ツノダシ リーフタンクにおける飼い方の基本

ツノダシはリーフタンクとも相性の良い海水魚です。

黒・白・黄色の鮮やかなストライプカラーと、すらりと伸びる背ビレが目を惹き、いかにも熱帯の海の魚らしい姿かたちをしています。
観賞魚としての流通量も多く、入手もしやすい人気種です。

見た目はチョウチョウウオに近いですが、食性はハギに近く、サンゴのポリプも齧りにくい種類としても知られています。

アクアリウムにおける飼育上の性質としては、チョウチョウウオの仲間とハギの仲間を足して2で割ったような感覚と表現するのが近いかもしれません。

水質に対する要求はチョウチョウウオ以上ハギ以下といったところで、チョウチョウウオよりは硝酸塩などに気を配った管理が求められます。白点病にかかりやすい点はハギ類に準じます。

とはいえ、そもそもリーフタンクでサンゴのコンディションを整えるために要求される水質管理水準は、ツノダシが飼育可能な水準よりも高いものが要求されています。

このためサンゴが調子よく飼育できている水槽であれば、必然的に病気も発生しにくくなり、より容易に飼育可能です。

基本情報

生物学的情報
名前ツノダシ
別名ムーリッシュ・アイドル
学名Zanclus cornutus
分布沖縄近海、太平洋~インド洋
食性雑食(草食寄り)
グループチョウチョウウオ/ハギ
※本種は一科一属一種という分類学上特異な種で、チョウチョウウオの仲間でもハギの仲間でもありません。
しかし、飼育上の性質がこれら2グループに似通る部分があるため、便宜上そう割り振られることが多いです。
飼育要件
飼育しやすさ★★★☆☆
標準
入手しやすさ★★★★★
よく見かける
餌付けしやすさ★★☆☆☆
やや難しい
混泳適正★★★☆☆
混泳可能
最大体長18cm程度
適正水温24℃前後

リーフタンクにおける飼育のポイント

端的に言えば、(チョウチョウウオ+ハギ)÷2。
飼育環境はチョウチョウウオ寄り、餌はハギ寄りです。

流通量は多く、入手もしやすい人気の魚種ですが飼育には若干クセがある部分があります。
チョウチョウウオ以上ハギ未満といった程度には、神経質な傾向が見られます。

しかしサンゴが健康的に育成できている環境であれば、本種は問題なく飼育できるでしょう。
ハギに準じて草食寄りの雑食性が基本となり、サンゴを齧らないものもいるため、基本的にはサンゴとの相性は良いとされています。
ただし、採取された海域や個体によりサンゴを齧るものもいるため、100%絶対に安全とは言い切れません。

自然下ではサンゴ礁や岩礁帯に数匹程度の群れで暮らしています。
まれに、数十匹単位での大規模な群れを作ることもあるようです。

本種は体高のある体型と伸長する背ビレが特徴であるため、できれば幅は60cm、高さは45cm以上の水槽での飼育が望ましいです。深さがない水槽では、せっかくの背ビレがうまく発達しない場合があります。

群れで飼育する場合は、最終的には120cmクラスの水槽を想定しておきたいところです。

複雑な食性

本種は広域分布かつ雑食性のため、採取された海域により食性が大きく異なる傾向があるようです。

本種はやや植物質の餌を好む雑食性、というのが通説です。
しかしながら、採集された海域によってはこの特性に当てはまらない個体も珍しくはありません。
このため入荷ロットによっては、サンゴを全く食べないものもいれば、積極的に齧ってしまうものもいるようです。

本種は流通量も多く人気も高い反面、餌付けの難易度がやや高いことでも知られています。
採取された海域により食性が大きく異なるので、”これを与えればうまく行く”というもがありません。
ホワイトシュリンプ、貝のむき身、海藻など色々な餌を試してみると良いでしょう。

最終的に人工飼料に餌付けることは可能ですが、餌付けるまでに一苦労することも多いです。

唯一無二の分類群

本種は分類学上ツノダシ科に属する唯一の魚種であり、本種のみでツノダシ科およびツノダシ属を構成しています。

1科1属1種という独自路線での進化を遂げた種で、分類学的には異例中の異例ともいえる極めて珍しい存在です。
なお、ツノダシ科に最も近いのはニザダイ科となるようです。

外観や要求する飼育環境はチョウチョウウオに、食性はハギに近しい要素を持ち合わせています。
チョウチョウウオの仲間でもハギの仲間でもなく、ツノダシはツノダシである。
・・・・のですが、どちらに近いかと強いて言うなれば、ハギに近いということになります。

このため、アクアリウムの世界においては便宜上、チョウチョウウオの仲間またはハギの仲間として割り振られることがあります。

なお分類上は珍しい立ち位置にあるものの、個体数は多いようで分布域では数多くみられます。
このためか入荷も比較的コンスタントに見られ、安定して入手しやすい部類に入ります。

他魚種との混泳について

本種自体は温和です。
攻撃的な魚とでなければ、基本的に混泳は可能です。

カクレクマノミ
デバスズメダイ
マンジュウイシモチ
ヤエヤマギンポ

攻撃的な魚種と混泳させると、本種の象徴ともいえる背ビレがボロボロにされてしまう恐れがあります。
できるだけ温和な魚種を選びましょう。

ツノダシ まとめ

ユニークな姿かたちと黄色と黒と白のコントラストがとても美しい熱帯魚、ツノダシ。
チョウチョウウオとハギの中間的ともいえる性質を持ち、分類的には1科1属1種と個性の強い魚です。
すらりと伸びた背ビレを発達させるには、高さ(深さ)45cm以上の水槽での飼育が望ましいです。

基本的な食性はハギに準じますが、広域分布種でありなおかつ雑食性であるため、同種でありながら採取された海域により食性が大きく異なる傾向があります。

サンゴのポリプに興味を示さない個体であれば、リーフタンクとの相性は良い魚です。
一方で、個体によっては積極的に齧ってしまうものもいるため、100%絶対にサンゴに対して安全とは言い切れません。リーフタンクに導入する場合は、この点に注意してください。

最終的には人工飼料に餌付くことが多いのですが、そこに至るまでの過程が難しく、餌付けがうまくいかず痩せてしまうことも多いです。
人気が高く、流通量も多く入手しやすい魚種ですが、その飼育は一筋縄ではいきません。
サンゴを調子よく維持できているリーフタンクであれば水質の問題はクリアしているはずですが、餌に関しては根気良く餌付けていきましょう。

リーフタンクに追加する場合、個体によってはリスクも起こりうる魚種です。
問題を起こさない個体であればそのまま楽しめますが、問題を起こしてしまう個体であった場合の対処法も考慮したうえで導入しましょう。

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