アワサンゴグループ / Alveopora Group

ふわふわとした花のようなポリプが人気のアワサンゴ。
ハナガササンゴにもよく似た姿で認知度の高いLPSですが、その飼育は一筋縄ではいきません。

一般的には好日性サンゴは給餌が必要ないとは言われますが、本種もハナガササンゴ同様に給餌が重要なポイントになるサンゴで、長期飼育するには栄養の供給量が重要です。

今回はアワサンゴグループの基本部分と、その飼い方について触れていきます。

基本情報

流通名アワサンゴ
学名Alveopora sp.(※複数種類を含む)
分布太平洋~インド洋の熱帯海域
グループハードコーラル(LPS)
飼育しやすさ★★★☆☆
飼育に必要なポイントは押さえる必要がある
入手しやすさ★★★★☆
比較的よく見かける
備考光合成のみでは栄養が不足しやすいので給餌が有効。
寄生性のヒラムシが付きやすいので定期的な観察が必要。


ハナガササンゴによく似た姿のサンゴですが、実は分類上ではやや離れたところに位置づけられています。
ハナガササンゴ(Goniopora属)がハマサンゴ科に属しているのに対し、アワサンゴ(Alveopora属)はミドリイシ科に分類されています。

現在記載されているアワサンゴ属は17種いますが、日本近海にもニホンアワサンゴ(A. japonica)をはじめ11種類ものアワサンゴの仲間が生息しています。※そのほとんどが沖縄周辺で、本州近海で確認されているのは主にニホンアワサンゴ、アワユキサンゴ(A. spongiosa)、エダアワサンゴ(A. allingi)、A. excelsa(和名なし)の4種となります。

記載されているアワサンゴ属一覧
本州近海(暖流)でも確認されているアワサンゴA. allingi:エダアワサンゴ
A. japonica:二ホンアワサンゴ(日本近海固有種)
A. excelsa:和名なし

A. spongiosa:アワユキサンゴ
沖縄周辺で確認されているアワサンゴ※ニホンアワサンゴ以外の上記3種を含む
A. catalai:シャホウアワサンゴ
A. fenestrata:和名なし
A. minuta:和名なし
A. ocellata:和名なし
A. superficialis:和名なし
A. tizardi:和名なし
A. verrilliana:アワサンゴ
日本では未確認なアワサンゴ
インド洋~太平洋に分布
A. daedalea:和名なし
A.  gigas:和名なし
A. marionensis
:和名なし
A. noamiae
:和名なし
A. simplex
:和名なし
A. viridis
:和名なし

日本のアクアリウムルートでは立体的な骨格を形成するエダアワサンゴやシャホウアワサンゴ(A. catalai)、オーストラリア産のアワサンゴも流通することがあり、ごく稀に日本近海では見られない種類も入荷することもあります。

そういった複数の種類がまとめてアワサンゴの名前で販売されていますが、骨格の形状によっては飼育難易度が変わるため注意しましょう。

よく見られるものとしては「横に広がるタイプのアワサンゴ」のほうが飼育が易しめで、「骨格が立体的に成長するエダアワサンゴ(ブランチタイプ)」のほうが比較して気難しい傾向があります。

これは入荷直後の状態も大きく影響していますが、ブランチタイプはやや深めの場所にいることが多いようで安定した環境を好むようです。

よく見かけるタイプのアワサンゴ
立体的な骨格を形成するブランチタイプ

カラーバリエーションは蛍光色を持つものと非蛍光色素を発達させるものがいます。
非蛍光色素のものではピンクや白っぽい色のものも見られます。

蛍光色のものはグリーンが多く、稀にイエローの色素を持ったものがフラグサンゴとして販売されていることがあります。

ワイルドものや海中でブリードされた従来のアワサンゴはカラーバリーエーションはそれほど多くありませんでしたが、近年のフラグサンゴ化で安定した人工環境下でブリードされることによって徐々に派手な色彩を持つアワサンゴも流通するようになってきています。

蛍光グリーンの色素を持ったアワサンゴ
非蛍光ピンクの色素を持ったアワサンゴ
蛍光グリーンと非蛍光ピンクを併せ持ったアワサンゴ
蛍光イエローを発色するようになったアワサンゴ

飼育要件

自生地の環境 / Habitat Sea Area
給餌は少なめ
給餌と栄養剤の使用が有効

光合成のみでは栄養が不足しやすい面があります。
給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。

適正水温 / Water Temperature
高めの水温
標準的な水温
低めの水温
深海性

一般的なサンゴが好む水温(24℃前後)を維持します。
日本近海にも生息する種類は28℃を超えるとブラウンジェリーを発症しやすくなります。

光色のセッティング / Lighting Spectrum
水深10m未満
水深10-30m
水深30-50m
水深50-80m
PARの目安80~150

・サンゴの蛍光色素に対応した光色のものを使用しましょう。
光量は中程度。蛍光色がきれいに出る程度で問題ありません。
・色揚げを強化するならシアン~グリーンの光を増やしましょう。

水流 / Water Flow
サンゴが左右に揺れる水流
澱みのないランダム水流
太くて強い水流

・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・強すぎる水流は好みませんが、ポリプが左右に揺れるような水流をつけましょう。

エサの種類とサイズ / Feeding Menu
液体
パウダーサイズ
顆粒サイズ
ペレットサイズ

光合成だけでは栄養が不足しがちになります。小まめな給餌を行うと体力も付き飼育しやすくなります。
・可能であれば1日に1回の給餌を与えたいですが、無理な場合は2~3日に一度程度でも問題ありません。
・痩せて体力がないようであれば、給餌ではなく先に栄養剤によるトリートメントを行いましょう。

