フラグサンゴ用語集

フラグサンゴを楽しむ上で、知っておきたい用語集です。
サンゴについて調べていて分からない用語が出てきたら、このページで振り返ると良いでしょう。

そもそもサンゴとは

サンゴとは、刺胞動物門花虫鋼に属する生物の総称です。

基質に固着して生育し、外観からは植物の一種であるかのような印象を受けますが、れっきとした動物の一種です。
分類上は、クラゲ(刺胞動物ヒドロ虫綱)やイソギンチャク(刺胞動物門花虫綱六放サンゴ亜綱)に近縁です。

ハイマツミドリイシ
見た目は植物のように見えますが、
サンゴはれっきとした動物の仲間です。
タコクラゲ
シライトイソギンチャク

サンゴ、クラゲ、イソギンチャクは、すべて刺胞動物の仲間です。

多くのサンゴは体内に「褐虫藻」と呼ばれる藻類を共生させています。
このため動物でありながら、植物のように光合成で栄養を得ることが可能です。

天然のサンゴ礁

アクアリウムの世界においては、水草や淡水の熱帯魚にはない蛍光色の色彩を用いたレイアウトが可能という点で注目されています。

光や与える元素のバランスを変えることで、色合いをある程度コントロールすることが可能です。
様々な種類のサンゴを用いてレイアウトしたり、コレクションしたりといったスタイルのアクアリウムは、特に欧米を中心に人気を博しています。

サンゴを用いたアクアリウムは大変奥が深く、ポテンシャルを秘めたアクアリウムジャンルのひとつと言えるでしょう。

ソフトコーラルを用いたレイアウト水槽
飼育器具の進歩により、小型水槽でも実現可。
マメスナギンチャクの「フラグサンゴ」
コレクション性が高く、人気があります。

ソフトコーラル

ハードコーラルのような石灰質の太い骨格を形成しないサンゴのグループです。
太い骨格は持っていませんが、体内に骨片と呼ばれる細かい針状の骨を無数に作ることで体を支えています。
全体的に軟質であることから”ソフト”コーラルと呼ばれます。

ウミトサカ、ウミキノコ、マメスナギンチャク、スターポリプなどが代表的です。

カワラフサトサカ
ウミキノコ
マメスナギンチャク
スターポリプ

水槽内では比較的育成しやすく、マリンアクアリウム初心者にもおすすめといわれています。

ハードコーラル

石灰質の硬くて大きな骨格を持つサンゴのグループです。
そのことから”ハード”コーラルと呼ばれます。

骨格がサンゴ礁を形成する要因になっているサンゴでもあることから「造礁サンゴ」の別名も持っています。

ハナガササンゴ、ミドリイシ、キクメイシ、オオバナサンゴなどが代表的です。

ハナガササンゴ
ミドリイシ
キクメイシ
オオバナサンゴ

ハードコーラルはソフトコーラルとは異なり、枯死しても骨格が残ります。
その骨格を基質として新たにサンゴが生育し、この繰り返しでサンゴ礁が形成されます。

ハナガササンゴの骨格
ミドリイシの骨格

アクアリウムにおいては、白化の後枯死したサンゴ、つまりハードコーラルの骨格を「かざりサンゴ」の名前でレイアウト用素材としても流通します。

サンゴの飼育方法がまだ確立されておらず、ライブロックやプロテインスキマーが普及する前(1990年代以前)のマリンアクアリウムでは、このかざりサンゴを用いたレイアウトが主流でした。

ハードコーラルは構造により、「LPS」と「SPS」の2種類に大別されます。

LPS

Large Polyp Stony coralsの略称です。
ポリプのサイズが比較的大きいハードコーラルを指します。

骨格をベースに厚い共肉で覆われる種が多く、ハナガササンゴ、キクメイシ、オオバナサンゴ、トランペットコーラルなどが代表的です。

ハナガササンゴ
キクメイシ
オオバナサンゴ
トランペットコーラル

流通する種類も多いので、お好みの形状のものを選べるというのも利点でしょう。
種ごとに要求する育成環境は大きく異なりますが、SPSに比べると水槽内で育成しやすい種が多いです。

SPS

Small Polyp Stony coralsの略称です。
ポリプのサイズが比較的小さいハードコーラルを指します。

骨格をベースに薄い共肉で覆われる種が多く、その表面には小さな無数のポリプが見られます。
ミドリイシの仲間が有名ですが、そのほかにもトゲサンゴやショウガサンゴ、シコロサンゴなどが代表的です。

