ハゼから始めるサンゴ水槽入門!vol.3 かんたん解説 6タイプのハゼ

サンゴ水槽に憧れるけれど、いきなりサンゴから始めるのはちょっと不安。
そんな方にこそおすすめしたいのが、“ハゼから始める”という選択肢です。

この記事はサンゴ水槽の立ち上げを目指す入門記事ですが、サンゴはほとんど登場しません。
ですが、アクアリウムは全く未経験だけど、サンゴ水槽をはじめたい!という方には必見の内容です。

前回の記事では、とりあえずこれらを選んでおけば間違いの少ない「おすすめのハゼ」を紹介しました。

今回はその続編として、水槽飼育における性質から、ハゼを6タイプに分類したものを紹介します。

ハゼは種類が非常に多く、性格や生態も多様です。
生態が違うということは、飼育に必要な前提条件も少し変わってきます。

今回ははじめての飼育にも役立つ情報として、学術上の分類ではなく飼育上の特性から、6つのタイプに分類しています。
それぞれの特徴と代表種を紹介します。

遊泳性ハゼ

中層をホバリングするように泳ぐグループです。
サンゴとの干渉が少なく温和なため、サンゴ水槽とは最も相性の良いハゼと言えます。

ハタタテハゼ
ゼブラハゼ
クロユリハゼ
ネオンゴビー
アケボノハゼ
イトマンクロユリハゼ
オヨギイソハゼ
アオギハゼ

など

サンゴ水槽と相性が良い理由

  • 飼育が比較的容易
    多くの種が丈夫で餌付きも良く、初心者でも飼育しやすい点も魅力です。
    初心者向けの海水魚として定番のクマノミ類よりもさらに丈夫とされることもあり、サンゴ水槽を目指す第一歩として最適なグループです。
  • 温和な性格で混泳しやすい
    遊泳性ハゼの多くはおとなしく、他の魚やサンゴとのトラブルが起きにくい性質を持っています。
    そのため、導入初期の水槽でも安心して飼育でき、環境が安定したらそのままサンゴ水槽へと移行しやすいのも利点です。
  • サンゴに物理的な干渉が少ない
    中層をホバリングするように泳ぐため、サンゴの上に乗ったり、砂を巻き上げてかけたりすることがほとんどありません
    このため、サンゴに物理的なダメージを与えるリスクは極めて低く、安心して同居させることができます。
  • 水槽全体に動きと彩りを与える
    中層を泳ぐことで水槽に立体感が生まれ、サンゴの間をすり抜けるように泳ぐ姿は観賞性も高く、見た目にも華やかさを加えてくれます
    水槽全体のバランスを整える存在としても優秀です。

ハゼ類としては異端

ハゼ類は一般的に底生生活を送る種が多く、遊泳性のハゼはむしろ少数派です。
そのため、遊泳性ハゼはハゼの中ではやや異端な存在といえます。

しかしながら、サンゴ水槽という目標を踏まえて考えると、これらのハゼこそが最もスタンダードな選択肢といえるでしょう。


超小型ハゼ

成魚でも体長3cmを下回るほどの極小サイズのハゼたちです。
群れでの飼育が推奨されるものと、単独生活を送るものがいます。
加えて底生のものと遊泳性のものとがおり、一部は遊泳性ハゼとされる種と重複します。

群れるタイプ

オヨギイソハゼ
アオギハゼ

単独生活するタイプ

チゴベニハゼ
オキナワベニハゼ

など

このグループは非常に小型のため、餌のサイズに注意します。
基本的には遊泳するタイプのほうが飼育しやすいですが、底生生活を送るタイプも、このサイズではサンゴにほとんど影響を与えません。
したがって、飼育の難易度に関してはどちらも大差ありません。

ただし、イソギンチャクを入れる場合は注意が必要です。
超小型であるがゆえに、イソギンチャクに捕食されてしまう場合があります。
イソギンチャクを入れず、サンゴだけを入れるのであれば特に問題はありません。

小型水槽にぴったりのサイズ感

超小型ハゼは、成魚でも体長が3cm未満と非常に小さく、30cmクラスの小型水槽でも無理なく飼育できるのが大きな魅力です。

むしろ、広すぎる水槽では見失いやすくなるため、小型水槽の方が観察しやすいです。
小型水槽への適性が高いグループと言えるでしょう。

また、オヨギイソハゼやアオギハゼなどの種は群れをつくります。
複数匹を群れで飼育することで、小さな水槽でもにぎやかで立体的なレイアウトが楽しめます。

省スペースでも始められる点は、はじめてサンゴ水槽にチャレンジするにあたって大きなメリットです。

ただし、小型水槽は水量が少ない分、水質の変化が早くなります。
こまめな水換えを心掛け、餌の与えすぎに注意しましょう。

餌のサイズと給餌方法に注意

超小型ハゼは口が非常に小さいため、一般的な人工飼料では粒が大きすぎて食べられないことがあります。
そのため、微細なパウダー状の顆粒餌や、冷凍ブラインシュリンプ幼生(ベビーブライン)など、サイズに合った餌を選ぶことが重要です。

