前回までで、海水水槽における基本的な管理方法を身に着けました。
今回は、サンゴ水槽を維持するうえで避けて通れない「コケ」と呼ばれる藻類の対策法について解説します。
コケは水槽の鑑賞性を損なうだけでなく、水質悪化やサンゴの成長阻害にもつながります。
このため、早めの対策が重要です。
今回の記事では、
- コケの種類と発生原因
- 効果的な除去・予防方法
- ギンポやヤドカリなどの生体による対策
といった実践的な内容をお届けします。
これを読めば、コケ対策の基本がしっかり身につき、水槽の美しさを長く保つことができるでしょう。
目次
コケの種類と特徴
はじめての海水水槽で発生しやすいコケには、以下のような種類があります。
- 珪藻(茶ゴケ):立ち上げ初期に発生しやすい。栄養塩や水道水に含まれるケイ酸が原因。
- 緑藻(緑ゴケ):照明が強い環境で増えやすい。リン酸や硝酸塩の蓄積が要因。
- 藍藻(シアノバクテリア):赤紫色の膜状。水流不足による淀みや、栄養バランスの崩れで発生。
それぞれの特徴を理解し、原因に応じた対策を講じていきましょう。
※本記事では便宜上「コケ」と呼んでいますが、実際には多くが藻類であり、藍藻は細菌に近い性質を持っています。いずれも水槽管理上は「コケ」として扱われています。
コケの発生原因
コケは「光」「栄養塩」「水流」のバランスが崩れると増えます。
- 光が強すぎる/照射時間が長い
- リン酸・硝酸塩の蓄積
- 水流不足によるデトリタス滞留
この3つを意識して管理することが、コケ対策の基本です。
バクテリアのバランスが崩れている場合など、発生源は必ずしも3つのいずれかとは限りません。
しかし主なものは上記3つ、およびそれらが複合しているケースが大半といえるでしょう。
効果的な対策方法
それでは、具体的な対策方法を見ていきましょう。
コケが発生する水槽は、照明、水質、水流の3つの要素を見直すことで解決できることが多いです。
藍藻に関しては、さらに微生物層を見直すと解決に近づくでしょう。
照明の改善

照明の明るさと照射時間の調節は、主に緑色のコケ(緑藻)対策として有効です。
まず照射時間については、ハゼのみの場合は特にこれといった指定はありません。
鑑賞時だけの点灯でも構いませんが、昼夜のリズムを崩さないよう、6~8時間程度が理想的といえるでしょう。
1日の照射時間が8時間を超えると、コケが発生するリスクが高くなります。
水槽サイズと適切な明るさの目安は以下の通りです。
| 水槽サイズ | 目安となる明るさの単位(lm) |
|---|---|
| 30cm水槽 | 1,000〜1,500 lm程度 |
| 45cm水槽 | 1,500〜2,500 lm程度 |
| 60cm水槽 | 2,000〜4,000 lm程度 |
- lm(ルーメン)は人間の視覚に基づく明るさの単位で、青色LEDは低く表示されます。
- 青色LED主体の場合、lm値は低めに表示されますが、PARは確保されていることが多いので心配不要です。
- サンゴの光合成に必要な光量は、本来は明るさの単位(lm)ではなくPAR値(μmol/m²/s)で評価されます。
- しかしサンゴ育成専用ではない、汎用的な観賞魚水槽用照明に、この値が表示されていることはあまりありません。
したがって、はじめてのサンゴ飼育では、製品スペックのlmを目安に選んでも問題ありません。 - 「青+白の混合LED」なら、上記のlm目安でほぼ適正です。
- lmはあくまで目安です。過度に明るい照明の選択はコケ発生の原因になるため注意しましょう。
水質の改善
リン酸、硝酸塩の低減には、基本的に水換えが一番有効です。
なお、リン酸や硝酸塩は目に見えないので、具体的な測定には試薬が必須です。
- リン酸(PO₄)濃度:0.03 mg/L以下を目標とします。
→ リン酸吸着剤を使うと効果的です。
→ハゼはこの値が多少高くても、健康には影響がなく元気なことが多いです。 - 硝酸塩(NO₃)濃度:1〜10 mg/Lが理想です。
→ 10 mg/Lを超えるとコケが増えやすいので、水換えで調整しましょう。
→ハゼは硝酸塩の蓄積に比較的強いので、多少高くても問題ありません。しかしサンゴは高すぎると弱ります。 - 水換え頻度:
→週に1回、全水量の10〜15%を目安にしましょう。
この値が多少高くとも、ほとんどの場合ハゼは平気です。
しかし、サンゴはダメージを受けることがあります。
サンゴを導入する前に測定のやり方には慣れておき、感覚を掴んでおくのがおすすめです。
水流の改善

