淡水のアクアリウムの経験はあるけれど、海水のアクアリウムははじめて。
マリンアクアリウムもやってみたいけど、取り組み方がわからない。
淡水アクアリウムの経験がある方にとって、海水のアクアリウムは新たな挑戦となるでしょう。
本記事では、海水と淡水のアクアリウムの管理上の相違点について詳しく解説します。
目次
大きな違いは2つだけ
淡水のアクアリウムにはなく、海水のアクアリウムにある。
細かな相違点はいくつかありますが、決定的な相違点は、実は2個しかありません。
一つは、人工海水を入れること。
もう一つは「比重」を合わせるという概念があることです。
実はこの2点を除くと、水槽管理において淡水のアクアリウムで培ってきた経験は、ほとんどが流用可能です。
ネオンテトラやエンゼルフィッシュなど一般的な淡水の熱帯魚の飼育経験をお持ちであれば、その経験は9割以上活用できます。
人工海水とは
読んで字のごとし、人工海水とは水道水に溶解することで天然の海水に近しい塩分やその他成分を配合した粉末です。
成分は塩(塩化ナトリウム)を中心に多様な無機元素で構成されており、組成を天然海水に近付けるため塩化ナトリウム以外の微量元素も絶妙なバランスで配合されています。
海の生き物の飼育にあたっては、この「微量成分」が非常に重要な役割を果たしています。
食塩など塩だけを溶かしても海の生き物を飼育することはできないのは、この微量成分が含まれていないためです。
塩(塩化ナトリウム)にはナトリウムが含まれていますが、カリウムやマグネシウム、ヨウ素、ストロンチウムなど他の元素も、海の生き物が生きていく上では微量ながら必須なのです。
人工海水には絶妙なバランスで塩と微量成分が配合されていますので、適切な量を水に溶かすだけでいとも簡単に海水の成分を再現できます。
2種類ある人工海水
人工海水には大きく分けて2種類あります。
微量元素の配合が控えめで低栄養塩を意識したものと、特にサンゴの成長に重点を置き微量元素を多めに配合したものとがあります。
一般に前者は海水魚向け、後者はサンゴ向けとされることが多いです。
基本的な選び方は製品に記載のある通りですが、サンゴ飼育を目的とした水槽であっても、水槽の状況や仕上げたい目的、方向性などによっては海水魚向けの人工海水の使用が適切となる場面もあります。
▼人工海水について、さらに詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
足し水は淡水で
海水アクアリウムでは蒸発による水の減少が塩分濃度に影響を与えます。
このとき、足し水を行う必要がありますが、蒸発した分の水は淡水で補充する必要があります。
海水で補充してしまうと、比重が必要以上に高くなってしまうためです。
塩ダレの掃除
蒸発に伴い、海水中に含まれている塩分は水槽壁面に浮き出てきます。
エアレーションやちょっとした水はねのしぶきにも塩分が含まれており、これらが蒸発すると塩が残ります。
このため、水槽の内側だけでなく、外側に塩が付くこともあります。
この析出した塩は通称「塩ダレ」と呼ばれます。
塩ダレを放置すると水槽の景観が悪くなるので、定期的に水槽縁の塩掃除が必要です。
軽く水をしみ込ませた布でふき取りましょう。
淡水の水槽でも付近に電化製品を置くことは推奨されませんが、海水水槽ではこの塩ダレの問題があるため、淡水以上に推奨されません。
比重とは
1気圧、水温4℃の真水と比較した同じ体積の物質の重さとの比、を比重といいます。
天然の海水の比重は、水温25℃で一般に1.021~1.030の範囲にあることが多いです。
つまり海水は真水よりも、約1.02~1.03倍程度重いということになります。
また、比重は水温によって変化します。
生き物を水槽に入れる上で、水温やpHを合わせてから入れる(水合わせ)のは淡水水槽でも経験があると思いますが、これに加え比重も合わせてから入れる必要があるというのは海水水槽ならではの要素です。
比重の調節には、「比重計」と呼ばれる専用のアイテムを用います。
比重計にはいくつかのタイプがありますが、初めて使う場合はアナログ式がおすすめです。
比較的安価で入手でき、器具の中に海水を汲むだけで比重を測れます。
比重計には他にも、水槽内に浮かべて測定する「ボーメ計」、より正確な測定が可能な「屈折式」、高価ですが最も正確な「デジタル式」があります。
ほとんどの海水魚の飼育には、「アナログ式」で十分です。
しかしサンゴを飼育する場合、例えばミドリイシのようなシビアな水質管理を要求するサンゴを飼育する場合には、「屈折式」か「デジタル式」といった高精度の計測が可能な製品を利用すると良いでしょう。
比重計によっては、水温25℃(プラスチック製のもの)や20℃(屈折式)を基準にしているものがあります。
人工海水を溶かすときは、水温を比重計に合わせなければなりません。
※同じ塩分濃度(%)でも±5℃の温度差があると、比重は0.001~0.002くらい変化します。
この理由から、デジタル式は正確な比重だけでなく水温と塩分濃度も同時に計れるので、「比重の変化にシビアな生物の飼育に適している」と言えます。
海の生き物を飼育するにあたっては、人工海水の投入量を調節することにより、比重を適切な範囲に調整することが重要です。
一般的には、海水魚の飼育には1.021~1.024の範囲が良いとされています。
サンゴは海水魚よりも少しだけ高めとし、1.024~1.026の範囲が良いようです。
適切な比重が分からない場合は、ひとまずこの範囲にしておくと飼育しやすいことが多いようです。
もちろん、これらの数字はあくまでも目安です。
実際には、生き物の種類によって理想とする比重の範囲は異なります。
自分がこれから飼育しようとしている生体は自然下ではどのような環境に生息しているのかが分かっていると、理想的な比重を求めやすくなります。
目安としては水1Lあたり人工海水300~350g程度を基本とし、飼育したい生体の種類によって目標値を決めて増減させるのが良いでしょう。
pH管理にちょっと注意
pH管理は淡水のアクアリウムでも重要ですが、海水の場合はpH8.0以上となることが一般的です。
ph7.5は、海水では低すぎるぐらい の値となります。
pHが高い飼育水ではアンモニアの毒性が強くなります。
そのため、アンモニアを無害化する生物ろ過の働きが重要になります。
まとめ 淡水と海水のアクアリウムの管理上の相違点
管理上の注意点は、2つだけ。
一つは、「人工海水」を飼育水に入れること。
もう一つは、水温と「人工海水」の投入量により比重を調整すること。
「人工海水」と「比重計」の使い方さえ覚えてしまえば、海水水槽の基本的な管理は難しくありません。
この二つ以外に関しては、基本的な管理方法は淡水も海水も共通だからです。
ここまで解説した「人工海水」と「比重」の話を抑えておけば、ひとまず丈夫な海水魚を少数飼育する分には問題ないでしょう。
比較的丈夫な甲殻類、カニやヤドカリなども飼育可能です。
しかし、より水質に敏感な海水魚や、サンゴを飼育したい場合。
この場合は、ここまでの説明ではまだ足りません。
これよりももう少し、より上質な設備が必要になってきます。
サンゴを飼育する上で要求される要素は、次の機会にお届けします!
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