多種多様な石灰藻や海藻類、微生物などが付着している、サンゴの骨格を主成分とした生物岩(石灰岩)です。
骨格となる岩自体は、かつてサンゴの一部だったものであり、生き物ではありません。
しかし、その表面に様々な生物が付着することで、一種の生態系が形作られています。
それゆえに、Live Rock(生きた岩)と呼ばれるのです。
高い水質浄化能力
ライブロックは水質浄化能力を持っており、海水水槽においてろ過をサポートします。
特にサンゴをメインとしたリーフタンクを構築する上では必需品とされ、この水質浄化能力はマリンアクアリウムを維持する上で欠かせないものとされていました。
事実、今日のマリンアクアリウムにおいて、様々なサンゴや魚種の飼育ノウハウが蓄積可能となったのは、このライブロックの存在が大きいです。
1990年代にその存在が知られるようになって以降、ライブロックはマリンアクアリウムの可能性を大きく広げてくれたアイテムに他なりません。
メリットとデメリット
一見水質浄化にとにかく有用なライブロック。
しかし、メリットだけでなくデメリットもあります。
メリットだけでなく、デメリットもよく勘案したうえで導入を決定しましょう。
メリット
- 付着生物の力で水質浄化能力が高い
- 最短1週間程度で水槽の新規立ち上げが可能
- ライブロック自体の色と形が様々でレイアウトが楽しめる
この3つのメリットが、2000年代のマリンアクアリウムをそれまでのものとは一変させた理由です。
当時のライブロックの登場は、まさに「革命」といえるものでした。
デメリット
- 有害な生物が潜んでいる場合がある
- 自然環境への負荷が大きい
ライブロックの特徴は様々な生物がその表面に付着していることですが、必ずしも有益な生物だけが付着しているとは限りません。
飼育している生体や、水槽の景観、さらには飼育者本人に対して害を与える生物も、中には潜んでいることがあるのです。
例えば小型のカニやシャコの仲間は、飼育している海水魚に直接攻撃を仕掛けてしまうリスクがあります。
通称「カーリー」と呼ばれるセイタカイソギンチャクは要注意です。
これらは魚に対して直接危害を加えることは少ないものの、その刺胞毒で隣接するサンゴにダメージを与えてしまいます。
また、大量に増殖することで見た目が良くないとされ、水槽の景観を損ねます。
ウミケムシやガンガゼ、イモガイといった有毒生物も危険です。
これらの生物は飼育者に対し毒針を刺してくることがあります。
特にイモガイは危険で、人にも効く神経毒を持っています。
万が一刺された場合は、すぐに病院で診てもらってください。
イモガイの毒は神経毒であるため、そのまま放置すると全身のしびれや呼吸困難を引き起こす恐れがあります。
これらの有毒生物が付着していることはまれですが、それでもリスクは0ではないことを留意しておく必要があります。
天然採集品のライブロックは自然環境への負荷が大きいことも、近年では問題視されています。
ライブロックの功罪
ライブロックはその高い水質浄化能力でマリンアクアリウムの必需品とされました。
ライブロックの登場以前、1990年代以前のマリンアクアリウムといえば白化したサンゴ、通称「かざりサンゴ」を中心としたレイアウトが定番でした。
しかしライブロックの登場以後は、そのスタンダードが一変。
今日知るところである、多種多様で色鮮やかな海水魚・サンゴの飼育方法。
それらは、ライブロックの登場により実現したといっても過言ではありません。
一方でライブロックはその存在が知られた当初、ほぼ全てが天然採集品に頼られていました。
しかしながら、その実用性が判明すると、急激に需要が増加しました。
その結果、各地で乱獲が相次ぎ、資源量の減少が問題視されるようになってきました。
ライブロックの大量採取は、造礁サンゴの形成に直接的なダメージを与えうるからです。
天然ライブロックの流通は2013年を最盛期として、その後規制が強まりました。
結果、その流通量はどんどん減っていきました。
一方でライブロックは近年のマリンアクアリウムを形成した、その根幹となるアイテムの一つです。その需要はなくなりません。
ライブロックなくして、現代のマリンアクアリウムは成立しえないからです。
このため採取品の流通をいきなり0にすることは困難です。
代替案として、養殖ライブロックへの転換が少しずつ進められるようになりました。
なお、国内最大のライブロック産出県である沖縄県では、県の漁業調整規則によりライブロックの無許可での採取は禁止されています。
ライブロックは1990年代以降、マリンアクアリウムの可能性を大きく広げてくれたアイテムですが、その一方で図らずも自然環境にダメージを与えてしまっていました。
ライブロックはマリンアクアリウムの構築に確かに有用なアイテムです。
しかし、今後使用する際はその背景と重みを理解したうえで導入したいところですね。
様々な代替案
端的に言ってしまうと、天然ライブロックの流通は今後もう長くはないかもしれません。
そこで様々な代替案が出てきています。
一つは、養殖ライブロック。
ライブロックのベースとなるサンゴ岩を、管理された区域となる海中に沈め熟成させたものです。
熟成に時間はかかりますが、天然海水中で熟成させているため、品質自体は天然ライブロックとそう変わりません。
もう一つはライブロックレプリカ。
見た目ライブロックそっくりに仕上げたレイアウト素材です。
一口にレプリカといっても見た目を重視したもの、多孔質素材を用いろ過バクテリアの定着を重視したもの、その両方を取り入れたものと様々あります。
希望に応じて使い分けるとよいでしょう。
注目の素材 マルコロック
代替品として注目される「マルコロック」は、まさにライブロックのベースとなるサンゴ骨格由来の石灰岩です。
アメリカ、フロリダ州のある地層から産出する陸上の岩石です。
したがって、採掘にあたり海洋環境にダメージを与えないのが最大の特徴です。
これは新生代にかつてサンゴ礁だった地層から産出されるもので、変成を比較的受けていません。
海中にあるサンゴ骨格由来の石灰岩同様、高い多孔質と内部構造に空洞が多数みられるのが特徴です。
つまり、ライブロックのベースとなる石灰岩同様、バクテリアの定着にも長けるのです。
マルコロックをベースに水槽内で熟成させ、石灰藻やバクテリアが付着すればライブロックと同等の効果が見込めます。
またライブロックとは異なり、カニやシャコ、イモガイといった有害な生物を持ち込まないのは、マルコロックをはじめとした、これら代替品ならではのメリットです。
▼マルコロックについて詳しくはこちら
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