ミドリイシ
トゲサンゴ
ショウガサンゴ
シコロサンゴ

LPSに比べると流通量が少なく、入手はやや難しめです。
また育成もLPSに比べると難易度が高い種が多く、低栄養塩で清浄な水質環境を要求する種が多いです。

ポリプ

サンゴの一個体です。
多くのサンゴは「群体サンゴ」であり、「ポリプ」と呼ばれる小さな個体の集合体で構成されています。

LPSはこのポリプ一つ一つのサイズが大きなグループであり、SPSはこのサイズが小さなグループです。

一部のサンゴには、ポリプの集合体ではなく一つのポリプで一個体を構成するものもいます。
このようなサンゴは「群体サンゴ」に対し「単体サンゴ」と呼ばれます。

「単体サンゴ」の一例としては、オオバナサンゴやクサビライシなどが挙げられます。

オオバナサンゴ
クサビライシ

群体サンゴの成長には、液体の栄養剤の添加が有効なことが多いです。
一方で単体サンゴは、状態の良い個体であれば、固体のフードを与えると成長が促進される傾向があります。

好日性

体内に褐虫藻を共生させることにより、光合成が可能なグループです。
リーフタンクで取り扱われるのは、基本的にこの好日性サンゴが中心です。

好日性サンゴは一般に、給餌よりも照射する光の強さや波長が生育に重要です。

陰日性

体内に褐虫藻を共生させておらず、プランクトンなどの捕食により栄養を得ているグループです。

比較的深場に生息する種が多く、光合成を行わないため給餌が必要です。
好日性サンゴに比べると、飼育難易度が高いものが多いとされます。

一般的なリーフタンクでは好日性サンゴをメインに取り扱われることが多く、陰日性サンゴが扱われることはほとんどありません。

オオトゲトサカ
ミナベトサカ

リーフタンク

サンゴを中心とした水槽です。(Reef tank)
「Reef」はサンゴ礁の意です。
サンゴ飼育に要求される環境や設備は、一般的に海水魚用のものよりもハードルが高いとされています。

しかしながら、近年では器具が進歩し扱いやすくなり、育成方法の知見も蓄積されてきました。
これにより、以前と比較して飼育しやすい環境が整ってきています。

はじめてリーフタンクを管理する場合、魚などサンゴ以外の生体の数は最小限に抑えることが成功の秘訣です。

フラグ

カットしたサンゴの破片(Fragment)を指します。
このフラグをプラグやディスクに乗せたものが、フラグサンゴと呼ばれます。

成長したサンゴを丸ごと株で購入するよりも、安価で手が届きやすいのがフラグサンゴのうれしいところです。

小型でバリエーションが多いためコレクション性が高く、フラグサンゴをたくさん集めて飾るというスタイルの楽しみ方もできます。

特に欧米を中心に、育成したサンゴからフラグを作り、愛好家同士で様々なサンゴを交換・シェアするといった楽しみ方も人気を博しています。

フラグ化させた
マメスナギンチャク

フラグラック

フラグを乗せる専用のラックです。

集めたフラグはこのフラグラックに乗せておくと、整理整頓に便利です。

フラグラック
フラグが増えてくると、
整理整頓に活躍します。

プラグ

プラグ(plug)。
フラグサンゴを乗せる台のうち、ラックやライブロックなどに挿せる突起があるタイプです。

突起がないものはディスクと呼ばれます。

突起がある土台がプラグ

ディスク

フラグサンゴを乗せる台のうち、突起がないタイプです。

突起があるものはプラグと呼ばれます。
平面に配置したい場合はディスクの方が便利です。

突起がない土台はディスク

コーラルソー

フラグ作成用として、サンゴを効率よくカットする目的で用いられる専用のカッターです。

コーラルソーを用いてマザー株の一部をカットして、フラグサンゴが作られます。

カットした直後はディップして、感染症の発生を対策します。

本格的にフラグ制作に励むなら
大活躍します!

