ディスクコーラル。和名ではイソギンチャクモドキと呼ばれるこのソフトコーラルは体のつくりがイソギンチャクに近いものの、まったく別のグループに含まれるサンゴです。
※イソギンチャクはイソギンチャク目、ディスクコーラルはホネナシサンゴ目。
日本国内での流通名はディスクコーラルですが、海外ではマッシュルームコーラルと呼ばれています。
(英名でDisc Coralはクサビライシの仲間を指します。)
ひとくちにディスクコーラルといってもDiscosoma属の複数種類がその名前で流通することから、その形状とカラーは多岐に渡ります。
カラーはグリーンを基調としたものが多く見られますが、赤やオレンジ、黄色、ブルーなど幅広い色彩を持ち、単色から派手なマルチカラーのものまでバリエーションは豊富です。
ツルっとした滑らかな質感を持つものやストライプが入るもの、スポット状の突起が目立つもの、イソギンチャクのような触手状の突起を持つものなど、さまざまな形状のものがいます。
ソフトコーラルの仲間ではマメスナギンチャクに並ぶディープなコレクション要素を持ったグループです。
目次
基本情報
生物学的情報 | |
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名前 | ディスクコーラル |
学名 | Discosoma sp. ※同属他種がディスクコーラルの名前で流通 |
分布 | 太平洋~インド洋 |
グループ | ソフトコーラル |
飼育要件 | |
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飼育しやすさ | ★★★★☆ 水質に対しては非常に丈夫 |
入手しやすさ | ★★★★★ よく見かける |
適正水温 | 24℃前後 |
照明 | 弱~中 60cm水槽で1500lm程度 |
水流 | 弱~中 澱みができない適度な水流 |
給餌 | 必要 ※光合成だけでは栄養が不足しやすい |
備考 |
リーフタンクにおける飼育のポイント
ディスクコーラルは水質に対する許容の幅が広く非常に飼いやすいソフトコーラルですが、元々の生息環境はプランクトンの豊富な海域であることが多いことから水槽内では光合成のみでは必要な栄養が不足しがちになります。
そこで、長期間状態良く飼育するためにはディスクコーラルの健康状態を日々よく観察しながら給餌を行う必要が出てくることがあります。
基本的な飼育方法は一般的なソフトコーラルの飼育に準じますが、環境によっては上手く育たない場合もあります。
ここではリーフタンクで状態良く育てるためのポイントや、ディスクコーラルの基本的な性質についても触れていきます。
ディスクコーラルは「自分で動く」ことがある
ディスクコーラルは体の構造がイソギンチャクに非常によく似ていますが、似ているのはそれだけではありません。
他の固着性のサンゴと違い、この仲間はイソギンチャク同様に足があることで自分で動くことができます。
イソギンチャクの仲間ほど活発に動き回ることはありませんが、自分が快適な場所を探して移動することがあります。動いてしまうときは光や水流、エサが足りていない、突っついてくる外敵がいるなどディスクコーラルにとってなんらかの「不快な要素」があるときに見られることが多いようです。
ディスクコーラルが頻繁に動いてしまうようであれば、何らかの環境要因が好適ではない可能性があるためディスクコーラルの挙動を観察しながら光や水流などの環境要素を見直していきましょう。
ディスクコーラルへの給餌
ディスクコーラルへの給餌は毎日行う必要はありません。
しかし、先述したように自分自身で動くことができることからエネルギー消費量も多いようで、光合成だけでは栄養が不足してしまうことがあります。
その顕著な例としては「ディスクコーラルの体が徐々に小さくなってしまう」という症状です。
体が小さくなってしまうのは必要なアミノ酸などの栄養が不足しているからであり、この症状が見られるようであれば給餌を行う必要があります。
このときディスクコーラルの体力も落ちていますので、まずはサンゴ用栄養剤で基礎体力を回復させることから始めてください。そうして栄養剤によるトリートメントを数日続けてから、増体させるために高カロリーなサンゴ用のリキッドフードを与えて成長を促進させていきます。
給餌を行うにはスポイトやシリンジなどを使ってディスクコーラルへ直接吹きかけるようにして与えます。
これはディスクコーラルが確実に栄養を摂れるための措置であるのと、同時に水を必要以上に汚さないための手法です。
また、一度に摂取できる量にも限りがあるため与える量は少なめで問題ありません。
むしろ過剰に給餌してしまい残餌を大量に出してしまうと、水質の急激な悪化を招いてしいますので注意しましょう。
栄養状態が良くなると体が大きく育つだけでなく、分裂して自分のクローンを次々と作りだすようになります。
さらに蛍光色をさらに色揚げしたり、長期飼育により蛍光色の変異も起こることがあります。
マメスナギンチャクと同様に美しいセレクトカラーの個体を増殖させるだけでなく、新しいカラーパターンの品種を生み出せる楽しみがディスクコーラル飼育の醍醐味と言えます。
他のサンゴに触れない場所に置く
ディスクコーラルはイソギンチャクに似た形状から、一般的に刺胞毒が強いと言われています。
しかし実際には刺胞毒で他のサンゴにダメージを与えるというより、接触した部分が余計な刺激を与えたりして相手のポリプを開きにくくさせてしまい、結果として衰退させてしまうというケースが多いようです。
ディスクコーラル自身は体力があるときは他のサンゴに比べてタフな面があり、相手がスイーパー触手を持つ刺胞毒が強いサンゴ(ハナサンゴ、アザミサンゴなど)でない限り競り負けてしまうことはなかなかありません。
さらにディスクコーラル自身は動くこともできるため、他のサンゴから離すのが安心です。
多種のサンゴを収容したリーフタンクに入れるときには、周囲に相性の悪いサンゴがいないか注意して直接接触しない場所に配置するようにしましょう。
ディスクコーラル同士では接触しても問題ない場合が多いことから、密植させることが可能です。
これは他のサンゴも同様で「同種、もしくは属レベルで近縁な種類」なら接触しても問題ないことが多く、「まったくの別種は互いに攻撃、もしくは競合してしまう」ことを念頭に置いた配置を心掛けるようにしましょう。
ディスクコーラル まとめ

ディスクコーラルは飼育もしやすく美しいカラーバリエーションが多い魅力的なソフトコーラルです。
とはいえ、丈夫なソフトコーラルと甘く見て管理を怠ってしまうと育成に失敗してしまうこともあります。
ですが飼育の基本さえ押さえてしまえば難しいことはなにもありません。
意外と見過ごされがちなのが「給餌」というポイント。
もちろん、給餌を行いながらも水質を適切に保つことも大切です。
丈夫な性質にあぐらをかいて管理を怠れば、ディスクコーラルはその美しい姿を見せてはくれません。
しっかりと手間をかけた分だけディスクコーラルは、その姿で応えてくれることでしょう。
ディスクコーラルにはマメスナギンチャクと同様に美しいカラーパターンを育て、生み出す奥深い楽しみもあります。あなたも魅力的なディスクコーラルの世界に触れてみませんか?
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