるでしょう。
水質に関しての要求はほとんどなく、餌に関しても人工飼料に慣れやすいため、とても飼育しやすいエビと言えます。
また、一部のハゼ類と共生する性質上、共生ハゼとペアでの導入が基本です。
巣穴を掘る習性があるので、底床の粒は均一でなく、大小入り混じったものが適します。
小粒と中粒サイズを混合して敷くのがベストです。
本種は積極的に底穴を掘る性質があるため、レイアウトを変えてしまうことがある点に注意します。
テッポウエビを入れなければトラブルは起こりませんが、共生ハゼはテッポウエビがいなければ安心して休める巣穴を確保することができません。
この性質に配慮して、底砂付近にはサンゴを配置しないようにしましょう。
サンゴは高めの位置に配置しておくことで、エビに埋め立てられてしまう問題は回避できます。
共生ハゼとの共生
ニシキテッポウエビは、ギンガハゼやクビアカハゼなどの共生ハゼと共生することで知られています。
本種を導入する最大の理由といえるでしょう。
共生ハゼとペアを形成することにより、エビが巣を作り、ハゼがその巣の入り口で見張りをするという協力関係が見られるようになります。
この共生関係は、エビとハゼの両方にとって非常に有益な「相利共生」にあたる関係です。
共生を特に望まない場合は、巣を掘ったきり出てこなくなることがあります。
鑑賞用に導入したのに、巣穴から出てこず鑑賞できない ということになりますので、導入するメリットが薄くなります。ハゼを入れるつもりがない場合は、他のエビを検討したほうが良いでしょう。
どのハゼとも共生するわけではない
とはいえ、本種が共生するハゼには好ましい組み合わせがあるようです。
あらゆる共生ハゼと共生するわけではありません。
ニシキテッポウエビは一般的に「ギンガハゼ」や「クビアカハゼ」、「ヤマブキハゼ」、そのほか「ダテハゼ」の仲間と共生しやすい傾向が知られています。
本種は流通する他の共生テッポウエビと比べサイズが大きめの部類に入るため、主に成魚で6cm以上になる中型種と相性が良い傾向にあるようです。
一方で、「ヤシャハゼ」や「ヒレナガネジリンボウ」といった、成魚でも最大4cm程度の小型の共生ハゼとは、ペアを形成しにくい傾向にあります。
これらのハゼは、本種とは別のテッポウエビ、「ランドールズピストルシュリンプ(コトブキテッポウエビ)」と共生しやすいことが知られています。
小型種とはペアを形成しにくい
このように、導入の際はエビとハゼの相性関係に注目することも必要です。
なお、最終的には個体差があります。
種類の組み合わせによって概ねペアを作りやすい/作りにくい組み合わせはありますが、100%絶対にペアを形成するとは限りません。
個体の性格等によっては、一般的に共生しやすいとされる組み合わせであっても、共生が成立しない場合もあります。
居候されることも
ニシキテッポウエビと共生ハゼが共生関係を築く中、この巣穴に全く関係のない第3者として遊泳性のハゼ類が潜り込んでくることがあります。
ハナハゼやハタタテハゼの仲間でそのような行動が見られます。
共生ハゼは見張り、テッポウエビは巣作りの共生関係にありますが、潜り込んでくる第3者はいわば居候のような状態です。
遊泳ハゼが巣穴にやってくるときは近くに外敵がいる可能性が高いため、警戒の一部として活用しているのかもしれません。
水槽内でもこの3者の不思議な共生関係を見ることは可能です。
ハゼと共生する理由
共生ハゼの仲間はテッポウエビとの不思議な共同生活を送ります。
基本的には自力で巣穴を掘ることが難しいハゼがテッポウエビに巣穴を提供してもらい、代わりに視力が良いので弱い外敵の排除や強い外敵の接近を警告する役割を担っています。
テッポウエビは巣穴を掘るのが得意ですが、視力が悪く外敵を見つけづらいのが弱点です。
ハゼに見張りをしてもらうことで、安全に巣穴の拡張に勤しんでいるようです。
外敵が近づくと、ハゼは弱い相手なら攻撃して追い払います。
強い相手が近づいてきた場合は、尾ビレでエビの触覚を刺激し、巣穴に逃げ込む合図を送ります。
このようにお互い持ちつ持たれつ両方に利益のある、相利共生の関係となっています。
このため、ニシキテッポウエビ単独で飼育すると本来の生態が観察できず、また底床に潜ったきり出てこないかもしれません。
テッポウエビが持つ特殊な生態に配慮するなら、やはり共生ハゼとはセットで導入したいところです。
他魚種との混泳について
共生しているハゼが、巣穴に近づく魚に対しては攻撃します。
またテッポウエビ自体も、ハサミから衝撃波を放って威嚇や攻撃をします。
水槽内から「パチン!」という音が聞こえたら、これはテッポウエビがハサミを鳴らしているのかもしれません。
水槽内では、威嚇音までは聞こえることも多いです。
しかし実際に衝撃波を放ち、獲物を仕留めるところまで観察できることはほとんどありません。
とはいえ、このような性質を持つことを踏まえると、低層魚との組み合わせはおすすめできません。
上層を泳ぎ、巣穴に近寄らない魚との混泳が適しています。
なお低層魚であってもヤエヤマギンポなど本種より大きくなる藻食性ギンポ類に関しては、混泳させても問題ないことが多いようです。
いわゆるコケ取り生体との共存はある程度可能です。
ニシキテッポウエビ まとめ
ニシキテッポウエビ白地に赤褐色~茶色のバンドが入るポピュラーな中型テッポウエビの一種です。
片方のはさみが大きく、ここからパチンパチンという音を出して敵を威嚇します。
砂地に巣穴を作り、ハゼの仲間と共生する習性を持ちます。
テッポウエビは巣穴を掘るのは得意なものの視力が弱いため、見張り役としてハゼと相利共生の関係にあります。
どのハゼともペアを組むわけでなく、共生しやすいハゼの種類にある程度傾向があるようです。
流通量が多い共生ハゼの中では、ギンガハゼ・クビアカハゼ・ヤマブキハゼ・ニチリンダテハゼなどとペアを形成することが多いようです。
リーフタンクに導入する場合は、底床近くにサンゴを配置していると、テッポウエビにサンゴが埋め立てられてしまう恐れがあります。
このため、サンゴの配置はなるべくレイアウト上部にすることを意識しましょう。
テッポウエビは地形を変えるのが得意なため、底部の地形は日々変わることがあります。
いくつかのポイントを抑えれば、リーフタンクとの相性は良いエビです。
ぜひ、共生ハゼと共にお手持ちのリーフタンクに追加してみてください。
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