ハナガササンゴグループ/Goniopora Group

ふさふさしたポリプが優雅な好日性ハードコーラルの一種です。
分類としてはLPSに含まれるサンゴで、カラーバリエーションもさまざまで種類によってはポリプが長く伸びるものや短いものも存在しています。

その人気とは裏腹に従来の光合成のみに頼る飼育方法では長期飼育が難しいサンゴの代表となっていましたが、近年では生息地の環境や自然下での生態が知られるようになり適切な飼育方法が確立されました。

今回は、華やかな姿が特徴なハナガササンゴグループの基本と飼育方法について触れていきます。

基本情報

よく見かけるタイプのハナガササンゴ(Goniopora lobata
流通名ハナガササンゴ
学名Goniopora sp.(複数種類を含む)
分布太平洋~インド洋の熱帯海域
グループハードコーラル(LPS)
飼育しやすさ★★★★☆
飼育に必要なポイントは押さえる必要がある
入手しやすさ★★★★★
よく見かける
備考光合成のみでは栄養が不足しやすいので給餌が有効。
寄生性のヒラムシが付きやすいので定期的な観察が必要。

群体性のLPS代表ともいえるハードコーラルで、そのふさふさした優雅な姿で人気のサンゴです。

主に太平洋~インド洋の熱帯から温帯の海域まで広くに分布し、日本近海でも複数の種類が確認されています。現在、記載されている種類は29種にもおよび、日本近海ではなんと13種類ものハナガササンゴが確認されています。

日本のアクアリウムルートで流通するハナガササンゴにはロングポリプとショートポリプという、ポリプの長さで種類が分けられています。ロングポリプではlobata種がよく見られますが、ロングポリプとショートポリプどちらも複数の種類で見られるため、詳細な同定はポリプの形状と骨格の造りを見なければいけないため困難です。

ロングポリプタイプ
ショートポリプタイプ

水槽内での飼育においてはロングポリプタイプは強すぎず左右に揺れる程度の水流を好み、ショートポリプタイプはそれよりやや強めの水流を好みます。どちらかといえばロングポリプタイプのほうが飼いやすく、ショートポリプタイプはやや気難しい面を見せますが、水流の強さ以外はほぼ共通した飼い方で問題ありません。

また、まれにコモチハナガササンゴのように骨格と生態に特徴のある種類の流通も見られます。

横に広がる一般的なハナガササンゴ
球状の骨格を作るコモチハナガササンゴ
記載されているハナガササンゴ属一覧
本州近海(暖流)でも確認されている
ハナガササンゴ
G. cellulosa:ハチノスハナガササンゴ
G. djiboutiensis:キクメハナガササンゴ

G. lobata:ハナガササンゴ
 G. pendulus:ユレハナガササンゴ
G. stokesi:コモチハナガササンゴ
G. tenuidens:マルアナハナガササンゴ
沖縄周辺で確認されている
ハナガササンゴ
G. burgosi和名なし
G. columnaエダハナガササンゴ
G. norfolkensis:ノーフォークハナガササンゴ
G. paliformis:マルボシハナガササンゴ
G. pandoraensis:パンドラハナガササンゴ
G. pedunculataロッポウハナガササンゴ
minor
G.  somaliensi:ソマリアハナガササンゴ
日本では未確認なハナガササンゴ
インド洋~太平洋に分布
G. albiconus:和名なし
G. calicularis
:和名なし
G. ciliatus
:和名なし
G. diminuta
:和名なし
G. eclipsensis
:和名なし
G. fruticosa:和名なし
G. gracilis:和名なし
G. granulosa:和名なし
G. muscosa
:和名なし

G. palmensis:和名なし
G. pearsoni
:和名なし
G. petiolata
:和名なし
G. planulata
:和名なし
G.
polyformis:和名なし
G.
pulvinula:和名なし
G. savignyi:和名なし
G. sultani
:和名なし
G. tantillus
:和名なし
G. tenella
:和名なし
G. tenuidens
:和名なし

カラーバリエーション

カラーバリエーションも蛍光グリーンや蛍光レッドなどがありましたが、近年のフラグサンゴカルチャーの盛り上がりにより、さらに派手な色彩のものも流通するようになっています。


飼育要件

自生地の環境 / Habitat Sea Area
給餌は少なめ
給餌と栄養剤の使用が有効

光合成のみでは栄養が不足しやすい面があります。
給餌や栄養剤の使用で調子が上がりやすくなります。

適正水温 / Water Temperature
高めの水温
標準的な水温
低めの水温
深海性

一般的なサンゴが好む水温(24℃前後)を維持します。
28℃を超えるとブラウンジェリーを発症しやすくなります。

光色のセッティング / Lighting Spectrum
水深10m未満
水深10-30m
水深30-50m
水深50-80m
PARの目安80~150

・サンゴの蛍光色素に対応した光色のものを使用しましょう。
光量は中程度。蛍光色がきれいに出る程度で問題ありません。
・色揚げを強化するならシアン~グリーンの光を増やしましょう。

水流 / Water Flow
サンゴが左右に揺れる水流
澱みのないランダム水流
太くて強い水流

・コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
・強すぎる水流は好みませんが、ポリプが左右に揺れるような水流をつけましょう。

