日本近海にも生息するマメスナギンチャクシリーズ第4弾。
今回はフジマメスナギンチャクについて解説していきます。
基本情報
流通名 | フジマメスナギンチャク |
学名 | Zoanthus aff. vietnamensis |
分布 | 太平洋~インド洋 |
グループ | ソフトコーラル |
飼育しやすさ | ★★★★☆ 基本を押さえれば容易 |
入手しやすさ | ★★★★★ よく見かける |
備考 | マメスナギンチャクに比べるとカラーバリエーションはピンク~パープル系に絞られ、やや細長くポリプを伸ばす傾向があります。 |
見た目の形状はマメスナギンチャクに非常によく似ていますが、本種はカラーリングがピンクおよびパープル系統に絞られるのが特徴です。フジマメスナギンチャクという和名は藤色に近い色を示すことから付けられたようです。
形状的な特徴では、一般的なマメスナギンチャク(キクマメスナギンチャク)に比べるとポリプがやや長く伸びて根元が細くなる傾向があります。
学名表記ではZoanthus aff. vietnamensisとなり、Z. vietnamensisに非常に近い形態をもっていながら遺伝子的にはクロシオマメスナギンチャクに非常に近いという興味深い特徴も持っています。
飼育上の基本的な性質は、一般的なマメスナギンチャクに準じます。
マメスナギンチャク同様、直径4~8mm程度のポリプをマット状の共肉で繋げた群体として生育します。
ただし、本種は比較的小さめの群体を細かく形成していく傾向があるようです。
育成に関しては、マメスナギンチャクとほとんど変わらないといえるでしょう。
飼育要件
自生地の環境 / Habitat Sea Area |
・光合成のみでは栄養が不足しやすい面があります。
・給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。
適正水温 / Water Temperature |
・一般的なサンゴが好む水温を維持します。
光色のセッティング / Lighting Spectrum |
PARの目安 | 100~200 |
・サンゴの蛍光色素に対応した光色のものを使用しましょう。
・光量は中程度。蛍光色がきれいに出る程度で問題ありません。
・色揚げを強化するならシアン~グリーンの光を増やしましょう。
水流 / Water Flow |
・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・ゾアポックス予防のため、澱みのないランダム水流でポリプの間にゴミが溜まらないようにしましょう。
エサの種類とサイズ / Feeding Menu |
・エサは与えなくても大丈夫ですが、与えればその分成長が良くなります。
・与える場合の頻度は2~3日に一度程度を目安に。給餌量は残り餌が出ない程度の少量に留めます。
・ゾアポックス予防のために残り餌が出ないような給餌を心掛けましょう。
リーフタンクにおける飼育のポイント
一般的な向日性ソフトコーラルの飼育環境が構築できていれば、育成に難しい点はありません。
基本的な性質はマメスナギンチャクに準じ、光・水流・水質の管理は最低限レベルで育成可能ですが、十分な光量とポリプがなびく程度の水流、リン酸値を低めに管理すると、発色がさらに鮮やかになります。
他のサンゴと一緒に配置する場合は、注意点があります。
本種もマメスナギンチャク同様、ほかの種類のサンゴに対する刺胞毒がやや強く、隣接したサンゴを攻撃して弱らせてしまうことがあります。
このため、レイアウトの際はほかのサンゴとは離して配置することが求められます。
隣接していなければ攻撃しないので、離して配置すればほかのサンゴとの共存は問題ありません。
ピンク~パープル系のカラーバリエーション
マメスナギンチャクといえば多種多様なカラーバリエーションが特徴ですが、フジマメスナギンチャクに関してはマウス周辺がピンク~パープル系になるものが多く見られます。
品種によってはマウス周辺に強めのレッドが、触手が蛍光グリーンになるものもおり、優しい色合いから派手なものまでさまざまなバリエーションが見られます。
膨大なカラーバリエーションを持つキクマメスナギンチャクには敵いませんが、暖色系の色がお好みであればフジマメスナギンチャクから探すときっと良質な個体が見つかるでしょう。
フジマメスナギンチャクのトリートメント
マメスナギンチャク同様に、基本的には丈夫なソフトコーラルです。
ただし、痩せて体力が落ちたものはサンゴ用栄養剤でのトリートメントが必要です。
購入時に細くてポリプをなかなか開かないようであれば、まずは水槽内の環境から見直して水流や光など環境条件に不足がなければ栄養が不足して体力が落ちている可能性が高くなります。
そういったときにはサンゴ用の栄養剤を使用してトリートメントをしましょう。
サンゴ用の栄養剤は必ず規定量に沿った使い方をしてください。
過剰に添加してしまうと水質の悪化や腐敗菌の増殖などを招いてしまうことがあるため、注意しましょう。
サンゴの体力を回復させるためといっても栄養剤を過剰に添加してしまうと、マメスナギンチャクが吸収しきれない分の栄養がビブリオ菌など病気を引き起こす細菌の栄養源になってしまうことがあります。
ビブリオ菌をはじめ、サンゴの病気を引き起こしてしまう細菌類が増えすぎてしまうとゾアポックスと呼ばれる白い斑点状の腫れ物のようなものが表れてしまいます。
この病気はビブリオ菌や微胞子虫といったサンゴの体内に侵入する病原菌や寄生虫に対して、マメスナギンチャクが抵抗するための免疫反応と言われています。
「フジマメスナギンチャクの体力が落ちている」+「病原菌などが増えやすい環境」が合わさることでゾアポックスが発生してしまう要因となります。
フジマメスナギンチャクのトリートメントを行うにあたっては、水換えを行い清潔な環境を整えてから栄養剤を与えるようにしましょう。
フジマメスナギンチャク まとめ
フジマメスナギンチャクは、ピンク~パープル系統の発色に特化した暖色系のカラーが特徴的なマメスナギンチャクといえます。ポリプとポリプ中央部のカラーリングが個体によって異なりますが、メインカラーはピンクかパープルに近い色であることが多く見られます。
形態はキクマメスナギンチャクに非常によく似ていますが、本種は比較的群体が大きく形成されること、ポリプのひとつひとつがやや長く、付け根が細いという点が異なります。
キクマメスナギンチャクは実に多種多様な色彩を見せますが、本種はピンク~パープル系統色に発色がある程度絞られるためこの点もヒントになるでしょう。
※キクメマメスナギンチャクがピンク~パープル系の発色を示すことはあります。
フジマメスナギンチャクがピンク~パープル系以外の発色を示すことは稀です。
また、カラーバリエーションだけでなく遺伝子的にも謎が多く興味深い種でもあります。
研究が進めばaff. vietnamensisから別の種として記載される可能性もあるといえます。
生物的にも奥深いロマンを持つフジマメスナギンチャクを是非コレクションに加えてみてください。
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