微粒タイプの人工飼料が有効
もし食べなければ
冷凍ブラインシュリンプ幼生が有効

また、底生生活を送るタイプは餌を見つけにくいことがあるため、スポイトでピンポイントに与えるなどの工夫も効果的です。
餌付けに慣れるまでは、複数回に分けて少量ずつ与えると、食べ残しも減らせて水質悪化を防げます。

いきなり人工飼料には餌付かないこともありますが、その場合は冷凍ブラインシュリンプから与えましょう。
様子を見ながら少しずつ人工飼料に切り替えていくと、最終的にはほとんどの場合人工飼料に餌付きます。


サンゴハゼ

サンゴハゼは、枝状サンゴ(特にミドリイシ類)と共生的な関係を築く小型のハゼです。

体長2〜4cmほどの小型種が多く、サンゴの枝の間に身を潜めながら生活します。
サンゴの上にちょこんと乗っていたり、枝の隙間から顔を出したりする姿がとても可愛らしく、観察の楽しみも大きいグループです。

キイロサンゴハゼ
ベニサシコバンハゼ
ミドリイシの上に乗るキイロサンゴハゼ

最初の1匹には不向き

サンゴハゼはその名の通り、サンゴとの相性は非常に良好なグループです。
むしろサンゴへの依存度が高い種類であるため、サンゴのない環境ではストレスを感じやすく、状態を崩すこともあります。

ミドリイシが群生する環境が、本来生息する環境です。

そのため、まだサンゴを入れていない水槽に最初の1匹として迎えるのはおすすめできません。
どちらかといえば、サンゴを入れた後に迎えたい魚です。

サンゴとの共生関係

サンゴとの共生関係

サンゴハゼはサンゴの表面に分泌される粘液をついばむ行動が見られることが知られています。
一見するとサンゴにダメージを与えているようにも見えますが、これはサンゴが健康体である限り、特に大きな問題にはなりません。

むしろサンゴハゼがサンゴの間に住み着くことで、藻類の付着を抑える効果や、サンゴの通水性を高める効果があるとも言われており、サンゴにとってプラスに働く共生関係を築いているものと考えられています。


共生ハゼ

共生ハゼは、テッポウエビと共生関係を築くユニークなハゼのグループです。
ハゼは巣穴の見張り役、テッポウエビは穴掘り役として協力し合い、自然界では非常に密接な関係を築いています。
ハゼはエビの掘った巣穴に身を寄せ、エビはハゼの動きで外敵を察知します。
この共生行動は、水槽内でも比較的高確率で観察できます。

ハゼ単独の飼育では落ち着かないことが多く、テッポウエビとのセット飼育が基本になります。

ヤシャハゼ
ヒレナガネジリンボウ
ギンガハゼ
ヤマブキハゼ

など

サンゴの配置に注意

ハゼがサンゴにダメージを与えることはありません。
しかし共生相手のテッポウエビは砂を掘り返して巣穴を作る習性が強く、周囲のサンゴを埋め立ててしまうリスクがあります。

特に底面近くに配置したサンゴは、砂に埋もれてダメージを受ける可能性があるため注意が必要です。

テッポウエビとサンゴの相性に注意

とはいえ、レイアウトを工夫すればサンゴとの共存は可能です。
サンゴはレイアウトロックの上など、高所に配置すること埋め立てられにくくなります。

共生ハゼを導入する場合は、テッポウエビに埋め立てられない位置にサンゴを配置することを意識しましょう。

エビとハゼとの相性

ハゼとテッポウエビの共生は非常に魅力的ですが、どのハゼとどのエビでもペアになれるわけではありません
種によって、ペアを組みやすい/組みにくい組み合わせがあることが知られています。

特に、流通量が多く入手しやすいテッポウエビとしては、以下の2種が代表的です。

  •  ランドールピストルシュリンプ
    Alpheus randalli
  •  ニシキテッポウエビ
    Alpheus bellulus
ランドールピストル
シュリンプ
ニシキテッポウエビ

これらのエビと相性が良いとされるハゼの例は以下の通りです。

テッポウエビの種類ペアを組みやすいハゼの例
ランドールピストルシュリンプヤシャハゼ、ヒレナガネジリンボウ、ヤノダテハゼ、クビアカハゼ など
コトブキテッポウエビギンガハゼ、ヤマブキハゼ、ニチリンダテハゼ、クビアカハゼ など

ただし、相性が良いとされる組み合わせであっても、個体同士の性格や環境によってはペアを形成しないこともあります


ベントス食性ハゼ

ベントスハゼは、底砂を口に含んで濾し、有機物や微生物を摂取する習性を持つハゼのグループです。
砂の中に含まれる残餌やデトリタス(有機ゴミ)を食べながら、きれいな砂を吐き出すという独特の行動を繰り返します。

