ハゼから始めるサンゴ水槽 vol.5 ハゼ水槽を組み立てよう

前回の記事では、サンゴ飼育のベースとして有効な、基本的な海水魚(特にハゼ)飼育に必要な機材を紹介しました。
今回は30cmキューブ水槽を舞台に、サンゴ水槽への前駆けとなる、ハゼたちの住まいを組み上げていきましょう。

使用する機材一覧

  • 水槽:アクロ 30キューブ
  • フィルター:GEX メガパワー2045
  • クーラー:ZENSUI TEGARU2
  • サンゴ砂:コーラルボーンシリーズ
  • レイアウトロック:マルコロック
  • 人工海水:レッドシーソルト
  • 比重計:アナログ式比重計

飼育魚は、ハゼの仲間の海水魚として最も飼育・入手ともにクセが少ないことから、ハタタテハゼ1~3匹程度を想定します。

▼参考:ハタタテハゼについて

ハタタテハゼ

水槽の設置

水槽は専用の水槽台に設置するのが望ましいです。
水槽台は耐荷重性が高く、機材の配線やメンテナンススペースも確保しやすいため、安全かつ快適な飼育環境を整えることができます。

なお、条件を満たしている場所であれば、必ずしも水槽台でなくてもOKです。

水槽台を利用するのが
ベスト。
水槽にはめるタイプの枠もあります。

設置場所は以下の4点に注意して選定しましょう。

  • 直射日光が当たらない場所(コケの発生や水温上昇を防ぐため)
  • 床が水平で、振動が少ない場所(水槽の安定性を保つため)
  • エアコンの風が直接当たらない場所(水温の急変を防ぐため)
  • 壁や家具、特に電化製品から距離を取る(塩分による腐食やカビの防止のため)

意外と条件はシビアになるので、この点では素直に水槽台を利用するのが確実といえるかもしれません。

NGとなる設置場所の例

  • 薄い板の棚やカラーボックス
  • 床が傾いている場所
  • 振動が多い場所(洗濯機の近くなど)

耐荷重に注意

最終的な水槽の重さは想像以上に重くなります。
例えばアクロ30のような30cmキューブ水槽に水を満たし、底砂やレイアウトロック、機材類を配置すると、総重量は40~50kg以上にも達することがあります。

水槽の設置場所は、この重量に耐えられることを見越した場所に設置する必要があります。

塩分への注意

海水を使用する水槽では、水しぶきや蒸発によって塩分が周囲に付着することがあります。
これは「塩ダレ」と一般に呼ばれています。

塩ダレの影響としては、次のものが挙げられます。

  • 家具や壁の腐食:木材や金属が劣化する可能性があります。
  • 電気機器への悪影響:コンセントや電源タップに塩分が付着すると、漏電や火災のリスクも。
  • カビや湿気の原因:湿度が高くなることで、壁紙や床材にカビが発生することも。

このことを踏まえ、以下の4点に配慮して管理しましょう。

  • 壁から10cm以上離す:塩ダレの付着を防ぎ、メンテナンススペースも確保できます。
  • 防水マットを敷く:床の保護に有効です。
  • 周囲に電化製品を置かない:塩分付着により、漏電や火災のリスクがあります。
  • 定期的な拭き掃除:塩だれは放置せず、こまめに拭き取る習慣を。

また塩分による腐食のリスクがあるため、水槽台であってもスチール製のものは不適です。
同様の理由で、メタルラックも不向きです。

スチール製の水槽台は淡水専用と捉え、海水水槽用としては木製のほうがおすすめです。

底砂を敷く

サンゴ砂やアラゴナイトサンドと書かれているものであれば、どのような底砂を使っても構いません。

今回は、「コーラルボーン」シリーズのサンゴ砂を使用します。
「コーラルボーン」シリーズのサンゴ砂は複数のサイズがあり、お好みの粒サイズを選べるのがメリットです。

今回は、#10サイズを使用します。

ドライサンドは洗浄が必要

水槽に底床を入れる際、乾いたタイプの底床の場合、いきなり水槽には入れないようにしましょう。
まず流水ですすぎ洗いをして、濃い濁りや浮遊する微細なゴミを取り除いてから、水槽に敷き詰めます。

ライブサンドの有効性

早く立ち上げたいときは
ライブサンドがおすすめ

マリンアクアリウム用に販売されている砂の中には、「ライブサンド」と呼ばれる最初からバクテリア付着済みのタイプもあります。

ドライサンド(=乾いた底砂)に比べると割高になりますが、バクテリアが最初から定着済みのため、こちらを利用するとより短期間で生体の導入が可能になります。しかも、ライブサンドは洗浄の手間がありません。