エサの種類とサイズ / Feeding Menu
液体
パウダーサイズ
顆粒サイズ
ペレットサイズ

光合成だけでは栄養が不足しがちになります。小まめな給餌を行うと体力も付き飼育しやすくなります。
・可能であれば1日に1回の給餌を与えたいですが、無理な場合は2~3日に一度程度でも問題ありません。
・痩せて体力がないようであれば、給餌ではなく先に栄養剤によるトリートメントを行いましょう。

リーフタンクにおける飼育のポイント

従来、ハナガササンゴは長期飼育が難しいと言われてきました。
しかし、近年になり正しい飼育方法が解明されてきたことでポイントを押さえればハードコーラル初心者でも飼うことのできるサンゴとして定着してきています。

ハナガササンゴの長期飼育が難しいと言われていた理由は、ミドリイシが美しい発色を見せてくれるほどの貧栄養環境で一見調子良さそうに飼育できていても、ハナガササンゴがある日突然死んでしまうということがしばしば見られたからです。

なぜ、ハードコーラルの飼育に適していると言われていた貧栄養環境でハナガササンゴの突然死が起こってしまったのか?

その理由はシンプルに「元々の生息環境が違う」ということにあったのです。

ミドリイシの生息環境
水の透明度が高い貧栄養な海域
ハナガササンゴ(LPS)の生息環境
プランクトン豊富で透明度が低い栄養豊富な海域

ミドリイシの仲間は主に河川の流れ込みが少ない貧栄養で清浄な水質のサンゴ礁に生息していますが、ハナガササンゴの仲間は河口域に近い栄養とプランクトンが豊富な海域に生息しています。

ハナガササンゴは褐虫藻の光合成だけでなく、豊富なプランクトンを捕食することで栄養を得ているのです。

この違いが知られないままミドリイシにとって好適な環境設定の水槽で飼育されていたために、「必要とする栄養が足りずに餓死してしまっていた」というのが突然死の原因だったことが判明してきたのです。

現在ではサンゴ用の栄養剤や人工フードが充実してきたことと、プロテインスキマーなど機材の性能向上により給餌を行うことによってミドリイシと同じ水槽でも育てられるノウハウが確立されています。

ハナガササンゴの給餌

サンゴ用栄養剤で基礎体力を補いましょう
体力を付けたらリキッドフードを主食に与えます

基本は水を汚しにくい栄養剤で体力を整え、成長と共肉の増体を目的としてリキッドフードを与えるようにします。
栄養剤やエサは残餌の発生を極力抑えるためにスポイトを使いピンポイントで吹きかけるようにして与えましょう。

栄養剤の投与や給餌はスポイトやシリンジで吹きかけるようにして行いましょう。
※画像はスコリミアでの給餌例

使用するリキッドフードは必須脂肪酸とアミノ酸が豊富に含まれるコペポーダを主原料としたものが適しています。

陰日性サンゴに比べれば餌の要求量は少ないので、1週間に3~4回ほどを目安に。
共肉がふっくらして充分に栄養が摂れているようであれば給餌回数を減らしても問題ありません。

円石藻配合のべっぴん珊瑚「リーフチャージ」

また、水質の維持と給餌を兼ねて生きた植物プランクトン(フィトプランクトン)の投入もおすすめです。
植物プランクトンは水槽内の動物プランクトンのエサとなってその数を増やす作用もあります。

さらに動物プランクトンが増えることによりサンゴのエサとなるだけではなく、微生物相のサイクルを整える効果も期待できます。

痩せているものにはいきなり給餌するよりも、液体の栄養剤でトリートメントを行います。
水槽に導入してしばらくは栄養剤を与えて基礎体力を整えるようにしてください。

必要な栄養が不足しやすいもうひとつの理由

アワサンゴのポリプに付いた寄生性ヒラムシの一種

ハナガササンゴが急激に体力を失い弱ってしまう理由に寄生虫の存在もあります。
LPSによく見られる寄生性のヒラムシがハナガササンゴには取りつきやすく、これにより弱ってしまうケースがよく見られます。
寄生性ヒラムシに取りつかれていると急激に体力を消耗してしまうので、発見次第「植物から抽出した成分が主体の駆除剤」を使用して駆除しましょう。

コーラルクリーナー リバイブ
コーラルプロテック

余談ですが、これらの駆除剤は柑橘類のリモネンや、針葉樹に含まれるフェノール類とテルペン類を主成分としていることからアロマオイルのような芳香を持っているのが特徴です。

ショップでトリートメントされているものでも、まれにポリプの奥にヒラムシが隠れていることがあります。
一見ヒラムシが見当たらなくても、念のため水槽導入前に駆除剤での洗浄を行うとヒラムシが侵入してしまう確率を下げることができます。

ヒラムシ駆除がハナガササンゴ飼育を成功させるポイントのひとつと言っても過言ではないため、念入りに予防措置をとるようにしましょう。


ハナガササンゴグループ まとめ

長期飼育が難しいと言われていたハナガササンゴですが、そのポイントを押さえれば実はそれほど難易度が高くありません。好む環境からハードコーラルの仲間でもソフトコーラルと一緒に飼うには適した種類でもあります。

中級者以上にとってはコレクション性が高く集めがいのあるサンゴでもあり、ビギナーにとっては初めてのハードコーラルとしておすすめできる種類でもあります。

この奥深いサンゴをぜひ楽しんでみてください。

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