ディップ

フラグ用にカットしたサンゴは、そのまま接着しただけでは雑菌に侵されてしまいます。

雑菌対策として、トリートメント用の薬剤に浸すことを「ディップ」といいます。

ディップ剤には2種類あり、ヨウ素系とハーバル系があります。
用途や目的に応じて使い分けましょう。
なお、ヨウ素系とハーバル系のディップ剤を同時に使用してはいけません。

サンゴカット後の必需品。

マザー株

フラグサンゴを作るためにカットする親株です。
ホール(whole)株とも呼ばれます。

サンゴのカットは多かれ少なかれ負担を与えるので、どのサンゴでもカットできるわけではありません。

カットの負担に耐えられるようにある程度大型であることと、健康で状態が良いことが、マザー株に求められる条件です。

褐虫藻

サンゴの体内に共生している藻類です。
分類的には渦鞭毛藻の仲間で、自力で泳ぐことが可能です。

サンゴが光合成を行えるのはこの褐虫藻の共生によるものであり、サンゴの生育には不可欠な存在です。

高水温を苦手とし、水温が30℃を超える状況が続くと、褐虫藻はサンゴから離脱してしまいます。
褐虫藻がいなくなるとサンゴは「白化」し、この状態が長く続くといずれは枯死してしまいます。

白化

サンゴから褐虫藻が離脱、または脱色した状態を指します。
文字通りサンゴが白くなってしまい、光合成ができなくなります。

この状況が長く続くと、光合成ができないために栄養を得ることができず、一般的な動物でいうところの餓死に近い形でサンゴは枯死します。

水質の富栄養化や高水温など、サンゴの育成にとって好ましくない状況が続くと、白化は進みやすくなります。

なお、白化が見られても初期であれば、適切な対処を行うことにより回復は可能です。

サンゴの白化は餓死のサイン

白化と同時に共肉の剥がれや壊死が見られる場合は、RTNの発症など病気への感染を疑います。

共肉

サンゴの、ポリプ以外の軟体質の部分を指します。
ポリプとポリプをつなぐ組織です。

サンゴの骨格はこの共肉により覆われており、一般にポリプと共肉によってサンゴの外観は決まります。

種類にもよりますが、多くのサンゴでは健康な個体ほどこの共肉が分厚くなる傾向があります。
共肉をよく観察することで、健康のバロメーターとしても活用できます。

蛍光タンパク質

サンゴの発色を決める蛍光色のタンパク質です。
色鮮やかでサイケデリックサンゴの発色は、この蛍光タンパク質の存在により表現されています。

一般的なものとしては、青を表現する「BFP」、青緑を表現する「CFP」、緑を表現する「GFP」、黄色を表現する「YFP」、赤やオレンジを表現する「RFP」などが知られています。

近い色であってもサンゴの種類によってタンパク質の構造が変わることから、実際には膨大な数の種類が存在しています。

このうち「GFP」はオワンクラゲの遺伝子から分離されたことで一際有名で、数々の生物学実験に用いられていることでも知られています。
また、GFPには緑色の蛍光を発することで褐虫藻を誘引する効果があることが知られています。

それぞれの蛍光タンパク質の種類ごとに要求する波長があり、例えば「BFP」「CFP」の発色には、400nm程度のUV照射が有効と考えられています。

持っている蛍光タンパク質の種類によって、適切な光の強さも異なる傾向があります。

刺胞毒

サンゴは刺胞動物であり、一部の種は毒を持っています。
そもそも「刺胞」とは刺胞動物に特徴的な毒針を指しており、この刺胞は刺激を受けると毒針を発射して、敵にダメージを与える仕組みとなっています。

代表的な刺胞動物として、クラゲが人を刺すのは有名です。
クラゲは他の生物を攻撃するときに、この「刺胞毒」を使っています。

クラゲもサンゴも刺胞動物であり、毒性を持つサンゴでは同様に「刺胞毒」を使って攻撃します。

なお、すべてのサンゴが毒性を持つわけではありません。
サンゴの種類によって、毒性や攻撃性には差があります。

トランペットコーラルやアザミハナサンゴ、キッカサンゴ、ナガレハナサンゴなどは毒性の強いサンゴとして知られています。

刺胞毒の存在は、海で知らないサンゴを見かけても触ってはいけない理由の一つもあります。

スイーパー触手

一部のサンゴが持つ攻撃用の触手です。
特にハナサンゴの仲間によく見られます。

通常、サンゴが刺胞毒を発揮するのは異なる種類のサンゴが隣接したときです。
サンゴには共通して刺胞毒を用いて他種を撃退する性質があるのですが、一部の種ではこれを積極的に行います。
スイーパー触手は本体から離れたところにいるサンゴも攻撃できるので、隣接していなくても攻撃されてしまうことがあります。