早く生体を導入したい方は、ライブサンドの利用も検討してみてください。

レイアウトロックの配置

マルコロックを使って、ハゼの隠れ家となる岩組みを作ります。
安定性を重視し、倒れないように配置してください。

奥行きや高さに変化をつけることで、自然な景観とハゼの遊泳スペースが生まれます。

形状はお好みのものを選んでOKです。
ハタタテハゼにはどの形状のマルコロックを選んでも問題ありません。

慣れてきたら形状にこだわろう

マルコロックはそのまま置くだけでもある程度様になるレイアウトを作ることができます。
ですが、本来は加工することでその真価が発揮されます。

加工して自在な形状にできる点が
マルコロック最大の特徴
一点物はサンゴとの相性を考慮して加工済み。
置くだけでレイアウトが即完成

とはいえ、マリンアクアリウムは全くはじめて、という方がいきなり加工に手を出すのは、少し挑戦的かもしれません。
それでもレイアウトにこだわりたい方は、サンゴと相性抜群の形状に予め加工済みの、「一点物」シリーズからお選びいただくのがおすすめです。
加工の手間もなく、置くだけで様になるレイアウトが即・完成します。

ある程度飼育に慣れて、レイアウトの見せ方のコツが掴めてきたら、マルコロックの加工にもチャレンジしてみるとよいでしょう。

ライブロックとの相違点

マリンアクアリウムの立ち上げには一般的に、「ライブロック」というレイアウトロックが使われることも多いです。
一つ大きな違いとして、マルコロックにはバクテリアが付着していないため、ライブロックのようなろ過能力は初期段階では期待できません。

しかしながら、水槽が立ち上がってバクテリアが定着してくると、ライブロックと比較して遜色ないろ過能力が得られます。

▼マルコロックとは

海水水槽の立ち上げでは「ライブロック」という素材も一般的です。
今回はマルコロックで進めていきますが、ライブロックについて知りたい方は以下の記事を参考にしてください。

▼ライブロックとは

フィルターとクーラーの設置

GEX メガパワー2045
小型水槽用外部式フィルターとしては
定番機種
TEGARU2
内径8mmまたは12mmのホースと
直結可能な加温機能付きクーラー

ろ過装置としてGEX メガパワー2045を接続し、ろ過循環の準備を整えます。

ZENSUI TEGARU2はフィルターを通った水が通るようにホースを接続し、水温管理を行います。
設定温度は25℃前後が目安です。

クーラーは一般的に冷却機能のみとなるため、水温が下がりすぎた際の加温用としてヒーターも必要です。
しかし、TEGARU2に関しては加温機能が内蔵されているため、別途ヒーター接続の必要がありません。

なお海水魚、特にハゼ類は海水魚の中では、水温や水質の変化には比較的強い部類に入るものが多いです。
水温変化は極力ないほうが望ましくはありますが、多少の水温変化があっても耐えてくれることが多いです。

一方で、サンゴの飼育においては、水温の変化は生体に致命的なダメージを与えうることを覚えておきましょう。

水温管理にはこの段階で慣れておくことが重要です。

他のろ過・冷却方式でも可能

ここでは外部式フィルターにクーラーを直結する、小型水槽では最も一般的な組み合わせ例を挙げました。
これはあくまで一例となりますので、例えば外掛け式フィルターや、近年登場した外掛け式クーラーなども有効な製品です。

海道河童
海水魚飼育の小型外掛け式フィルターとしては定番
ゼンスイ KAKErU
動力いらずで引っ掛けるだけで小型水槽に対応可

将来的に、より本格的なサンゴ水槽へと改装するステップアップまで見込んだ場合、外部式フィルターとクーラーの接続や取り扱いに慣れておくと、より拡張性が高くなることを頭の片隅に入れておきましょう。
いつか役立つタイミングがあるはずです。

※なお外部式フィルターの中では、エーハイム製品はクーラーとの直結運用をメーカーが非推奨としている点にご注意ください。

外部式の定番、エーハイム。
クーラーとの直結運用は
非推奨とされています。

人工海水の準備

ここまでで、機材の接続はほとんど完了です。
次は水槽内に入れていく海水を準備します。

海水の作製には人工海水を使用

海の生き物を飼育するために海水は欠かせません。
そして、食塩で海水を作ることはできません。

海水には塩(しお、塩化ナトリウム)以外にも、様々な微量元素が含まれているからです。

人工海水は、塩だけでなくそのような微量元素も配合されており、水に溶かすことで海水に近い組成の飼育水を、水道水に溶かすだけで簡単に作ることができる製品です。
水道水には塩素(カルキ)が含まれているため、カルキ抜きで中和しておきましょう。

