浅場系ミドリイシ【SPS入門編】/ Shallow Water Acropora

リーフタンクの花形であるミドリイシ。
飼育難易度が非常に高いサンゴとして位置づけられていますが、近年においては熱心な研究者やマリンアクアリストの手によりさらなる飼育条件の詳細が判明してきています。

依然として飼育難種としてのイメージが強いミドリイシですが、浅場系ミドリイシの育成については必要なポイントを押さえればそれほど難しいものではなくなってきました。

ミドリイシは大きく分けて2グループに分けられます。
生息環境からそれぞれ浅場系ミドリイシと深場系ミドリイシと呼ばれていますが、深場系は浅場系と性質が違うため別記事で触れる予定です。

今回はSPSの入門編として浅場系ミドリイシの基礎的なことについて解説していきます。

基本情報

浅場系ミドリイシとはミドリイシの仲間でも水深の浅いサンゴ礁に適応した種類を指す総称です。
ミドリイシの仲間は水深0~50mの環境に生息していますが、浅場系と呼ばれるミドリイシのほとんどは0~20mほどの水深環境で見られることが多いようです。

形状や色彩の違いも豊かでサンゴ礁を彩る主役でもあり、リーフタンクにおいてもトップクラスの人気を誇っています。その立ち位置はまさにスターコーラルといえる存在です。

日本で主に流通するものは沖縄産、インドネシア産、オーストラリア産のそれぞれ養殖されたブリードものが見られます。フラグサンゴでは蛍光色が派手なものが見られますが、海中で養殖されたものはそれほど派手なものはありません。派手な色彩のフラグミドリイシは安定した人工環境下で色揚げされたものです。

群体ごとの素質はありますが、じっくりと飼い込むことで蛍光タンパク質の変異などが起こり派手な色彩へと変化していきます。飼い込むことによる色揚げこそがミドリイシ飼育の醍醐味でもあります。

流通名浅場系ミドリイシ
学名Acropora sp. ※複数種類を含む
分布太平洋~インド洋の熱帯海域
グループハードコーラル(SPS)
飼育しやすさ★★★☆☆
ポイントを押さえれば飼育自体は容易
入手しやすさ★★★★☆
比較的よく見かける

自生地の環境 / Habitat Sea Area
清浄な水質の維持が必要
給餌が有効
硝酸塩の目安5~10ppm
リン酸塩の目安0.02ppm以下

・清浄で清潔な水質を保つために強力なプロテインスキマーの使用が推奨です。
硝酸塩とリン酸塩はなるべく低い数値が望ましいですが、0にならない管理が推奨です。
水質を保ちつつ、必要な栄養が不足しないような管理がポイントになります。

適正水温 / Water Temperature
高めの水温
標準的な水温
低めの水温
冷水もしくは 深海性

基本は24℃前後で管理。成長を優先させるなら26℃を上限とし、28℃を超えないようにします。
・水温が28℃を超えると褐虫藻が抜ける白化が進行し始めます。
水温が28℃を超えるとビブリオ菌の活動が活発化するためRTNを発症しやすくなります。

光色のセッティング / Lighting Spectrum
水深10m未満
水深10-30m
水深30-50m
水深50-80m
PARの目安200~400

光量は中~高。水槽導入直後は光を強くし過ぎないようにします。
・ミドリイシの色素タンパク質に対応した光色のものを使用しましょう。
・非蛍光の色素タンパクを多く持つものはアンバー(オレンジ~黄色)を含む白色に近い光が推奨。
・蛍光色を強化するのであればグリーン~UVを含む「ワイドブルーバンド」の領域を強める。

水流 / Water Flow
サンゴが左右に揺れる水流
澱みのないランダム水流
太くて強い水流

コントローラー付きサーキュレーターの使用推奨。
波のような大きなうねりができる強めの水流を作りましょう。
・摂り込む元素量は流速に応じて増えるため、水流は速いほど代謝が促進されます。

エサの種類とサイズ / Feeding Menu
液体フード
パウダーサイズ
顆粒サイズ
ペレットサイズ

・給餌には水を汚しにくい生きた植物プランクトンが推奨。
・水槽導入直後のトリートメントにはビタミンやアミノ酸を含む栄養剤の使用が有効です。

代表的な種類

ミドリイシにもさまざまな種類が存在します。
枝が太いものや細いもの、立体的な枝状に広がるものやテーブル状に広がるものなどさまざまです。

ミドリイシは種類の正確な同定が非常に難しく、典型的な形をしているもの以外は「○○系ミドリイシ」など形状が近い種類の名前が付けられて流通しています。販売名はあくまで目安として見ておくのがいいでしょう。

