サンゴ水槽の立ち上げには、初期費用がかかります。
適切な機材を揃えることで美しいサンゴの世界を楽しむことができますが、いったいどのくらい見積もっておけばよいのかは、はじめて飼育する場合なかなかイメージが掴みにくいところです。
サンゴ水槽の立ち上げにかかる費用感について、今回は30cmキューブ水槽でソフトコーラルを中心に飼育するケースを挙げて解説します。
30cmキューブ水槽で作り上げるサンゴ水槽は最もコンパクトで、かつ、比較的安価に実現できます。
30キューブで始めるサンゴ水槽は、費用面では比較的安価です。
しかし、その代わり水質管理の難易度が高い点には留意しておきましょう。
ミドリイシのような飼育難易度の高いSPSハードコーラルの飼育は困難かもしれません。
ソフトコーラルと、比較的飼育しやすいとされるLPSハードコーラルの飼育が可能です。
器具 | 予算 | |
---|---|---|
水槽本体 | 約2000~10000円 | |
水槽台 | 約7000~10000円 | |
照明 | 約6000~50000円 ※飼育したいサンゴの種類により大きく変動します。 | |
フィルター | 約3000~10000円 | |
プロテインスキマー | 約15000~30000円 | |
ヒーター(50W・温度可変式) | 約3000~5000円 | |
クーラー | 約20000~30000円 ※冬季は不要です。 | |
水流ポンプ | 約2500~5000円 | |
マルコロック | 約5000~7000円 | |
底床(サンゴ砂・アラゴナイト) | 約2000~3000円 ※ライブサンドを利用するとすぐに立ち上がります。 | |
水質測定キット | 約2500~3500円 | |
人工海水 | 約2000~4000円 | |
合計 | 70000~167500円 |
30cmキューブでのサンゴ水槽の立ち上げには、およそ7~16万円程度見積もっておくと良いでしょう。
なお7万円前後で揃えることができるのは最低限レベルの環境となり、飼育できるサンゴの種類も限られてきます。
10万円前後の予算があると、標準的なサンゴ水を立ち上げられるでしょう。
以下、選択肢に幅のある器具の解説をしていきます。
目次
照明
要求される照明のスペックは、飼育したいサンゴの種類によって大幅に変わります。
例えばマメスナギンチャクやスターポリプといった、弱い光でも十分育つ種類であれば、1万円以下の照明でもおおよそ問題ありません。
一方でチヂミトサカやウミアザミなど、強い光を要求する種類や、色揚げに重点を置きたい場合は調光機能が付いた照明が望ましいです。
この場合は、3~5万円程度の製品を見積もっておくと良いでしょう。
ただし、忘れていけないのは、重視すべきは値段よりも「明るさ」と「波長」です。
飼育したいサンゴの種類によって、適切な明るさと波長はまさに千差万別なので、照明選びにおいてこれといった正解はありません。
ただ、調光可能な製品は多くのサンゴの要求に応えることができるので、その点では理想的といえるでしょう。
安価な照明を選択して、後から乗り換えようとすると結局費用が嵩むことになります。
最初から高品質な照明を選択したほうが、最終的には費用が抑えられ、高い満足感が得られるでしょう。
フィルター
30cmキューブ水槽でサンゴを飼育する場合、外部式フィルターの選択が一般的です。
また、水槽サイズよりもフィルターの適合スペックが1~2ランクほど高いものが望ましいです。
例えば30cmキューブ水槽であれば、45cmまたは60cm水槽用の製品が適します。
したがって1万円前後となることが多いでしょう。
外掛け式フィルターの採用について
費用を抑えたい場合外掛け式フィルターでも飼育可能ですが、その場合飼育可能なサンゴの種類はマメスナギンチャクやスターポリプなど、丈夫なものに限定されます。
また、ろ過能力が高くないため、この場合はあまりたくさんのサンゴを収容することができません。
水質の測定、水換えの頻度もシビアになるため、管理上の手間は増えるかもしれません。
外部式フィルターに比べ半額以下で導入可能な点はメリットです。
どうしてもコストを抑えたい場合は選択肢になりえますが、基本的には外部式フィルターを採用するのが良いでしょう。
オーバーフロー式の採用について
サンゴの飼育にはろ過能力の高いオーバーフロー式もよく使われます。
しかしながら、30cmキューブ水槽のような小型水槽では、対応している製品がほとんどありません。
全くないわけではありませんので、どうしてもオーバーフローでやりたい!という強い意図がある場合に選択肢となるでしょう。
ハイタイプの水槽であれば、多少は水容量を稼げます。
