LPSの仲間でありながら、骨格が明確な枝状に育つという風変わりなサンゴ。
しかもカメノコキクメイシ(Favites)に近い仲間で枝状の骨格を形成するという変わった特徴を持っています。
枝状に育つサンゴはミドリイシなど飼育が難しいイメージがありますが、本種は他のLPS同様の環境で飼育を楽しむことができます。
日本ではあまりポピュラーなサンゴではありませんが、本種も海外では派手なカラーのフラグサンゴが作出されています。
今回はちょっと変わった枝状サンゴであるエダトゲキクメイシについて解説していきます。
基本情報
流通名 | エダトゲキクメイシ |
学名 | Cyphastrea decadia |
分布 | 沖縄以南~オーストラリア北部までの太平洋、インド洋 |
グループ | ハードコーラル(LPS) |
飼育しやすさ | ★★★★☆ 枝状の骨格を持つサンゴとしては飼育しやすい |
入手しやすさ | ★★★☆☆ 日本ではややマイナーなサンゴ |
分類的にはカメノコキクメイシ(Favites)属やノウサンゴ(Platygyra)属に近いトゲキクメイシ(Cyphastrea)属している種で、特徴的な枝状に成長する変わったサンゴです。
トゲキクメイシの仲間は塊状の骨格を形成しゴツゴツとしたポリプが目立つことから、英名では隕石のクレーターに見立ててメテオコーラルの名前で呼ばれることもあります。
トゲキクメイシの仲間はこのような塊状の骨格を形成する種類が多く見られる中、エダトゲキクメイシ(decadia種)は明確な枝状の骨格を形成する特異な特徴を持っています。
飼育についての基本的な部分は他のキクメイシ類に準じますが、枝状に育つサンゴに特有の性質として複雑で強めの水流を好みます。
飼育のポイントは、他のキクメイシ類と同様に給餌を行うことと強めの水流を当てることを両立した飼い方をすることです。これらのポイントを押さえることで立派な枝状骨格に育て上げることができるようになります。
飼育要件
自生地の環境 / Habitat Sea Area |
・光合成のみでは栄養が不足しやすい面があります。
・給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。
適正水温 / Water Temperature |
・一般的なサンゴが好む水温を維持します。
・水温が28℃を超えるとRTNやブラウンジェリー発症のリスクが高まります。
光色のセッティング / Lighting Spectrum |
PARの目安 | 100~150 |
・光量は弱~中程度。光が強すぎると強光障害を起こす可能性があります。
・赤や黄色などの蛍光色の色揚げを強化するならシアン~グリーンの光を増やしましょう。
水流 / Water Flow |
・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・枝状の骨格を形成することから、他のLPSよりもやや強めの水流を好みます。
・共肉の上にゴミが堆積しないようランダムで複雑な水流を当てるようにしましょう。
エサの種類とサイズ / Feeding Menu |
・動物質中心で消化吸収しやすいサイズのエサを与えます。
・ポリプはLPSとしては小さめなので、パウダー~顆粒サイズのエサが適しています。
・給餌の頻度は2~3日に一度程度を目安に。給餌量は残り餌が出ない程度の少量に留めます。
カラーバリエーション
エダトゲキクメイシのカラーバリエーションも緑や赤系など豊富に存在します。
主なカラーパターンはポリプと共肉部で色が分かれるものが多いですが、様々な色の組み合わせのパターンが見られます。
蛍光グリーンのものからレッドやオレンジ、イエローがのるものなど、さまざまなカラーパターンが存在します。
リーフタンクにおける飼育のポイント
エダトゲキクメイシ飼育のポイントは先述した給餌と強めのランダム水流の両立です。
特に枝状の骨格が発達したものは枝の隙間に残りエサなどのゴミが堆積しやすくなるため、これを防ぐ強さの水流が必要です。共肉上にゴミが積もるとビブリオ菌など病原菌の増殖を招いてしまうので注意しましょう。
水流が強いまま給餌をしてしまうと充分にエサを摂れなくなってしまうため、給餌のタイミングでは水流を弱めてから行いましょう。
光については、本種は強光を好まないので蛍光色がキレイに出る波長域の光を当てることを優先します。
栄養を給餌で採らせるスタイルであれば、それほど強い光は必要ないためレイアウトの物陰になるような場所でも配置が可能です。
枝状骨格を持つサンゴで物陰にも配置できるような種類はそれほど多くはないため、個性的なレイアウトを作るのにも活躍してくれます。
また、色が悪くなってしまうのは光や水質などが適していないことの表れでもあります。
そういった場合には、まず水換えを行い水質を平均的な数値にリセットしてから、光などの環境要素の改善を行うようにしましょう。
購入してからのトリートメント
購入したエダトゲキクメイシの共肉が骨格に張り付いたように薄くなっている場合は痩せていますので、いきなり給餌をするのではなく栄養剤を使って基礎体力をつけさせるトリートメントを行いましょう。
また、ショップで販売されているフラグサンゴであればそのリスクは低いですが、ディップ剤によるディッピングを行うことで寄生性のヒラムシやサンゴを専食するウミウシなどの混入を防ぐことができます。
新しいサンゴを導入するときはなるべくディッピングを行ってから、水槽へ入れられることをおすすめします。
エダトゲキクメイシへの給餌
与えるエサは成長を考慮し、アミノ酸や不飽和脂肪酸が豊富に含まれたフードを使用します。
原材料にコペポーダを使用したものが適しており、リキッドフードや冷凍餌を使用しても問題ありません。
給餌はスポイトやシリンジなどでピンポイントに与え、残り餌が極力出ないように行います。
給餌を行うときは最初にポリプが開いていることを確認してから水流を弱め、エサを吹きかけましょう。
ポリプを開いていなければ匂いの強いエサを軽く流すことで徐々にポリプを開くようになります。
これはエダトゲキクメイシが確実に栄養を摂れるための措置であるのと、同時に水を必要以上に汚さないための手法です。なるべく残り餌が出ないような給餌を行ってください。
残り餌が多く出るようだとビブリオ菌などの病原菌が増えやすい環境になり、共肉上へ残りエサが長時間堆積してしまうとその個所からRTNやブラウンジェリーなどを発症してしまうことがあります。
給餌を行う際は一時的に水流を止めるか弱める必要がありますが、給餌後に水流を戻した時点で残りエサが共肉上に残っていないか確認を行いましょう。
エダトゲキクメイシ まとめ
トゲキクメイシ(Cyphastrea)の仲間はフラグサンゴカルチャーが盛り上がる以前において、野生採取された地味な色彩なものが稀にしか流通しない非常にマイナーなサンゴでした。近年になりフラグサンゴの興隆とともにサンゴの色揚げ技術が向上すると、本種も非常にカラフルなフラグが流通するようになり注目を集めるようになりました。
日本においてはまだまだマイナーなサンゴですが、フラグサンゴの本場であるアメリカにおいてトゲキクメイシの仲間は1ジャンルを築くほどに人気を高めています。
そんなトゲキクメイシの仲間でもエダトゲキクメイシは枝状の骨格を持つ異端児的存在であり、水槽内でも抜群の存在感を誇ります。
飼育についても栄養がしっかり摂れていて、水流は強めで清潔な(ゴミが共肉の上に堆積しない)環境が用意できれば、それほど難しくはありません。
この一風変わったサンゴをぜひ楽しんでみてください。
コメント