ハイマツミドリイシ
ハイマツミドリイシ
ハイマツミドリイシ
スギノキミドリイシ
スギノキミドリイシ
スギノキミドリイシ
ウスエダミドリイシ
ウスエダミドリイシ
ウスエダミドリイシ
スゲミドリイシ
スゲミドリイシ
コシバミドリイシ
コイボミドリイシ
コイボミドリイシ
エンタクミドリイシ
オーストラリア産
カドエダミドリイシ
オーストラリア産
スパスラータ
オーストラリア産
スパスラータ

種類をしっかりと同定するには骨格の形状や分岐の仕方などを充分に確認しなければならず、困難を極めます。

フラグミドリイシとして流通している中にも、もしかすると今後新種に分類されうるもの(=未記載種)が紛れている可能性は0ではありません。

姿や色の美しさだけでなく、分類学的な視点からも楽しめるのがミドリイシの奥深さと言えます。

なぜミドリイシには高栄養塩環境が適さないのか?

ミドリイシをはじめとしたSPSの飼育には「硝酸塩」と「リン酸塩」の値を低く保つことが重要と言われます。では、その理由はなぜなのでしょうか?

それは「リン酸による骨格の形成阻害」と「高栄養塩環境で起こる褐虫藻からの栄養供給阻害」が起こるためです。

造礁サンゴ(ハードコーラル)の骨格は「アラゴナイト結晶型の炭酸カルシウム」から成ります。
硝酸とリン酸にはカルシウムと強く結合する性質があり、これによりサンゴ体内で形成される炭酸カルシウムの骨格を侵します。特にリン酸がその性質が強く、水中のリン酸塩濃度が高いとミドリイシの骨格の形に異常が見られるようになってしまいます。

過剰なリン酸(PO₄³⁻)は炭酸カルシウム(CaCO₃)と結びつき、ミドリイシの骨格形成を阻害します

「硝酸に含まれる窒素」と「リン」自体はアミノ酸やタンパク質などの合成に必要な物質で生物にとって欠かせないものですが、炭酸カルシウムの形成を阻害してしまう「硝酸」と「リン酸」という形で水中に存在していることが問題なのです。

問題はそれだけではありません。
リン酸塩と硝酸塩の濃度が高い環境下ではミドリイシの体内に共生する「褐虫藻からの栄養供給が正常に行われなくなる」ことが確認されています。

その理由についてはまだ不明な点も多いですが、褐虫藻からの栄養供給が滞ってしまうことにより色素タンパク質や粘液の生成も阻害され外的なストレスに弱い状態になってしまいます。

いわゆる「茶石」と呼ばれるミドリイシの褐色化現象はこれに由来します。
色素タンパク質の生成が阻害されてしまうことで体内の褐虫藻が透けて見えてしまうというのが、そのメカニズムになります。

これらの状態を防ぐために硝酸塩とリン酸塩の数値が低い低栄養塩環境を構築する必要があるのです。

ミドリイシ中心のSPS水槽で失敗してしまう最大の要因は「海水魚を多く入れすぎてしまうこと」が挙げられます。その点について触れた記事もありますので、併せてお読みください。

体色から見るミドリイシの健康状態

水質や光の条件などによりミドリイシの色彩はさまざまに変化します。
ミドリイシの見た目で健康状態や環境の良し悪しも判別することができます。

健康な状態の体色
蛍光色素(FP)が出ている
非蛍光色素(CP)が出ている
※画像はトゲサンゴ
色素と褐虫藻のバランスが良い

ミドリイシの健康的な体色とは「上層の色素タンパク質」+「下層の褐虫藻」のバランスが良いものを指します。この2つの要素が揃うことでミドリイシの美しい体色が表れるようになるのです。

サンゴの体色=「色素タンパク質+褐虫藻」

サンゴの鮮やかな体色の元になっている色素タンパク質は強力な抗酸化物質という一面もあります。
体色がしっかり出ているサンゴはストレスに強い傾向が確認されており、体力がある状態ともいえます。