水道水の塩素は
カルキ抜きで中和

人工海水を溶かす量は、水1Lあたり約35g程度が目安です。
実際に必要な量は、比重計で測りながら溶かす量を決めていきます。

比重は水温によっても変化します。
比重計のメモリが1.020~1.024の範囲を示すよう、溶かす量を調節していきましょう。

比重計測は必須。
比重計はマストアイテムです

※人工海水を水に溶かす場合は、溶け残りがないか確認しましょう。
溶け残りがあると、想定より高い比重になってしまう可能性があります。

適切な比重を示したら、水槽内にゆっくりと海水を注ぎます。
勢いよく注いでしまうと、レイアウトが崩れたり、底床のゴミが舞い上がって濁ってしまいます。

▼参考:人工海水の選び方

▼参考:比重計の基本

機材の稼働

注水が完了したら照明をセットし、フィルター・クーラーといった機材類をすべて稼働させます。
水温と比重が安定するまで、2~3日程度の立ち上げ期間を設けましょう。

なお、照明は長時間点灯したままにしておくと、観賞を妨げる藻類(コケ)が発生する原因になります。
サンゴがまだおらず、魚のみの水槽では、観賞時のみ点灯でも構いません。

ハゼを迎える

水質が安定したら、ハタタテハゼを導入します。

導入時は水合わせを行い、ストレスを最小限に抑えて水槽に迎え入れましょう。

▼水合わせのやり方はこちらを参考

バクテリアの定着

これでひとまず、ハゼの導入まで完了し一段落です。
海水水槽を立ち上げ、ハゼを飼う ところまでは辿り着けました。

この段階では、まだ他の生体は追加しないほうが良いです。
その理由としては、水質が不安定になるためです。

水質を安定させるためには、「ろ過バクテリア」と呼ばれる細菌類の定着が不可欠です。
しかし、立ち上げたばかりの水槽にはろ過バクテリアがまだ十分な数定着できていません。

ろ過バクテリアがまだ定着できていない水槽に過剰な数の生体を追加すると、過剰な栄養塩の供給により、水槽内の栄養バランスが崩壊、水質が悪化し、生体の斃死を引き起こす可能性があります。

一方で、バクテリアの定着には少量の栄養塩の供給が必要です。
数匹のハタタテハゼは、適度な栄養塩をバクテリアに供給することにより、その定着を促進します。
また、ハタタテハゼ自体も多少の水質の変化には強く、バクテリアが定着するまでの水質が不安定な期間を乗り切れる可能性が高い魚種となります。

以上を踏まえると、最初のうちは丈夫な魚種をごく少数だけ飼育する ことがポイントといえます。

▼バクテリアの定着については以下を参考

バクテリアの定着には通常、1~2ヶ月ほど待つ必要があります。
底床にライブサンドを用いたり、バクテリア剤を別途添加すると、定着までのタイミングを早めることもできます。

底床選びでも述べたライブサンド。
バクテリアの定着を早めたい場合には有効です。
初めて魚を飼う時こそ、バクテリア剤を利用すると
水質が安定しやすくなります。

もし、より早くサンゴを迎え入れたい!という方は、これらの使用も検討すると良いでしょう。


今回は海水水槽を立ち上げ、ハゼを迎え入れる一通りの手順までを紹介しました。

海水魚水槽としてはこれで完成であり、そしていよいよ本格的なマリンアクアリウムを楽しむスタート地点に立ったも言えます。

次回は基本的な飼育管理の方法について。
つまるところ、魚のお世話のしかた について解説します。

給餌や水換えといった基本的な飼育管理方法から、サンゴの飼育にも繋がる水質測定についても、この段階で身に着けておくと良いでしょう。

サンゴを水槽に迎え入れるまで、あともう少しです。

Dab.O.Haze

Dab.O.Haze(ダブ・オー・ヘイズ) 「霞のように謎に包まれた海の世界に、ちょっと触れてみよう」── 海水水槽の第一歩を丁寧にご案内。ハゼ系が得意。

関連記事

コメント

この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


TOP