万能な活餌 イサザアミ

海水魚を飼育する上で、「餌付け」は避けて通れません。

海水魚は淡水魚に比べ、餌の選り好みも激しい傾向があり、個体差も大きいです。
人工飼料を導入初日から食べてくれる個体は、それだけでもはやラッキーといえるでしょう。

そんな時に、多くの魚種に対して幅広く食欲をそそる存在があります。
それが「イサザアミ」。またの名を、「ホワイトシュリンプ」。

イサザアミは海水魚の餌付けにおいて、最も基本といえる活餌です。
ここでは”海水魚飼育における活き餌として”のイサザアミについて紹介します。

イサザアミ

イサザアミとは

海水魚の餌付けにおいて基本中の基本ともいえる、オキアミに近縁な甲殻類の一種です。
「ホワイトシュリンプ」の別名でも広く知られ、多くの海水魚の食欲をそそることで有名です。

生物学的な情報は下記の通り。
ちなみに「アミ」類は見た目はエビに似ているものの、エビとはやや遠い親戚にあたります。

実は日本近海に分布するイサザアミには5種類いるとされ、複数種が混在した状態での流通も見られるようです。
なお海水魚の餌としては、種類間での違いは特にありません。

生物学的情報
名前イサザアミ
別名ホワイトシュリンプ
学名Neomysis sp.
※複数種が流通しているようです。
分布日本周辺
食性植物プランクトン

イサザアミは1cm前後と非常にサイズが小さく、口の小さな魚でも食べられます。

人工飼料や冷凍飼料を食べてくれない魚でも、活きたイサザアミであれば食べてくれるということは多いでしょう。

イサザアミが有効な海水魚

クマノミ、スズメダイ、ヤッコ、チョウチョウウオ、ハゼ、ギンポ、ベラ、ハナダイ(ハナゴイ)、ニセスズメ、テンジクダイ、ジョーフィッシュ、フグ、カワハギ、ゴンべ、チンアナゴ、スクーターブレニー(マンダリン)、タツノオトシゴ、ヨウジウオ など

海水魚の餌付けにおいては基本中の基本ということもあり、観賞用に流通するほとんどの海水魚に適します。
小型の甲殻類を食べる種類であれば、ほとんどの海水魚が食べられます。

特にヤッコ、チョウチョウウオ、フグ、カワハギ、チンアナゴ、スクーターブレニー(マンダリン)、タツノオトシゴ、ヨウジウオに関しては、人工飼料に慣れにくいことも多いです。

餌付けのトラブルの際、このイサザアミが頼りになる場面は多いでしょう。

フレームエンゼル
ハシナガチョウチョウウオ
シマキンチャクフグ
フチドリカワハギ
チンアナゴ
マンダリン
クロウミウマ
オイランヨウジ

人工飼料を食べない、冷凍飼料も食べてくれない。
そんな個体でも、このイサザアミであれば食べてくれることも少なくありません。

リーフタンクによく導入される魚種としては、クマノミやハゼ、テンジクダイやハナダイなどが挙げられるでしょう。
これらは比較的人工飼料に餌付きやすいとされています。

人工飼料を食べてくれる個体であればイサザアミの出番はありませんが、必ずしもすべての個体が人工飼料にすぐに餌付くとは限りません。
人工飼料を食べてくれない個体に対しては、やはりこのイサザアミが有効になります。

イサザアミを食べるとされる魚種であるにもかかわらず活イサザアミを食べない場合、病気などで状態が落ちている可能性を疑ったほうが良いかもしれません。

イサザアミが適さない海水魚

観賞用に流通するほとんどの海水魚はイサザアミを好物として食べます。
しかし、以下の魚種は反応が悪い傾向があります。

これらの魚種に関しては別の餌を試したほうが、良い結果が得られることが多いでしょう。

ハギの仲間

ナンヨウハギ

ナンヨウハギをはじめとしたハギの仲間は藻食性が強いため、イサザアミをあまり好みません。
動物質の活餌よりも、植物質の餌を好む傾向があります。

特に海藻を好む傾向が強いため、食欲がない場合はウミブドウやワカメ、アオサ(ヒトエグサ)などを試すと良いでしょう。

カサゴ・カエルアンコウの仲間

カエルアンコウ

カサゴやカエルアンコウの仲間は完全な肉食性です。
イサザアミを食べないこともありませんが、イサザアミは大きくても1cm程度とサイズが非常に小さいため、これらの魚種が要求するサイズに合いません。

このグループの魚種は口が大きいので、よりサイズの大きい餌を要求します。
魚のサイズにもよりますが、目安として体長3cm以上のエビや小魚が適しています。

イサザアミのストック

イサザアミの管理方法自体は単純です。
イサザアミを入れる水槽を用意し、エアレーションするだけです。
イサザアミ1g(約50匹)あたり、ストック水槽の水量は20L程度あるとよいでしょう。

一般的なイサザアミは汽水で管理します。
ただし、「海産種」として販売されているものは、海水での管理が適します。
汽水産であれば比重1.008前後、海産であれば比重1.023前後でストックすると良いでしょう。

イサザアミをエサ用にストックする場合は、一般的な海水魚に比べ低水温での管理を理想とします。
代謝を下げたほうが長期間のストックがしやすくなるため、10~20℃の範囲での管理が望ましいです。
方法自体はとても単純ですが、水温管理の難易度はやや高めです。

なお1週間以内で使い切る前提であれば、水温25℃前後でもストック可能です。
この場合でもできるだけクーラーは利用したほうが、ストックに成功しやすくなります。

短期間のストックの場合、餌は不要です。
餌を与えてしまうと水質が悪化し、ストックに失敗する原因となります。

1週間以上ストックする場合は、クーラーや餌は必須になります。
長期間ストックする場合は水温は20℃以下に抑え、餌はクロレラやスピルリナなどの植物性プランクトンを主成分とした粉末飼料を与えます。
この方法で、最長3週間程度までストックが可能です。

夏季は20℃以下での水温管理が困難になるため、ストックの難易度が上がります。
一般家庭でストック環境を維持することは難しいので、数日で使い切れる量をこまめに購入するのがおすすめです。

便利な冷凍餌・生餌

冷凍イサザアミ
生イサザアミ

イサザアミを冷凍、または冷蔵での長期保存を可能とした製品もあります。

メリットとデメリット

活イサザアミは1回で使い切らない場合、ストックが必要です。
しかし冷凍や生タイプであれば、ストックの手間をかけずに使えるのがメリットです。

このような加工品は「イサザアミ」の名前よりも、「ホワイトシュリンプ」の名で流通することが多いようです。

デメリットとしては活きていないので、その分嗜好性は活き餌にはかないません。
それでも、人工飼料に比べればはるかに嗜好性が高いです。
多くの場合、こちらでも十分に海水魚の食欲をそそってくれます。

人工飼料を与えて食べてくれない場合はこれらの生餌や冷凍飼料を試し、それでもダメなら活のイサザアミを与えてみると良いでしょう。

既に長期間食べない状態が続いている場合は、確実性という観点で活イサザアミのほうがおすすめです。

サンゴにも与えられる

魚に与える場合は活きていないことはデメリットになりますが、サンゴに与える場合はメリットになります。
オオバナサンゴやクサビライシなど、給餌の重要性が高い種類では口元に置いておくことでイサザアミを食べます。

嗜好性の高さゆえに、魚がいるとサンゴの口元においたイサザアミが横取りされてしまう場合があります。
このような場合はサンゴが食べきるまで、一時的に魚を隔離すると良いでしょう。

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