また、この美しい体色は色素タンパク質だけではなくベースに褐虫藻がいることが重要です。
褐虫藻が抜けてしまうと「パステル化」と呼ばれる状態となります。パステル化してしまったサンゴは光合成による栄養供給が望めないことから、添加剤で栄養を補う必要があります。

パステル化褐虫藻が抜けている状態
立て直し難易度:中

一方で通称「茶石化」と呼ばれる「褐色化」した状態も存在します。
これは褐虫藻が大量に残ってはいるものの、ミドリイシが色素タンパク質を失っている状態です。

褐色化色素タンパク質が抜けている状態
立て直し難易度:易
褐色化から回復しつつある状態

これは水質が富栄養気味であったり、色素を活発化させる波長の光が足りていないことなどが原因です。
褐色化したミドリイシは適切な環境下では少しずつ色素が戻っていくので、大きな心配はしなくても大丈夫です。

そして色素タンパク質も褐虫藻も抜けてしまった状態が「白化」です。
体力が著しく低下してしまっていることが多く、非常に危険な状態でもあります。

白化(色素タンパク質と褐虫藻が抜けている状態)
立て直し難易度:難

腕に自信のある方であれば「褐色化」したものと「パステル化」したものを立て直すのは難しいことではありません。しかし、「白化したミドリイシ」を立て直すのは熟練した上級者でも至難の業となります。

購入時に白化したミドリイシはなるべく避けるのが安全です。

いずれもショップなどで入荷直後のものによく見られます。
これらの状態により対処方法が変わるため、違いをしっかり把握しておきましょう。

それぞれの対処法は別記事で解説予定です。

健康状態を見るもうひとつの指標「粘液」

サンゴは環境ストレスへの防御として粘液を分泌しますが、ミドリイシの仲間は特に顕著に見られます。

この粘液は非常に強い抗酸化力を持った糖タンパク質、多糖類、脂質などからなるもので、干潮時に海水面より露出してしまった際に乾燥から身を守ったり、サンゴの体内外で発生したヒドロキシラジカル(OH⁻)などの活性酸素から身を守る作用や、UVから身を守る作用、ビブリオ菌などの細菌類が体内に侵入するのを防ぐ作用など、さまざまな防御作用を持っています。

干潮時に水面上に露出したミドリイシ.
体表を粘液で覆って乾燥と強烈な日差しに耐えます.

サンゴの粘液は褐虫藻から供給される栄養を元に生成されます。
褐虫藻の光合成と栄養供給が上手くいっていなければサンゴは粘液を作り出すことができません。

つまり、分泌する粘液量でもミドリイシの健康状態を計ることができます。

またミドリイシを中心としたリーフタンクを作るうえで重要な、細菌叢のサイクルを形成するための炭素源としても機能します。これらの要素は重要なポイントになりますので覚えておきましょう。

リーフタンクにおける飼育のポイント

ミドリイシが生息する海域のイメージ

ミドリイシは貧栄養環境のサンゴ礁における典型的なサンゴです。
状態良く飼育するには、ミドリイシの性質とその環境要素を紐解く必要があります。

飼育下で必要となる重要な要素に触れていきましょう。

水質維持の要、プロテインスキマー

大型のベンチュリー式プロテインスキマーの使用が推奨

ミドリイシへの給餌や栄養剤の使用を担保するための機材として、強力なプロテインスキマーは必須です。

一般的にプロテインスキマーは水の汚れを除去する装置と説明されることが多いですが、プロテインスキマーが除去するものには硝酸塩やリン酸塩の素になる有機物(タンパク質)だけでなく過剰に増えすぎたバクテリアも排出します。

プロテインスキマーを軸にしたリーフタンクの栄養塩循環イメージ

水質を貧栄養気味に保ちつつ、ビブリオ菌のような危険な分解菌が過剰に増殖するのを抑制し清潔な環境を維持するためにもプロテインスキマーの存在は欠かせません。

ミドリイシの育成自体はプロテインスキマーがなくても可能ではありますが、小まめな換水ができなければ難易度は跳ね上がります。単純に育てるだけではなく、美しい体色を楽しみたいのであれば性能の高いプロテインスキマーを使うようにしましょう。