このため、底砂の通水性を保ち、嫌気的な環境の悪化を防ぐ効果も期待できます。

オトメハゼ
ミズタマハゼ
アカハチハゼ
カニハゼ

サンゴ水槽には不向きかも

ベントスハゼが砂を吐き出す際、サンゴの上に砂をかけてしまうことがあり、サンゴがダメージを受ける原因になることがあります。
特にLPSや底面近くに配置したサンゴは、砂の影響を受けやすいため注意が必要です。

このため、サンゴとの相性はあまり良いとは言えません。
掃除要員として人気の高い種ですが、最終的にサンゴ水槽を目指す場合は、やや扱いづらい面が目立ちます。
ハゼが砂を吐き掛けにくい場所を探し、レイアウトを工夫すれば共存は一応可能です。

しかしながら、サンゴを前提とする水槽であるならば、遊泳性ハゼなど他のハゼ類の方が無難でしょう。

魚メインの水槽では重宝する掃除役

ベントスハゼのグループは、サンゴ水槽との相性は良いとは言えません。

しかしながら比較的多くの魚種と混泳が可能で、底砂内の残餌を積極的に掃除する習性を持つため、魚メインの水槽では、掃除役として重宝される魚種です。


その他のハゼ

ここで紹介した5つのタイプの、いずれにも当てはまらないハゼたちです。
むしろ、ハゼとしてはスタンダードな生態を持った種が多いです。

基本的に底生となるため、サンゴ水槽での飼育はレイアウトに工夫が必要な場合があります。
種によって性質が異なるため、この中から選ぶ場合は、各種の性質を個別に確認してから導入を判断しましょう。
サンゴ水槽には全く不向きなものもいます。

フルムーンリーフゴビー
インコハゼ
ツムギハゼ
ミナミトビハゼ
※サンゴ水槽には
全く不向き

ここまで紹介した5グループのいずれにも振り分けられない、ということは、個々の種ごとに異なる生態を持っており、サンゴ水槽への導入はよく吟味する必要があります。

特にその種が元来どのような環境に生息しているのかを調べておくことが重要です。
さらに、「好む塩分帯(比重)」が分かると、サンゴ水槽に向いているのか、はたまた向いていないのか。
その適性が分かってきます。

例えば、上述した4種を挙げてみましょう。

種名生息環境比重総評

フルムーンリーフゴビー
(イザヨイベンケイハゼ)
サンゴ礁標準(海水)
サンゴ水槽向き

インコハゼ
マングローブ林
河口域
低め(汽水)
※海水にも適応可

導入可能だがやや不向き

ツムギハゼ
マングローブ林
河口域
低め(汽水)
※海水にも適応可

導入可能だがやや不向き
※有毒

ミナミトビハゼ
干潟低め(汽水)×
導入不可

このように、種ごとに生息環境が全く異なるため、個別に判断していく必要があります。
サンゴ水槽に適性があるのか、ないのかの判断はそれぞれの種に対する専門的な知見が要求されてしまうので、意外と難しいです。

そもそもマリンアクアリウムにおいてこれらのハゼ類は一般的ではないことが多く、流通量も多い種類ではありません。おそらく、安定的な入手は難しいことが多いでしょう。

したがってサンゴ水槽を目標として水槽を立ち上げたとすると、最初の1匹に選ぶ魚としては、敢えて選ぶべき魚とは言えません。
経験を積んでから、あるいは、魚中心の水槽とする場合には良いでしょう。


まとめ

マリンアクアリウムにおいてよく見られるハゼは、6タイプに大別できます。

グループ名代表種サンゴ水槽との相性備考
遊泳性ハゼハタタテハゼ、ゼブラハゼ など最高の相性
超小型ハゼオヨギイソハゼ、アオギハゼ などイソギンチャクは×
サンゴハゼキイロサンゴハゼ、ベニサシコバンハゼ など最初の1匹には不向き
共生ハゼヤシャハゼ、ギンガハゼ などレイアウトに要工夫
ベントスハゼミズタマハゼ、オトメハゼ など砂掛け注意
その他のハゼフルムーンリーフゴビー、ミナミトビハゼ など相性の良し悪しは種による

サンゴ水槽を作り上げていく上では、遊泳性ハゼ超小型ハゼが特におすすめです。
前回紹介した5種から選ぶのが無難と言えますが、そのほかのハゼから選びたい!という方は、この分類を参考に選ぶと良いでしょう。


次回は、基本的な水槽の立ち上げに必要な器具類の紹介を解説していきます。
サンゴの飼育に必要な機材はあとから買い足すとして、まずはハゼの飼育に必要な機材を揃えましょう。

ハゼの飼育に必要な機材はサンゴ用の機材よりも少なく、後から買い足す形でサンゴ水槽へとアップグレードが可能です。

最初に何を揃えればよいのかを簡潔にまとめた、やさしい解説をお送りします。

Dab.O.Haze

Dab.O.Haze(ダブ・オー・ヘイズ) 「霞のように謎に包まれた海の世界に、ちょっと触れてみよう」── 海水水槽の第一歩を丁寧にご案内。ハゼ系が得意。

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