水槽内に淀みがあると、藍藻(シアノバクテリア)が発生しがちです。
この対策として、水流の見直しは有効です。
- 流量の目安:水槽全体の水量に対して 10〜20倍/時の循環を確保しましょう。
→ 例:60cm水槽(約60L)なら 600〜1200 L/hの水流が目安です。 - 淀み対策:ポンプの向きを定期的に変えて、底床やレイアウトロックの周辺に、淀みを作らないようにしましょう。
微生物層の改善
特に藍藻(シアノバクテリア)に関しては、富栄養・貧栄養どちらの水質にも適応できる性質を持っています。
藍藻を抑制するには、定期的な換水による水質の維持だけでなく、水槽内の微生物層を健全なバランスに保つことが重要です。
藍藻は分類上、コケよりも細菌に近い生物です。
したがってろ過細菌と競合関係にあります。
バチルス菌を含むバクテリア剤は藍藻に対し、より強い効果を見せる傾向が知られています。
物理的な吸出しと駆除剤を使った除去の後、バチルス菌を含むバクテリア剤を最後の仕上げとして添加しておくと、より対策として万全なものとなります。
一般的にコケは富栄養な水質で増えやすいイメージがありますが、海水水槽では貧栄養な水質で微生物相が貧困化すると現れやすくなるコケもいます。
その代表例が藍藻(シアノバクテリア)とダイノス(渦鞭毛藻)です。
これらのコケは貧栄養な水質でも生きられる特殊な生態をもっているため、水換えだけでは駆除しきれないことがよくあります。そのため、微生物の助けを借りて抑制する対策が重要になります。
健全な微生物バランスを保つには、適度に栄養がある水質を目指す必要があります。
富栄養すぎていたり、逆に貧栄養すぎるのも微生物のバランスを崩してしまうことに繋がることを覚えておきましょう。
生体によるコケ対策
自然にコケを減らす方法として「コケを食べる生体」を導入するのも有効です。
コケが見え始めたら、できるだけ早い段階での導入がおすすめです。
おすすめの生体
- ギンポ類(例:ヤエヤマギンポ):レイアウトロック上のコケをよく食べます。ガラス面も多少食べます。
- 貝類(マガキガイ、シッタカガイ):マガキガイは底床の表面、シッタカガイはガラス面のコケをよく食べます。
コケ対策には力不足
ヤドカリやクリーナーシュリンプ(スカンクシュリンプなど)は雑食性で、藻類も少量摂取することはあります。
しかしながら、基本的には肉食傾向が強い生き物です。
残餌の掃除役としては有効ですが、コケ対策として期待できるほど積極的に藻類を食べるわけではありません。
このように、彼らの強みは、コケの対策ではありません。
入れすぎに注意
サンゴの飼育を目的とする場合は、掃除役の生体であっても、入れすぎると硝酸塩、リン酸の増加を招きます。
サンゴとの相性や水槽サイズに応じて選ぶことが大切です。
最終的にサンゴ水槽を目指すので、最初は少なめが良いでしょう。
一般的なコケ対策の基本については、以下の記事にもコンパクトにまとまっています。
参考にしてみてください。
即効性なら物理駆除
既に生えてしまっているコケを素早く落とすには、物理的に直接はがすのが最も有効です。
ガラス面一面に生えてしまっているコケに対しては、スクレーパーで落とすのが最も容易で確実です。
スクレーパーは力を入れやすく、広範囲を短時間で掃除可能な点がメリットです。
一方で、磨き残した細かい部分の除去には、メラミンスポンジも有効です。
スクレーパーには金属ブレードとプラスチックブレードの2タイプがあります。
付け替えが可能な製品もあります。
金属ブレードはコケをまとめて削ぎ落せますが、水槽壁面を傷つけやすく、特にアクリル水槽には不向きです。
プラスチックブレードは金属ブレードに比べ削ぎ落しにくくはなるものの、水槽壁面を傷つけにくく、水槽の美観を保ちやすいです。
アクリル水槽に使う場合は、メラミンスポンジとプラスチックブレードを併用すると良いでしょう。
今回はコケ対策の基本を学びました。
目に見えてこすり落とせる箇所は物理的に除去し、細部を生体に除去してもらう という形で使い分けると良いでしょう。これで、コケ対策の基本はばっちりです!
次回は、いよいよサンゴの導入。
ハゼから始めるサンゴ水槽シリーズは、次でいよいよ最終回です。














コメント