水流の重要性

ミドリイシは潮通しの良いサンゴ礁を主な生息地にしています。

サンゴ礁は水中でもうねるような波が常にありますが、ミドリイシが多く生息する浅瀬では特に潮の満ち引きによる強い波が起こりやすく、常にその身を委ねています。

立体的な枝状の群体は複雑で強い水流に適応したものです

そしてサンゴが取り込む微量元素の量は、体表に接触する海水の流速に比例しています。
水流が速いほどサンゴは多くの微量元素を摂りこむことができ、代謝が活発化します。

水流が早いと摂りこめる元素量も多い
水流が遅いと摂りこめる元素量が少ない

ミドリイシはハードコーラルの仲間でも成長が非常に早い部類に入ることから必要とする元素量も多く、成長速度に合わせた元素供給が求められます。そのため水流を強めて代謝を活発化させる必要があるのです。

ミドリイシの成長点が必要とする元素量の供給が重要です

さらに水流が滞ってしまうとミドリイシの体表にデトリタスなどのゴミが蓄積しやすくなり、RTN(Rapid Tissue Necrosis=急速な体組織崩壊)やSTN(Slow Tissue Necrosis=遅緩な体組織崩壊)といった病気を誘発する原因にもなります。

デトリタスが溜まったところからRTNやSTNが広がります

ミドリイシの「健全な骨格形成と代謝の促進」、そして「病気の予防」という面でも水流は重要な要素です。「時間をおいてポリプが前後左右に揺れる、大きな波」のような水流を作りましょう。

「ZOOX リヴァイアサン 5000」を使用した水流イメージ 

KHとカルシウム濃度の低下に注意する

ミドリイシは成長の早いハードコーラルです。
そのため「骨格を形成するための元素の消費も早い」ということも把握しておく必要があります。

主に把握しておきたいのは骨格を構成する主要元素である「KH(炭酸塩)」「カルシウム」「マグネシウム」試薬で濃度を計る必要があるのはこの3種類です。

ハードコーラルが必要とする骨格成分用の試薬
KHの目安7~12dKH
カルシウムの目安400~500ppm
マグネシウムの目安1200~1400ppm

この3つの項目を定期的に計測して、目安の範囲から外れていないかを計測しましょう。
不足していれば添加剤などを用いて補充し、過剰にありすぎる場合は水換えをしてバランスを戻すようにします。

次いで消費される元素は「ストロンチウム」「ヨウ素」「鉄」「カリウム」の4種類です。
これらは試薬類が少なく計測は難しいですが、人工海水を使った1週間に1回の定期的な換水を行っていれば枯渇の心配はありません。換水の期間が1か月以上開いてしまうような飼育スタイルの場合は注意しましょう。

SPSを数多く収容した水槽では元素の消耗も激しくなることから添加剤やカルシウムリアクターといった機材が必要となることもあります。

しかし、小さなフラグSPS数本程度であれば添加剤を使わず換水のみで元素の補充はカバーできます。

重要なのは「サンゴが必要とする元素は、必要な分量があればいい」ということ。
欠乏してしまうのもよくありませんが、過剰にあり過ぎても害が発生します。

サンゴが必要とする元素は「安全な許容範囲内をキープする」ということが大切なのです。

飼育するサンゴのサイズや数、水槽の総水量などによってセッティングと運用も大きく変わるため、ひとくちにSPS水槽といっても飼育スタイルに応じた管理方法が求められることを覚えておきましょう。

浅場系ミドリイシに合った照明

従来ミドリイシにはメタルハライドランプのような強力な照明が必要と言われてきました。
しかし、現在では単純な光の強さではなくPAR(光合成有効放射)や光の波長(光の色)などが重視されています。

つまり、褐虫藻が充分に光合成を行える光量であれば問題はありません。
PARの数値でいうと200~300ほどあれば充分です。

特に水槽導入直後の色があまり出ていないミドリイシを高KHの水槽に入れて強すぎる光を当てると、強光障害を引き起こすことがあるので注意しましょう。

加えて重要なのが、サンゴの色素タンパク質を発達させるための波長の光です。
特に蛍光タンパク質を持っているものには蛍光色が励起する光を当てる必要があります。

蛍光タンパク質が励起する波長の光が当たることで、褐虫藻にとって安全で光合成効率の良い波長へと変換されます。褐虫藻の光合成効率が上がることで、サンゴへ供給される栄養の量が増してサンゴの成長と色揚げが促進されることになるのです。