リーフタンクにおける飼育のポイント

アワサンゴの飼育はハナガササンゴに準ずるところがありますが、若干気難しい面があります。

必要とする栄養の要求量が大きいのに対し、水質の極端な富栄養化には若干デリケートな一面を見せます。
そのため、給餌も行いながらも水質を富栄養化させないように処理能力の高いプロテインスキマーを使うとよいでしょう。

ただし、清浄な水質が望ましいとはいっても硝酸塩とリン酸塩の値がほぼ0に近い極貧栄養環境は適していません。
適度な栄養塩がありつつ、過剰になり過ぎない程度の絶妙なバランスを保つ必要があります。

どちらかといえば栄養塩の数値を気にするよりも、残餌などでビブリオ菌などの病気を引き起こす細菌類や繊毛虫を増殖させない清潔な環境を保つことが重要です。

この点がアワサンゴの長期飼育を難しいものにしているといえます。
目安としてはハナガササンゴが好む条件より水質を若干きれいに保つ管理を目指します。

また一部の種類、特にエダアワサンゴやシャホウアワサンゴなどのブランチタイプと呼ばれる種類はプランクトン豊富な中栄養海域のやや深場に見られることが多いということで、栄養要求量が大きいことに加えて水質が安定した環境を好みます。

また、ショップでよくみかけるフラグサンゴ化されたものは充分な体力がついたものが多いですが、共肉が痩せたものは栄養剤などで基礎体力をつけさせるトリートメントが重要になってきます。


状態を見極めるのはポリプの開き具合ではなく、ポリプの付け根部分の共肉の膨らみ具合です。
ポリプが開いているとあまり見合えない部分なので、ポリプが開ききっていないときに確認するのがおすすめです。

フラグ化され状態の良いアワサンゴ
※共肉(ポリプの付け根)がよく膨らんでいる
入荷直後で、やや痩せぎみなエダアワサンゴ
※共肉(ポリプの付け根)があまり膨らんでいない

アワサンゴの仲間は体力が落ちると共肉が茶色くなって溶けるブラウンジェリーという病気に罹りやすくなったり、ポリプが共肉ごと剝れるといった症状が出やすくなります。

アワサンゴにはいかに栄養を摂らせて体力を付けさせるかが重要なポイントになります。

体力さえついてしまえば比較的丈夫で飼いやすくはやりますが、状態が上がるまでは水温も含めて安定した環境づくりを心掛けるようにしましょう。

アワサンゴグループの給餌とトリートメント

サンゴ用栄養剤で基礎体力を補いましょう
体力を付けたらリキッドフードを主食に与えます

給餌については基本的にハナガササンゴと同様の管理で問題ありません。
ただし、水質の悪化や変化に対してはハナガササンゴよりデリケートな面があるため与える量には注意する必要があります。

基本は水を汚しにくい栄養剤で体力を整え、成長と共肉の増体を目的としてリキッドフードを与えるようにします。
栄養剤やエサは残餌の発生を極力抑えるためにスポイトを使いピンポイントで吹きかけるようにして与えましょう。

栄養剤の投与や給餌はスポイトやシリンジで吹きかけるようにして行いましょう。
※画像はスコリミアでの給餌例

使用するリキッドフードは必須脂肪酸とアミノ酸が豊富に含まれるコペポーダを主原料としたものが適しています。

陰日性サンゴに比べれば餌の要求量は少ないので、1週間に3~4回ほどを目安に。
共肉がふっくらして充分に栄養が摂れているようであれば給餌回数を減らしても問題ありません。

円石藻配合のべっぴん珊瑚「リーフチャージ」

また、水質の維持と給餌を兼ねて生きた植物プランクトン(フィトプランクトン)の投入もおすすめです。
植物プランクトンは水槽内の動物プランクトンのエサとなってその数を増やす作用もあります。

さらに動物プランクトンが増えることによりサンゴのエサとなるだけではなく、微生物相のサイクルを整える効果も期待できます。

痩せているものにはいきなり給餌するよりも、液体の栄養剤でトリートメントを行います。
水槽に導入してしばらくは栄養剤を与えて基礎体力を整えるようにしてください。

寄生虫対策

アワサンゴのポリプに付いた寄生性ヒラムシの一種

アワサンゴもハナガササンゴ同様に寄生虫によって急激に弱ってしまうことがあります。
主に寄生性ヒラムシ(以下ヒラムシ)が取り付いていることが多く見られますが、これをそのままにしておくと水槽内では短命に終わってしまうことになります。

ヒラムシに取りつかれていると急激に体力を消耗してしまうので、発見次第駆除するようにしましょう。

コーラルクリーナー リバイブ
コーラルプロテック

ショップでトリートメントされているものでも、まれにポリプの奥にヒラムシが隠れていることがあります。
一見ヒラムシが見当たらなくても、念のため水槽導入前に駆除剤での洗浄を行うとヒラムシが侵入してしまう確率を下げることができます。

ヒラムシ駆除がアワサンゴ飼育を成功させるポイントのひとつと言っても過言ではないため、念入りに予防措置をとるようにしましょう。

アワサンゴグループ まとめ

LPSの中では長期飼育が難しいアワサンゴですが、その飼育のポイントは「水が汚れすぎないこと(栄養塩の数値よりも病原菌が増えにくい清潔な環境)」「給餌を行い、しっかりと栄養を摂らせること」「寄生性ヒラムシが付着しないように観察と対処を行うこと」の3つが重要になります。

はじめてアワサンゴを飼育する方も、過去にアワサンゴ飼育を失敗してしまった方もこれらのポイントを押さえて飼育してみてください。

ふわふわと揺れるアワサンゴの花畑を楽しむことができるようになるかと思います。

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