またサンプの設置スペースが必要になり、小型水槽が持つコンパクトに設置できるというメリットが失われてしまううえ、もともとの水量が少ないのでオーバーフロー式を採用しても、コストがかかる割に全体水量は60cm水槽とさほど変わらず、劇的に水量が増えるわけでもありません。
メリットとして本水槽内にヒーターやプロテインスキマーなどを入れなくてもよい、という点は挙げられるので、コストをかけてでも美観重視の場合は、選択肢となるでしょう。
以上を踏まえると、オーバーフロー式まで検討するのであれば、60cm以上の水槽のほうがその特性を活かせるかもしれません。
クーラー
飼育したいサンゴの種類によりますが、揃えるべき器具の中でおそらく最も高額となるのがクーラーです。
多くのサンゴは水温が28℃以上になると致命的なダメージを受けるため、クーラーは必需品と言えます。
なお、エアコンが効いている室内であれば、エアコンでの水温管理もある程度可能です。
外気温が高すぎたり低すぎたりする場合は水温が安定しなくなるので、水温の変化にシビアな種類を飼育する場合は、エアコンのある部屋であってもクーラーは必要です。
このようにクーラーは水質管理に欠かせない器具ですが、実はタイミングによってコストカット可能な器具でもあります。ずばり、冬季に始める場合は不要です。
春の訪れとともに必須になりますが、11~2月頃にはじめて立ち上げる分にはなくても構いません。
この期間に水槽を立ち上げる場合、クーラーに必要なコストは一旦先送りにすることができます。
その代わり、3月までには必ず準備して接続しましょう。
マルコロック
従来、サンゴ水槽の立ち上げにはライブロックの利用が一般的でした。
しかし、ライブロックは海中のサンゴ岩を丸ごと採取するため、採集圧による海の生態系への影響が懸念されています。
マルコロックは陸上の石灰岩層から切り出された多孔質なアラゴナイト系石灰岩であるため、海の生態系への悪影響がありません。
ライブロック採取による海の生態系に与える影響を、最小限に抑えるために生まれた製品なのです。
一方で、ライブロックに比べると表面にろ過バクテリアが付着・定着していないため、バクテリアの定着までライブロックに比べると長い時間を要します。
つまり、ろ過能力を発揮するまでのタイミングが遅い点には留意しましょう。
バクテリア定着後は、ライブロックと比較しても遜色ない性能を発揮します。
▼マルコロックについて詳しくはこちら
ライブロック
海の生態系に与える影響を考慮するとマルコロックの利用が望ましいものの、その一方でライブロックはろ過能力が高く、即効性のある安定的な水質の維持ができる点は特徴と言えます。
マルコロックが水質安定機能を発揮できるようになるには、それなりに長い期間を要します。
すぐに結果が欲しい方や、水質の管理に自信がない方は、ライブロックの採用も選択肢といえるでしょう。
▼ライブロックついて詳しくはこちら
底床
大別してサンゴ砂とアラゴナイトサンドがあります。
その他、カルシウムサンドという選択肢もあります。
サンゴ砂やアラゴナイトサンドはサンゴの骨格成分が供給できるのに対しカルシウムサンドは9割以上が純粋な炭酸カルシウムなので、pHの安定能力とリン酸吸着能力に優れます。
それぞれの特徴から、お好みの底床を採用すると良いでしょう。
また、あらかじめバクテリアが定着済みの「ライブサンド」として販売されているものもあります。
こちらを採用すると、ドライサンドを採用した場合よりも短期間でサンゴを導入可能です。
特にマルコロックを採用する場合は、底床はライブサンドの採用がなおのこと望ましいです。
▼こちらも参考
まとめ
サンゴ水槽の立ち上げには初期費用がかかりますが、適切な機材を揃えれば小型水槽でも美しいサンゴの世界を楽しめます。
予算
- 30cmキューブ水槽: 約7~16万円
- 最低限の環境を整える上で必要な目安: 約7万円
- 標準的な環境を整える上で必要な目安: 約10万円
※2024年10月時点の目安です。
照明
- 弱い光で育つサンゴ: 1万円以下の照明でも十分育ちます。
- 強い光を要求するサンゴ: 3~5万円の調光機能付き照明が理想的です。
フィルター
- 外部式フィルター: 水槽サイズより1~2ランク上のものが推奨されます。
- 外掛け式フィルター: コストを抑えられますが、飼育可能なサンゴは限られます。
クーラー
- 1台2~3万円程度とやや高価ですが必需品です。
- 冬季に立ち上げる場合は不要です。春までには準備しましょう。
底床
- サンゴ砂やアラゴナイトサンド:サンゴの骨格成分が供給が可能です。
- カルシウムサンド:9割以上が純粋な炭酸カルシウムで構成され、pHの安定能力とリン酸吸着能力に優れます。
これらのポイントを考慮して、サンゴ水槽の立ち上げを計画してみましょう。
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