ミドリイシへの栄養補給

浅場系ミドリイシは貧栄養海域に適応したサンゴです。
しかし、水槽内で光合成のみに頼ると水質やミドリイシの健康状態によっては必要とする栄養が不足する場合があります。

特に水槽導入直後では体力が落ちてしまっていることが多く見られます。
粘液の分泌量が少なく、ポリプも開いていないものは体力が著しく落ちています。

購入時点でポリプを出しているのが確認できれば体力はある状態と判断できますが、それでも水槽導入直後に充分な栄養が摂れずに力尽きてしまうというパターンは多く見られます。

水槽導入から1~2週間ほどは、水を汚しにくいサンゴ用栄養剤でのトリートメントでミドリイシの基礎代謝を整えましょう。

サンゴ用栄養剤「リーフエナジー AB+」

栄養剤を使うときの注意点として、絶対に過剰量を添加してはいけません。
ミドリイシが吸収できなかった分は水中のバクテリアが栄養源としますが、水槽内の細菌叢によってはビブリオ菌などRTNを引き起こすバクテリアを増殖させてしまうことにも繋がります。

体力が落ちたミドリイシへの栄養供給は「増え過ぎたバクテリアを除去できる処理能力の高いプロテインスキマー」が必須になります。必ず栄養剤の規定量を厳守するようにしましょう。

少しずつ色を取り戻し、粘液の分泌量も増えてきたらミドリイシの健康状態が改善してきていると判断できます。

ミドリイシへの給餌

ミドリイシは微細なプランクトンやバクテリア、懸濁物質(デトリタス)を自らの粘液を使って凝集し、ポリプへ運んで捕食しています。この性質を利用することで栄養価の高い植物プランクトンを捕食させることができます。

エサとして使用するのは生きた植物プランクトンを主体としたフードが水を汚しにくいことからお勧めです。

植物プランクトン主体の「リーフチャージ」

「べっぴん珊瑚 リーフチャージ」はカルシウムと必須脂肪酸を豊富に含む円石藻の一種プレウロクリシスを主体としていることからミドリイシなどSPSのエサとして非常に優れています。またカロテノイドが豊富なドナリエラも含まれているので色揚げや酸化ストレス防御を上げる効果も期待できます。

給餌のタイミングはミドリイシの粘液量やポリプの出具合を見て判断します。
粘液が充分に分泌できるようであれば捕食量も上がりますが、粘液がほとんど出ないときは体力がない状態でもあります。そのようなときは無理に給餌を行わず栄養剤でのトリートメントを行いましょう。

ミドリイシにおいても栄養剤で基礎体力を整え、給餌により成長を促進させるという手法は有効となります。

浅場系ミドリイシ まとめ

今回は浅場系ミドリイシ飼育の基本について触れてきましたが、これは「ミドリイシを飼育するには、なぜこうしなければいけないのか?」という、まさに基本要素そのものの解説となります。

しかし、これを知っているのと知らないのでは飼育難易度のハードルの高さが変わります。
生物飼育の基本として「その生物が本来どのような環境に生息していて、どのような生態を持っているのか?」を知ることが重要です。

ミドリイシ飼育のハードルが高かったのは、かつてはその生態と生理的なメカニズムがあまりよく知られていなかったことも挙げられるかもしれません。

そこから数多くの研究者とアクアリストの努力によって、ミドリイシの生態と飼育に必要な環境要素が紐解かれてきました。現在ではそれに伴い機材やろ過システムも発達して飼育自体のハードルは大きく下がってきています。

しかし色揚げについてはまだまだ謎が多く、完全には明らかになっていません。

近年のフラグサンゴカルチャーの発展により派手な色彩を持つミドリイシのフラグも多く流通するようになりましたが、それらの極彩色ともいえる鮮やかな色彩は自然下ではごく僅かにしか見られません。

サンゴの持つ色素は安定した環境下で発達しやすい傾向があり、さまざまな環境変化が起こる自然の海では派手な発色に至るまでは少ないようです。

そのため、ミドリイシの色揚げには安定した水槽内環境を構築してミドリイシ自身が健康に育つことが重要です。
これらの基礎部分をしっかり構築して飼育に臨むことで、美しいミドリイシ水槽を楽しむための1歩が踏み出せるかと思います。

ミドリイシを美しく育てるための各要素にスポットを当てて解説予定です。

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