例えばナガレハナサンゴやトランペットコーラルは長く強力なスイーパー触手を持つことで知られており、離れた配置にあるサンゴに対しても攻撃を仕掛けることがあります。

スイーパー触手は、そのサンゴの同種や近縁種には通じないことが多いです。
スイーパー触手を持つサンゴを配置する際は、なるべく近縁種で固めるようにし、分類上遠い種に関してはなるべく間隔を開けて配置するようにしましょう。

RTN

急速にサンゴの一部組織が壊死・白化する病気です。
サンゴ愛好家の間で最も恐れられる病気の一つとして知られています。

Rapid Tissue Necrosis」(急速な壊死)を意味する略語で、SPSに発生しやすいことが知られています。
その名の通り進行が早く、発見から数時間~2日程度でサンゴを枯死させてしまうこともあります。
通常の白化と比較して共肉部分にも異変があれば、多くの場合RTNと判断してよいでしょう。

原因は複数あるようですが、水槽内で発生するものはビブリオ菌による細菌性感染症が主なものと考えられています。
ビブリオ菌は海中の常在菌であり重要な分解者で、どの水槽にも多かれ少なかれ存在します。
ただし、健康なサンゴは免疫が働くため、ビブリオ菌に感染することはありません。
ビブリオ菌は何らかの原因で免疫が正常に働かなくなった、体力が落ちた個体に対して感染します。

殺菌剤を用いることでビブリオ菌を殺菌できますが、ビブリオ菌に感染するほど免疫が低下しているとなると、そもそも体力の回復が難しい状態であることが多いです。

またビブリオ菌は感染力があります。
感染した個体を放置すると、その個体を起点に大量に増殖して、水槽内全体に広がってしまう恐れがあります。
全滅を免れるためには、感染が認められた部位とその周辺は、早期に処分したほうが良いといわれています。

STN

徐々にサンゴが白化する病気です。
Slow Tissue Necrosis」(ゆっくりとした壊死)を意味する略語で、RTNに症状は似ていますが進行が遅いのが特徴です。

STNの原因としては水質悪化や寄生虫など、様々な原因が考えられます。

ブラウンジェリー

サンゴの一部がぶよぶよと膨らみ、最終的に患部が壊死してしまう病気です。
この病気はサンゴに共生している褐虫藻を食い荒らす寄生虫(繊毛虫)により引き起こされます。

RTNと同様に入荷直後などで体力が落ちているLPSが発症することが多く、自然下でも高水温などで体力が落ちたLPSが発症することが確認されています。

体力が落ちた状態で外傷ができた場合に繊毛虫のサンゴ体内への侵入が起きやすいため、ブラウンジェリーの予防には水槽導入時のトリートメントが重要です。

感染した部位を治療することはできません。
対処法としては感染部位とその周辺を切り落とし、ヨウ素系のディップ剤に浸して様子を見ます。

ダイノス

茶色でねっとりとした粘液上のコロニーを作る渦鞭毛藻の一種です。
渦鞭毛藻Dinoflagellatesの略称として、「ダイノス」と呼ばれています。
ダイノスが発生する要因としては水槽内の生物相が貧困化、あるいは単純化してしまうことが挙げられます。

ダイノスが発生すると活性酸素を多量に発生させ、水槽内のあらゆる生物にダメージを与えます。

サンゴに共生する褐虫藻も渦鞭毛藻の一種ですが、渦鞭毛藻には様々な種類がいます。
すべての渦鞭毛藻がサンゴにとって有益なわけではありません。
ダイノスの原因となるのは主にOstreopsis属の渦鞭毛藻であることが判明しており、このグループは赤潮の原因になる藻類の一種としても知られています。

ダイノスは、いわゆる「茶ゴケ」 すなわち珪藻類と競合関係にあることが知られています。
一般的な水槽では珪藻が優勢な環境であることが多く、このために通常はダイノスの発生が抑えられています。

一方で珪藻は美観を妨げるため、リーフタンクにおいては好ましくない存在とされています。
美しい景観を保つためには、珪藻を一定程度の除去は必要です。
しかしながら、完全に根絶してしまうと珪藻が抑制していたダイノスが発生し、最悪の場合水槽の崩壊を招くことがあるのです。

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